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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
29/126

29話

前に投降したものを報告することなく言い方などを変える可能性があります。

内容を変えるということはありませんので、すでに読んでいただけている方は安心してお読みください。


 森までいち早く来てくれたクリムとギルと共に、俺は街へと向かっていた。


 ゴブリンたちを押し戻せたところまでは良かったのだが、そのことによって進行速度が速くなってしまい、結局は街に着く時間は変わらなくなった。


 それでもまだ猶予は残されているため、その時間を無駄にすることなく何ができるかを考えていく。


 それに加えて考える時間を増やすためや、他の冒険者と合流を早くするために俺たちは街へと走っている。


 俺としてはもう一個、何かゴブリンたちに仕掛けられないかと思いもしたが、俺も街の方へと戻っていたことを思い出して、街へと戻るというのに納得した。


 走る速さはとても速く、ギルはわかるがクリムまでがこの速さで付いて来れるというのは驚きだった。


 何か秘密でもあるのかと見ていたが、わかることもなく謎が深まるばかりだった。


 聞いてみたいところではあるが、冒険者の情報の探り合いは良くないことなため、聞くに聞けないそんな感じであった。


 それに今聞くことでもないし、こんなこと考えているのであればゴブリンたちを倒せる良い案の一つや二つ考えねばならないだろう。


 まぁそれで本当に考え付くのであれば苦労はないのだが。


 さてさて、何かあるかな。


 結局何も思い付かないまま、街を覆う壁が見えてくる位置まで辿り着いてしまった。


「レヴィ、今ゴブリンたちはどこらへんかわかりますか?」


「えっと、私たちが出会ったところまではまだ来ていないようだから、時間はまだそれなりに残っているよ」


「わかりました。では、これから東の門へと向かいます」


 そう言うと俺が出て来たところとは違う門の方へと走る方向を変えた。


 これからどうするのかと考えていたが、クリムには何やら考えがあるようだった。


 街の門に着くと、そこにはすでに多くの人が集まっていた。


 その人たちは全員防具や武器を身に着けているので、おそらくは冒険者の人たちなのだろう。


「流石リカルドだ。仕事が早いな」


「それはそうでしょう。街の存亡がかかっていると言っても過言ではありませんからね」


 どうやらリカルドが頑張っているみたいだな。


 多くの冒険者が集まっているみたいで、頼もしい限りだ。


 しかしその肝心なリカルドはどこにいるのかと探していると、


「とりあえず中に入りましょうか」


 街の中へと促され、三人で入って行ったのであった。


 中に入ると、ちょうど向こうの方からリカルドとギルドマスターたちがこちらの方へと来るところだった。


 その中にはアーシャの姿もあって、こんなところに来て大丈夫なのだろうかと思ってしまった。


「あ! レヴィちゃん!」


 その声を聞いて、そっちの方へと目を向けると、すごい勢いでアルターナが俺の方へと走って来た。


「アルさん、久しぶりっ!?」


「レヴィちゃん怪我はない? 大丈夫だった?」


 俺が挨拶をしている途中で、アルターナは抱き着いて来てそれから身体に怪我はないか触り始めた。


「大丈夫だよ。ゴブリンの大群には見える位置まで近づかなかったから」


「本当? 確かに怪我はないようね」


 一通り触って確かめることができたからか。一先ず落ち着いてくれたようだ。


 その間にリカルドたちも到着していた。そこにはクランのメンバーのモノリースとアレバの姿もあった。


「大丈夫そうだな」


「うん。大丈夫だよ」


「そうか。早速で悪いが俺と別れた後、何をしていたのか、今どのくらいの数でどこにいるのかを聞かせてもらえるか?」


「わかった」


 それから俺はみんなの前でリカルドと離れた後の話をし出した。知らない人たちが多くいるので、緊張してしまう。


 罠の水たまりや水の糸、津波の他にゴブリンたちが周りの仲間たちに気にした様子を全く見せなかったこと。


 などなど、俺がやったこと、わかったことを全て話した。


 そして、クリムとギルと会って、街まで戻ってきたことまで話し終わると、ほとんどの人の顔がわけがわからないという顔をしていた。


 俺の説明でどこがわからなかったのだろう。


 しかしリカルドなどのクランのメンバーはそんな様子を見せないし、アルターナはさっきから俺に後ろから抱き着いているので、ちらっと見てみるとなぜか目が輝いているみたいだった。


 ギルドマスターに関しては目を閉じて何やら考えている様子で、アーシャはきょとんと首を傾げている。


 なんだろうか、この空間は。


「あり得ないだろ、そんなの」


 そんな中誰かがつぶやいた言葉はみんなが聞こえるくらいには響いていた。


「できるわけないよな」


「どんだけ話を盛ってるんだよ」


「そうだよな」


 それを機にそんな言葉があちこちから出て来た。どうやら俺がやったことを信じることができないようで、嘘を付いているように思えているようだな。


 さて、どうしたもんかと思っていた時、思ってもみなかったところから声が聞こえてきた。


「あんたたち馬鹿じゃないの? どうしてこんな時に嘘ついて何の得があるのよ。少しは頭を使いなさいよ」


 その声は俺の上から聞こえてきた。つまりアルターナが言ってくれたのだ。


 俺はリカルド辺りが何か言うと思っていたのだが、予想外だ。


「でも、そのガキが自分の手柄を多くしようとして、話を盛っていることだって考えられるだろ」


「そうだ、そうだ。探知能力が高いのはともかく、見えないところに魔法を出すことやそんな大量の水を出す魔法を使えるとは到底思えない」


 まぁ俺みたいな見た目の子どもがそんなすごいこと出来っこないと考えるのが普通だよな。


 ここは少し嘘でもついて適当にごまかした方が良かったかね。


 でもそれならば俺が全部みんなの前で説明するということをリカルドなんかはさせないように思えるのだが。


 俺のことをきちんと考えてくれているようだし。


「だから馬鹿だって言ってんでしょ。何も知らないのにまず否定から入るなんて、それでも冒険者なわけ?」


 なんかアルターナがすごく怒っているような気もするが気のせいだろうか。


「よくそんなんで今まで生きてこれたわね」


 冒険者というのは、危険な職業で仕事中に何が起こってもおかしくない職業だ。


 それが自分のよく知っている場所や魔物でも予期せぬ事態が起こってしまうこともある。


 そんなこともあるため、冒険者は常に自分の知らないことはもちろん、良く知っていることでも決めつけずに判断することが大切になる。


 こんな感じのことをリカルドに俺も依頼を受け始める前に言われたことだ。


 この教えはあまり広まっていないのか、もしくは知っているけど簡単には実践出来ないということか、どちらにせよこんな状況でそんなこと言い合っている場合でもないと思うけどね。


「できるかどうかなんて今はどうでもいい。ゴブリンたちの情報に嘘がなければそれでいい」


 俺と同じことを思った人もいたようで、その人は周りの人よりも何となく強そうな感じが見て取れた。


 誰なんだろうと見ていたら、そのことに気付いたのか小さな声で上から教えてくれた。


「あれは私と同じランクAの冒険者よ」


 つまり本当に強い人なのだろう。


 真っ赤な大剣を背中に背負い、防具の色も揃えていて、全身真っ赤な男の人だ。背丈も大きくこれぞファンタジー世界の冒険者というのを表した感じだった。


 周りのみんなはこの人が言うことであれば、いいのか黙ってしまい俺の方を見て来た。


 なぜか視線が集めってしまい、首を傾げていると、


「レヴィちゃん、ゴブリンの様子や先頭までの距離は間違いないのでしょう?」


「うん。距離と言っても正確なものはわからないけど、大体のものはわかるから合っているはずだよ。クリムも私が言ったところであればわかっているみたいだったし」


「ということよ。わかったわね」


 俺の上でアルターナがそんな会話をした。


 というかいつまでこの態勢なのだろうか。そろそろ放して欲しいのだけれど。


「ではその情報を参考にして、これから作戦の細かいところを練り直します。パーティーであればそのリーダーだけ、ソロであればランクCまで参加を認めます。すぐに集まってください」


 それまで黙って聞いていたギルドマスターがそう言うと、みんなすぐに行動に移し始めた。


 ランクD以下やパーティーで行動している人たちはリーダー以外は離れていき、残った者たちもギルドマスターの話を聞きやすい位置に移動していた。


 俺も本来であれば離れないといけないところなのだが、アルターナが俺のことを放さないのでそのまま残ってしまうことになった。


 場違いな気もするが抜け出そうと思ってもアルターナの力が強く、抜け出すことができない。


 見上げて見てみてもニコニコしているだけで特に何も言ってこない。


 とりあえず俺は抜け出すことをあきらめて、大人しく存在感を消すように努力するのであった。


「レヴィさんゴブリンたちの進行速度は今わかりますか?」


 折角大人しくしていたのにギルドマスターが話しかけて来てしまった。


 聞かれたら答えなくてはいけないので、俺は集中して森の方へと意識を向けた。


「はい。ゴブリンたちの速さは変わっていません」


「そうですか。やはり、すごいですね。その範囲ですと、もしかすると一番広いかもしれませんね」


 俺の居た意味が分かったが、何やら感心されているが何だろうか。


「では、作戦通りにやって行って下さい」


 ギルドマスターのその声でまたみんな一斉に動き出した。


 俺もどこかに混ざろうと思っていると、リカルドが近づいて来た。


「お前はもう休んでいていいぞ」


「私も行くよ?」


「いや、これまで足止めをしてくれたんだ。疲れているだろう」


「でも」


 どうしてこんなに俺が行くことを止めたいのだろうか。


「休んでろって、そんなにレヴィに頑張られると俺たちの手柄が無くなっちゃうだろ」


 今度はギルがそんなことを言ってきた。


「気にする奴はそう言うのも気にするからな。だからここは俺たちに任せて、休んでいてくれよ」


「そう言うことなら、わかったよ」


 みんな強いことは知っているので大丈夫だとは思うが、それでも一緒に戦えないというのは心配になってくる。


「では、私と一緒にいますかね。そうしたら雑用で駆り出されることもありませんからね」


 話を聞いていたのだろう。ギルドマスターがそう言ってきた。


その言葉に甘えることにして、リカルドたちも街の外へと向かって行った。


「全く、かっこつけちゃって。かっこよくなんてないのに、まぁいいわ。それじゃ私も行ってくるわね」


「はい、お気を付けて」


 最後に俺の頭を撫でて、アルターナも行ってしまった。


「私たちも行きましょうか」


 アルターナの言った言葉が気になったが、俺は歩き出したギルドマスターの後に付いて行くのだった。


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