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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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27話

 休憩を終えて、何か問題が起こる前に街へと戻ろうとした矢先、望んでもいないのにその問題が向こうからやってくるのだった。


 俺が知覚できる範囲は前と比べて格段に広くわかるようになった。


 それも簡単に歩いたり走ったりしても辿り着ける距離ではなく、多くの時間が掛かってしまうほどには。


 その上、目をつぶったり他のことを考えたりして、他の情報を遮断し意識してその知覚範囲を広げようとすればさらに遠くのことがわかるようになる。


 つまり何が言いたいのかと言うと、俺が魔物の大群がこっちの方へと向かっていることに気付いたのは、ちょうど最後に森の奥を確認しようといつもよりも遠くを見ていた時のことだった。


 なので魔物たちがこの位置まで来るまでにはそれなりの時間が掛かるということだ。


「どうした? レヴィ、何か見つけたか?」


 俺は焦っていたからか、森の奥の方を見て固まっていたが、リカルドの声でふと我に返った。


 このことをリカルドに伝えないと、そう思った時にはすでに口は動いていた。


「リカルド、まだ遠いけど大量の魔物、いやこれはゴブリンだな。それがこっちの方へと向かっているみたいだ」


「本当なのか!?」


 俺は出来るだけ落ち着いて、話すことを意識する。ここで慌てても仕方がない。こういう時にこそ平常心、平常心。


「うん。私がわかる範囲の距離に今さっき入って来た。まだここまで来るのには時間が掛かるとは思うけど、早く街に戻ってこのことを伝えないと」


「そうか、わかった。じゃあ急いで戻ろう」


 それからすぐに鞄を持って、街の方へと駆け出した。


 その前に一つの仕掛けをすることにした。ここからは走っていくのだから、知覚範囲も狭くなってしまうからな。


 それにしても、ゴブリンたちの進む速さは俺たちが出会ったゴブリンよりも速く感じるが、気のせいだろうか。もしかしたら離れているからそう感じるのかもしれない。


 とにかく今は街に戻ることが優先なので、リカルドの後について走ることにする。


 道中見つけたゴブリンは俺が水の弾を飛ばして、仕留めておいた。魔石は放置である。ちなみに走っているところは道ではないけどね。


 森の中で道ではないところを走っているため走りにくいが、俺たちは止まることなく街へと急いだ。


 思っていたよりも森の奥の方まで行っていたようだ。俺も後ろのことは気にせずに進んでいたので、どのくらい進んでいたとかは気にしてしなかった。


 この分だと街まではまだ掛かりそうである。


 その時、俺が仕掛けておいた罠に反応があった。


「うわー」


 思わず声が出てしまい、その声がリカルドに聞こえてしまったみたいだった。


「どうかしたのか?」


「一応さっき最後に休憩していたところで罠を仕掛けたんだけど、それに反応があったんだよね」


「なに!? さっきのところまでもう来ているのか?」


「ああ、ごめんごめん。場所はその休憩していたところと、私が探知できたところのちょうど中間の場所。そこに仕掛けておいたんだよ」


「そんなことができたのか。そうなると、ゴブリンたちの進行速度から考えて、結構ギリギリになりそうだな」


 最後の方は独り言っぽかったけど、俺には聞こえてしまった。


 街までなら余裕で先に着くことができる。しかし街に着いて、ギルドまで行き、このことを伝えて、準備し、駆けつけるということを挟むと難しいのだろう。


 俺たちが街に間に合っても、森へと駆けつけるのには時間が掛かってしまう。きっとそう言うことなのだろう。


 そうすると、今の必死に走っている意味がなくなってしまうよな。


「遠くに伝える方法とか何か便利なのないの?」


「あったのならよかったのだが、残念ながらない」


 ということは方法は一つしかないよな。


「しょうがない、私が時間を稼ぐことにするよ」


「何を言ってやがる!?」


「いや、だって要するに冒険者を呼んでくる時間が足りないわけでしょ。それなら私が足止めして進行速度を遅くするしかないじゃないか」


「んなのだめに決まってるだろ! それなら俺がやる!」


「それこそだめだよ。私は魔法があるから出来るけど、リカルドはそうじゃない。それにリカルドであれば、他の冒険者も信じると思うし、ギルドマスターにも話をしやすいだろ?」


「だが!」


「別に危険なことをするわけじゃないさ。ただ街に向かいながら遠くから魔法を当てて、少し進行速度を遅らせるだけだよ」


 それを言うと、リカルドは黙ってしまったが、これはもう一押しでいけそうだな。これが最善だとわかっているのだろう。


「さっきの罠だって、離れたところに設置出来たんだ。それと同じようにやるよ」


「わかった。でも絶対に危ないと思ったなら街に全力で向かうんだぞ」


「わかってるよ」


 その言葉を言うと、同時に俺は立ち止まり、リカルドはそのまま街の方へと走っていった。


 さてと、二つ目の罠、つまり俺たちが最後に休憩していたところも突破されてしまったのだが、それでもまだ距離はあるので焦らず罠を作っていくことにする。


 さっきも作った罠だが、地面に設置するタイプのもので、水たまりを作りそこを踏むと破裂し、踏んだやつはただでは済まないというものだ。


 うん、まぁ破裂とは言ったが、爆発というレベルの代物になっていると思う。


 踏んだやつの周りにも被害が及んでいるしな。


 ゴブリンたちは大量に進んで来ていて、その数も膨大で隙間がないくらい密集して走って来ている。


 正直気持ち悪いのだがそうも言っていられないので、頑張ることにしますか。


 水たまりの罠をいくつも作っていく、これは俺の知覚範囲内であればどこでも作ることができるので、わざわざその場に行かなくてもいいのが良いところだな。


 しかもゴブリンも大量にいるため、適当な場所に作っても絶対に踏んで行くのであまり考えなくてもどんどんと吹き飛んでいく。


 プレイヤーレベルみたいのがこの世界にあれば、多くの経験値が入って行ったと思う。


 いや、雑魚だから経験値も微々たるものかな。


 それにしても、倒しても倒しても、一向に数が減ることがないな。


 倒れたゴブリンを乗り越えて後ろからすぐにゴブリンがやってくるので、この方法でこのまま倒し続けても意味がないように思える。


 方法を変えてみようか。


 罠と言えば、落とし穴や上から天井が降りてくるというものあるがそれは出来ないし。


 あの光線のやつは真似できるかもしれないな。


 早速やってみることにする。まず、ゴブリンたちの先頭あたりに狙いを付ける。


 そんでもって、細く糸のようにした水を横一杯に伸ばしていく。


 これは水たまりの罠よりも難しいな。意識を完全に向けなければ出来ないので、今襲われでもしたら何も出来ない。でも周りにはいないことはわかっているので、気兼ねなく集中できる。


 さて、伸ばし終わったら、その水の場所は移動させないでその場で高速に横に動かしていく。


 ものすごい勢いの水は鉄でも切れるというのを見たことがあったし、実際今までも水で魔物を切ってきた。


 これならばゴブリンであれば余裕で切れるだろう。


 その水の糸をゴブリンの脚の高さに置いたら、見事にゴブリンたちの脚が切れて、どんどん動けなくなって倒れていく。


 例えその水に気付くことができたとしても、後ろから来るゴブリンたちにはわからないので、止まることができないまま押されて次から次へと切断されていっていた。


 しかしすぐにその水の糸の付近はゴブリンで埋まってしまい、そのゴブリンたちを乗り越えていくことで切断を免れ使えなくなってしまった。


 しょうがないので新しくまた、作ることにした。


 今度はすぐに埋まることがないように、大体胸の当たりに置いておくことにする。


 でもきっとこれもすぐにダメになるのだろうと考えながらも、少しでも進行が遅くなるのであればと思い、同じものをいくつか間隔を取って置いて行くのだった。


 何か所か水の糸を置いたため、そのたびにゴブリンたちが倒れ、その上を後ろから来たゴブリンたちが乗り越えていくため、それを見た俺はまさにゴブリンの津波のようだと思ったのであった。


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