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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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20話

 野良の住処の住処へと引っ越して来た俺たちは、その日の夜屋敷の食堂に集まってみんなでご飯を食べて子どもを風呂に入れたり、自室へ戻ったりとめでたい日ではあったがバカ騒ぎすることなく過ごしていた。


 みんな今の状況がわかっているのだろう。確かに今日は記念すべき日なのであろうが、明日からまた忙しくなることを。そしてなるべく節約をしなければいけないことを。


 俺とリカルドは自室へと戻ることなく、これからのことについて話をすることになった。もちろんユアも一緒である。


 内容は俺の冒険者活動に関してのことだ。


 明日から俺も冒険者としてやっていこうと思っていたのだが、そのことを伝えたらリカルドが付いて来ると言ったのだ。


「実力があるのはわかっているが、冒険者としての知識は何も知らないだろう。だから俺が付いて行って、色々教えてやるよ。俺から色々教わってからでも一人で行動するのも遅くはないだろ」


 ということだった。


「それはありがたいけど、それよりもリカルドはランクBの冒険者なんだから、そっちの依頼を受けてお金を稼いだ方がいいんじゃない?」


「いや、確かに金が必要だからというのはわかる。ランクが高いほど報酬も良くなるからな。でも今はギルドからの支援金やあいつらの稼ぎで食っていけることがわかった。だったら少し長い目で見てレヴィを早く使えるようにしておけば、今後はさらに安定して稼げるようになるだろうからな。逆に余裕があるとは言えないが、今だからレヴィに色々と教えることが出来るということもあるな」


「私が一人でやるよりかはリカルドに教えてもらった方が、早く多くのお金を稼げるようになるね。だからお金に余裕がある今のうちに教わった方がいいか。わかったよ、それじゃあ明日からよろしくね」


「ああ、それに俺も鈍ってるからな。少しずつでも慣らしていった方がいいだろうって理由もある」


 俺はその言葉を聞いて、こないだ一人で殴り込みに行ったのは何だったのか聞いてみたくなったが。そこを我慢して聞かないでおいたのだった。


 また変な空気になっても面倒だし。


「そうだ、ユアはもちろん連れていけないからな」


「それはわかってるよ」


「えっ?」


 ずっと話を聞いていた、ユアが驚いた顔をしてこっちを見てきた。


「流石に一緒には行けないよ。冒険者になるのにもまだ早いからね」


 俺がそう言うと、だんだんと目を潤わせていって、今にも泣きそうな顔になってしまった。


「一緒にいたいって言うのは私も嬉しいけどね。でも、そうも言っていられないことはユアもわかっているでしょ? だから私が外で頑張ってくるからさ、ユアは待ってて欲しい」


 ユアも頭の良い子なのでわかってはいるのだろう。ただ感情を優先してしまうだけだ。


 まだ子どもなのだからこういう反応は当たり前だし、むしろこういったわがままを行って欲しいとは思うのだが、こればっかりは許すことはできない。


 冒険者は常に危険と隣り合わせの職業なのだから。


 それを聞いて、ユアは顔も頭の耳も尻尾もだらんと下げ、全身で悲しいという気持ちを表しているようだった。


 それを見て俺は苦笑し頭を撫でながら話しかけた。


「その代りというのも変だけど今まで通り寝るときは一緒だし、休みの日も一緒にいるから、それで勘弁して欲しい」


 その言葉を聞いて、ユアは小さく頷くのであった。


 その後、順番が回って来たのでユアと二人でお風呂へと入ることで、少しは元気になったことを確認できると、安心してお風呂を楽しむのであった。


 俺もギルドではずっとシャワーしか浴びることが出来なかったので、お風呂に入ることができて嬉しかった。


 この世界ではお風呂は贅沢なもののため、一般的な庶民は入ることは出来ないそのため他の人はお風呂にはこだわりはないみたいだったが、前の世界ではお風呂に入るのが当たり前だったのでずっと入りたいとは思っていたのだ。


 この良さを知ってしまったら、なくてはならないものと考える人も多いだろう。


 ユアにとってお風呂は初めてのことらしく、俺が教えた通りに身体を洗ってから、恐る恐るつま先からゆっくりとお湯の中へと入って行った。


 その後は気持ちが良かったのか、眠そうな顔となり、終いには顔までお湯の中へと入ってしまって慌てて顔を出すユアの姿に、思わず笑ってしまったのであった。


 そんな俺の様子を見てユアはまた機嫌が悪くなって、頬を膨らましていたが、お風呂を出る頃にはその機嫌も直っていた。


 お風呂を上がり、待っている男たちに空いたことを知らせた後は俺の部屋へと二人で戻った。


 俺の部屋は二階の一番奥にある。何となくこの部屋が一番良さそうだったので、この部屋を選んだのだ。


 この部屋には大きなベッドが一つ、それと机に椅子、後は洋服を入れるような大き目の衣装ケースがあるだけだった。


 少し寂しくも思ったが、住み始めなんてこんなもんだろうと思い気にしないことにした。それに俺には服なども必要ないのでこんなもんで十分である。


 俺もやることは特にないし、ユアももう眠いだろうと思いベッドに入ることにしたのだが、明日は一日中一緒にいられるわけではないからか、ユア頑張って起きているようだった。


 その様子に可愛いなと思ったが、横になり頭を撫でてやったら、眠気に逆らうことができずにすぐに眠ってしまった。しかしその腕はしっかりと俺のこと掴んで、簡単には離してくれないようだった。




 この世界にはクラスというものがある。転生する際にあの男性が言っていたことで、そういうものがあることは知っていたが、具体的にはどういったものかは教えてもらうことはなかった。


 クラスというものは人それぞれに与えられた能力のようなものである。


 例えば、戦士や魔法使いと言ったものが代表的なもので、こういったクラスを与えられれば、戦闘関係の職業に就くことが簡単になってくる。


 かと言って、誰でも剣を持って振ることが出来るように、魔力を一定量持っている人であれば、クラスが魔法とは全く関係ないものでも努力次第で使うことができるようになる。


 つまりクラスとは、何もしなくとも自分の才能の一つがわかるというものである。


 しかしながらその才能がわかるというのはとても便利なもので、その人大きなの基準となってしまう、国に仕える騎士や兵士は戦闘系のクラスがなければ入ることは出来ないし、何か店を持つにしてもそのことに関するクラスを持っているとそれだけで信用を得られやすくなる。


 そんな戦闘系のクラスを持つものでも、みんながみんな国に雇われるわけでもない、中にはそう言った堅苦しいような職業が嫌な人もいるのである。そう言った人たちはみんな冒険者となって、その才能を使うのであった。


 また冒険者であれば、クラスに関係なく登録することできるので、戦闘系のクラスでなくても武器を持って戦うことが出来るようになる。


 冒険者は自由だ。依頼は自分が受けたいものを選び受けることができるし、上下関係もその人によって変わってくる。


 だが全体的に見ると、冒険者の仲間意識は強いらしい。ランクが低いものに教えたり、助けてやったりと面倒見が良い人たちが多い。


 それは自分たちの過去もそう言った経験をしていたからこそ、自分たちもしてもらったように後輩にしてやろうと思う人たちが多いのだとか。そうした先輩後輩の関係を作り、お互いに協力する形が作られて行っているのであった。


 そう言った冒険者の話をリカルドにしてもらいながら、俺は冒険者ギルドへと歩いて向かっていた。


 一緒にいるのは、すでに冒険者であるリカルドを含めた男ども五人である。リカルド以外は二人ずつに分かれて、この後依頼を何かこなすということだった。


 道中暇なのでリカルドが冒険者たちのことや注意すること、またどういう仕組みなのかを教えてくれていた。


 他のメンバーもリカルドの言葉に同意したり、少し言葉を足したりして向かっていた。


 出かけるときにユアと涙なしでは語れないような別れをしてきたのが、ユアは大丈夫であろうか。


 ちなみに泣いていたのはもちろんユア一人だけだったが。


 あの涙をいっぱい溜めて、それからの「いってらっしゃい」という言葉は思わず抱きしめたくなる可愛さだった。そこを必死に我慢して冒険者ギルドへと向かったのだった。


 一応マリーが任せて下さいと言っていたので、たぶん大丈夫だろう。


 そうこうしてあっという間に、ギルドの前へと着いたのであった。


 昨日まではここにいたので、特に目新しさというのはないが、ただ人が多いというのは実際には見ていなかったので、この人の多さに面倒だと思ってしまったのだった。


 慣れているのかそのまま入って行くリカルド追って、俺もギルドの中へと入って行った。


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