95.まるで効いていない
2021/1/10(日)96話になってたので95話に直しました。
カニ区画に着くと手前に朱雀、奥に青龍という配置で反乱軍を挟んで対峙していた。
反乱軍は10人ほどだった。前はもっといた気がするけど、どうなったんだろ。捕まったか逃げたかしてるんかな。
「よし、先走らずにいて上出来だぞ。では作戦を述べるぞ」
「おう。もう我慢できんからやるぞ。ほれ灼熱地獄」
作戦を言い出すよりも早く朱雀が魔法を繰り出した。
伸びる炎は高温過ぎるのか白を通り越して青く、あっという間にズタケは炎に包まれてしまった。
「うわ。これちょっと……」
突然の惨状にみんなドン引き。
当然のごとくサピちゃんが朱雀を睨みつけた。
すかさず涙目のように見える玄武が朱雀を咎める。
「なんてことしてくれたんだ。いくら政治犯とはいえ裁判もせず処刑するなんて」
「おいおい異世界だぞ。普通だろ?」
この人の倫理観どうなってんだ。
サピちゃんはというと殺意満々にナイフを取り出していた。誰か止めて!
だが収まった熱気の中から出てきたズタケはピンピンしていた。
「こんなのは効かん。お前たちは俺をかなり見くびっているようだな。俺が今まで手に入れた能力を把握なんてしておらんのだろう?」
すごい。一体どうやって無傷で済んだのか。
ちなみに取り巻きは走り回ったり素っ転んだりして阿鼻叫喚になっていた。すかさず帝国兵がそれらを捕らえる。いや、保護する。
そんな周りのことをズタケは気にしてはいない。朱雀と青龍も気にしてはいない。
玄武は真顔になっている。
「四天王どもめ。俺にかなうと思っているのか? 貴様らの能力など全て奪い取って、そして俺はこの帝国をすぐに支配してやるぞ」
本当に皇帝になる気だったのか。すごいおじさんだ。
玄武も呆れていた。
「1人で力づくで帝国軍や陛下を倒したとしても、それで皇帝の地位に付けるわけがないだろう。少し考えれば分かるだろうに。それともその烏合の衆で新しく国でも作るつもりか?」
「わー、もうやってんじゃーん。大急ぎで雷くらえー」
急に気の抜けまくった声で駆けつけてきた白虎。
走りながら雷をぶちこんだ。
ズタケのおっさんも終わったかと思ったが、当たったはずの雷は斜め上に飛んで行った。
玄武はまた真顔になり沈黙した。
ズタケは白虎と、ついでに俺らを見てから言い放つ。
「無駄なことばかりして、お前たちはこの世界の」
「数打ちゃ当たる。いっけー、閃電、紫電、疾雷、霹靂」
白虎が手当たり次第に雷魔法を打ちまくる。危ない危ない!
ところで名前が違っても全部同じ雷に見える。まさか呪文は特に意味はないのか。
「人の話をちょっとは聴かんか!!」
「テロリストの話なんか聞く意味あるかよバーカバーカ」
無視して雷をぶっ放しまくる白虎。危ないんですけど?
「早く止めないと取り返しのつかないことになっちゃいます!」
もう遅い気もする。
「でも私たちに出来ることはなさそうね」
エルテは完全に傍観を決め込んでいた。他人事だね。
と言っても俺も思いつかないけど。
見てたらローダーが我慢できないのか言ってきた。
「いやエルテ強いんだし何かあるだろ。どうにかしてくれよ」
「なにをどうするのよ。あんなところに突っ込むならドラゴンのブレスの方が安全じゃないの?」
あんなところである目の前は、今なおドッカンバッカン雷が飛びまくっている。
入ったら怪我するよね。いやもう取り巻きたちは巻き込まれて怪我しまくってるけど。そして逮捕という名の保護をされていて、ズタケはすでに1人になっている。
取り巻きは何のために存在したのだろうか。おっさんに名前つけただけか? アルティメットなんとか様。ださい。
ん?
「おいそうだ! 思いついたぞ!」
「なんだよお前本当かよ適当言ったら殴るぞ」
「ほう、お前そんなこと言うと自分自信の頭を殴る羽目になるぞ」
何っ、と驚愕の表情でたじろぐローダーを尻目にズタケの頭を指差す。
「ズバリ! おっさんの義肢のゴーレムを制御している頭の装置を破壊するんだ! そうすりゃ左手一本しかないんだから、ダーチ人でも普通に縛り上げられるだろ?」
くうー、天才だぜ。
あまりの天才さに2人も痺れていますね!
「ふーん。どうやって壊すの?」
「そうだぞ。近付けないだろうが」
痺れていなかったしむしろ見下されている感。
「それはこう、なんかこう、ほら。あれだよ」
「考えなしだったのね」
酷いです。
「いや、待てよ。飛び道具ならあるだろ! ほら、サピちゃん!」
振り向くと冷たい目をしたサピちゃんがいた。
「いやです。外れたら大変なことになってしまいます」
「でもやらなきゃもっと大変なことになるかもよ」
「意図は分かりますが当てられる自信がありませんので無理です。せめて止まっていただければなんとかなるのですが」
そりゃそうか。動いている小さな的に当てるなんて無理だよね。しかも失敗したらおっさん死ぬし。
じゃあ足止めしたら当たるんじゃね?
「よし、じゃあ。おいローダー! おっさんらの足元に水魔法ぶちかませ!」
「はっ!? この状況で!? 間が悪けりゃこっちも巻き添えになるぞ!」
「いいからやるんだよ、ほら! 天才まじゅちゅしなんだろ!?」
「そんなの言ったことねぇよ! でも打開するには仕方ねぇ……放水!」
いつものようにそれでいいのかという呪文を唱えズタケの足元に水たまりが出来た。
「感電させるんですか?」
「いや、魔法は多分効かないから……見て!」
と言いみんなと一緒に見ているとズタケは濡れた石畳で踏ん張ったせいか滑った。
「え、狙いは滑らせるほうだったの?」
「今だぞ!」
「もう撃ちました」
放った矢がおっさんに当たったように見えた。効いたか?
おっさんは滑ったまま膝をついていた。
雷も止んでみんなは様子見をしている。
「どうなったの?」
「多分当たってますけど……動けなくとも近づけば能力は奪われますからね。慎重を期しているんでしょう」
おっさんはピンチのはずだが余裕綽々のご様子。
「お前たちが何をしようと、四天王さえ倒せれば敵などいない」
動けないだろうにすごい強気だ。超ポジティブだ。最強じゃん。
「なぜそこまでして帝国を倒そうとする。お前に何の得があるんだ」
「得だって?」
ズタケは大笑いをしてから言った。
「馬鹿げたことを言う。俺はやりたいからやる。俺の人生は俺だけの物なんだからな。そうだろう?」
「たしかにそりゃそうだ!」
「なに感心してるんだ!」
なぜか納得している朱雀。脳筋の鑑。
「はぁ……何と言おうともうお前は終わりだ。黄龍にでも縛り上げてもらうからな。……あいつ遅くないか?」
そう言われてみれば、四天王のうち黄龍だけきていない。
まあ青龍もいるだけで何もしてないけど。あ、俺もか。
「こんにちはー。ご機嫌いかが?」
噂をすれば黄龍到着。どこで道草食ってたんだか。
「遅いぞ」
「ヒーローは遅れてやってくる。なんちゃってー」
ピースをしながら片脚を上げてポーズをとっている。
「なんか四天王って変人ばっかじゃね? この国大丈夫なのか?」
「しっ、聞こえるわよ」
思いっきり聞こえている黄龍はこちらを見てにっこりしながら言った。
「ちなみにアイツの手足が欠損しているのは前皇帝が床に臥せていたときに『俺が皇帝になる!』とか言って暴れたからなんですよーん」
「前科ありかい!」
ちゃんと縛っとけよ!
あ、というか、俺が手足与えたから……。
いやいや、そもそも監視してないのがいけないと思うし。俺悪くないし。
「って、あのおっさん、諜報員として働いてるじゃないのか。反乱者をなんでそんな位置に置いてたんだよ」
「身内の組織に置いてる方が監視しやすいからじゃないのー? といいつつ放置されてたみたいだから監視ちゃんと出来てなかった責任は前任者にありますよねー。聞いてみたらどうですかー? まあ前任者はもう死んでるけどー」
なんかもう、なんか。
「いや、どうでもいいから黄龍、あいつを縛り上げろ」
「はいはいリーダー。いや、でも、リーダーは名前的には私だよね。だって黄龍だし。じゃあ今日からリーダーは私ってことで!」
「どうでもいいから本当にもう早くどうにかしろ」
はいはーいと返事をして黄龍が歩いて行く。
おっさんも殺されそうもないしミッション完了ですな。
サピちゃんも安心しているようだ。
よかったね。
次回の投稿は1/10(日)にしますわよ。




