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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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3話

 そうして、流れること数日、いまだに陸地を見つけることはできていなかった。


 日が出ているときはもちろん、夜になって周りが見えなくなっても俺は水を使って周りがどんな状況なのかを確かめることが出来ていた。ほとんど水なのだが。


 範囲は良くわかっていない、というか基準になるものがないためわからないのだ。流石にこの距離は何メートルだとかはわからないし、そんな特殊能力はあいにく持ってない。


 一日中移動し続けているのだが、よっぽど陸地が遠いのかそれとも見当違いのところを彷徨っているだけなのかわからずにいた。


 船の一隻でも見つけることが出来れば付いて行くなり、進む方へと言ってみたりでき、楽になるのだけれどそう言ったものも見つけることはできていなかった。


 幸いその間、この身体は眠くなることなく、お腹が空くこともなかった。


 つまりはこの身体は何も食べることなく、眠ることがなくても何も支障がないことが証明されてしまったということになる。


 これはもう自分のことながら、生き物と呼んでもいいのかわからなくなっていると思う。


 確かに自分の意識はあるし、動かすことが出来る身体もある。けれど人間に必ずある、睡眠欲と食欲が必要ないとなると、それはもう生き物として考えてもいいのだろうか。


 生き物ではない何か、無機質な物体が動いているというか、例えるのであればゴーレムとかそう言った感じのものに入ってしまうのではないのかと思った。


 ウォーターゴーレム、違和感はないな。この世界なら普通にいそうな感じだ。俺みたいな謎の身体を手に入れることが出来る世界なわけだし。


 だからなんだという話になってくるのかもしれないが、味を感じるのか、寝ることが出来るのかということは、大切だと思う。


 これから人として人の生活に溶け込んでいくつもりなため過ごしていくのだから余計にそのことを考えてしまう。


 する必要がないだけか、この行動自体が出来ないのかで違ってくる。


 まぁそのことについても陸に上がってからの問題なため、今考えても仕方がないのかもしれないけれど。


 そんなこんなでそれから、また数日が経った。


 その間もただ移動し続けていたわけではなく、俺は周りの水を動かして遊んだりしていた。水は好きなだけあるし、逆に言えばそれしかないとも言える。


 空に向かって飛ばしてみたり、それも球や長方形、それから刃のようにしてみたりと初めは形を変えたりすることは難しかったし、時間がかかっていたけど、やっているうちに色々と出来るようになって、試してみたくなったのだ。


 それに出来るようになるというのは楽しく、次はどんなのがいいかとか楽しんでやっているので、より上手く出来るようになっていった。何だったか、確か好きこそ物の上手なれだったかな。


 そうやって水を操ることが上手くなるにつれて、水中での移動速度も速くなっていった。


 初めは気のせいかとも思っていたのだが、それも時間が経つにつれて水の中のものを見たりして移動の速さを確認していると、あからさまに最初の方とは比べられないほど速くなっていたのだ。


 色々と試していたおかげで操り方が上手くなっていき、それが影響して移動も早くなっていったと考えることが出来るが、時間が経つにつれ俺がこの身体に慣れてきたということも速くなった要因の一つなのではないかとも考えられる。


 俺も知らずにこの身体に抵抗があって、自然と力をセーブしてしまっていたのであろう。


 まぁ確かに前までは足や手を動かさずに水中を移動することはできなかったのだから、突然やってみろと言われて、力を全て使いこなせと言う方が無理であろう。


 ということはだ、まだ俺はこの身体を十分に使いこなせていないということになるわけだから、今以上に水の使い方が上手くなる可能性があるということになるわけだな。


 せっかくの異世界に来たのだから、周りの人よりかは強くなっていたと思うのは当然のことだと思う。このまま遊び、じゃなくて練習を重ねていけばもっと良くなっていくだろう。


 よし、じゃあ思い付いたがままに練習をしていこうかな。発想の柔軟性は大事だからな。


 ものすごく暇だし、ていうか他にやることないし、まだ陸は見つからないのかよ。


 その日の太陽が沈んで行き、そしてまた太陽が出て来た朝、ついに念願の陸地を見つけたのであった。


 見つけたときは思わず二度見してしまったくらいだ。


 ああ、長かった。陸を探してから何日経ったかは覚えてはいないけれど、こんなに嬉しいことだったんだな。陸地で過ごしていたのが当たり前だった時には考えもしなかったことだ。


 さて、近づいてみたが周りには人の気配はないし、船もない。


 砂浜になっているけど、人が通るような道も見当たらないな。ここは誰も来ることのないところなのかもしれないな。


 そういうことなら気にすることなく、水の中から上がってくることが出来る。


 そう言えば俺がずっといたのは海だったようだ。まぁわかってはいたんだけど、一応ね。確認というかなんというか。


 しょっぱいとかそういったものも感じなかったし、ん? ということは味覚はないのか? でも視覚や聴覚はあるしな、決めつけるのはまだ早いな、実際に何か食べてみないとわからないか。


 今はそれよりも、早く海から出てみよう。


 足が地面に届くくらいのところから水がないところまで歩いてきたわけだが、問題なく歩くことが出来た。


 何回か軽くジャンプしてみても問題なく出来るようで良かった。


 しかし、全てが問題なかったかと言われると、違うと言わざるを得ない。


 問題は自分の身体が水のままなため透明になっているということだ。これに色を付けることは出来るのだろか。というかできないとこのまま海へと戻らないといけなくなるのだが。


 身体を作った時と同じように念じてみると、薄くだがだんだんと色が付いて行くのが確認できた。


 出来るということが分かれば、後はどのような感じにするかを決めていかないといけない。


 まず、肌は色白がいいかな。まぁ周りを見て変だったら変えるけど、大丈夫だろう。


 じゃあ次は、髪の毛。んー黒じゃつまらないし、水にちなんで青かな? でもなー、とりあえず、暖色系と黒は外して、灰色とかでもいいな。


 でも、やっぱり真っ白な髪の毛にしようかな。前から白髪の女の子は好きだったからね。


 後は瞳か、これは青でいいかな。水に関係している色も少しは入れておきたいと思っていたから、瞳は青で。これは碧眼とも言うんだったっけか。


 こんなもんかな。と思い、自分の身体を見下ろすと、まだないものがあった。


 うん、服がなかったね。いやー、ほんとに人がいなくて良かったよ。まだこの身体には慣れていないけど、人並みには羞恥心は持っているつもりだから、見られていい気はしないしな。


 んー、ここでもどんな服にするか迷うな。


 これも水を使って、身体を作ったように作るからどんなものでも出来るし、動きづらいというのは起こらないようだ。


 何着か試してみて、そのことが分かった。


 この世界の一般的な服装がわからないからな。結局は俺が好きな服装になってしまうよな。考えても仕方がないし、好きなのにしようか。


 まず、上からだけど、オーバーサイズのTシャツにする。ダボダボだけど、この上にも何か羽織る形にするつもりだからいいだろう。


 問題は下だな。スカートにするか、パンツにするか。うーん、まぁ慣れるためにもとりあえず、スカートにしておこうかな。


 まだ人がいないところでスカートに少しでも慣れていた方がいい気がするし、まぁスカートの中を見られたからなんだって話にもなってしまうのだけれどね。


 丈は膝くらいがいいかな、短いのはまだ無理です。


 あー、靴もか。これはブーツでいいか、長くなく短くなくというような長さにして、デザインは実用性を重視しました、って感じのものしてみた。これはこれで可愛く見えるのでいいでしょう。


 最後にフードが付いたマントを羽織って、完成っと。長さは足首よりも気持ち上くらいの長さにした。これで邪魔にならないしな。


 うんうん、可愛い可愛い。


 これが自分の身体なのが少しあれだが、とても可愛らしく出来たと思う。


 さて、これで人前に出られるような格好になったかな。


 あ、そう言えば、下着付けてないじゃん。危ない危ない、自分で気づいて良かった。


 良くあるような、他の人になんで履いてないの? と言われる展開は免れたみたいだな。良かったー。


 早速、下着を付けたいと思うが、これは難しいな。もしかしたら服選びよりか難しいかもしれない。俺としたら何でもいいと思ってしまうが、その何でもがとても難しい。


 白か、青か、黒か、色だけでも迷うのに、しましま、水玉等々、この身体が履いてておかしくないようなものはどんなものなのだろうか。


 散々悩んだ挙句、結局選んだのは真っ白な無地のものだった。考え過ぎて余計にわからなくなったということも追記しておくことにする。


 これが深淵というやつか。


 ついでに上の方も肌着を付けておくことにする。黒いタンクトップのものでいいな。


 改めて、これで完成っと。


 色としては基本的には黒で統一しているが、所々に青が入っている感じにしてみた。


 完全に俺の趣味になっているけどまぁいいだろう。


 さてさて、これからの予定でも立てるとしますかね。


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