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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第四章 陰謀編
87/113

87.僕が犯人です

分担して街中の酒場を張り込むこと3日。

見つからないあまり、他で勝手に解決してくれないかなぁとか思っちゃったりしてきた今日この頃。


酔っぱらっては話にならないのでいつものように水を頼めば店主に嫌な顔をされた。これもいつものことだけど。

日付が変わるまでには出ていくので、まだ6時間くらいはあるか。ヒマだぞ。


他の客は大体複数人で来ている。仕事終わりに飲んだり食ったり。お金ある人は良いわね。最近は森に行けば毒のシカばかり出てくるし、こちとら稼ぎがありませんわ。


「そういやあのシカ売れなくなったんだってな」


「ああ、あの新種のシカな。せっかく良い商品が手に入ったと思ったら毒だから販売禁止とか急に言われるしひどい話だよ」


「俺はなんともなかったぞ。本当に毒なんてあんのか?」


「そうだよなぁ。俺も平気だったんだけどな、でも血反吐吐くやつが何人もいるらしいし……」


なんか聞こえてきた。人によって違うのか食べるの部位によって違うのか。もしかして普通に食べられるようになるのかしら。だとしたら売れる。食える。世の研究者は解明を頑張って。


「稼ぎも悪いし、しばらく他所の国にでも行くかな。北は魔物が増えてるらしいし帝国とかどうだろうな?」


「いやー、あっちも最近きな臭いって話だぜ?」


することもないので水を飲み干したころ酒場に独りで入ってくるやつがいた。

フードを被って見えにくいがケリンだ。


来た。

マジで来た。

どうしよ。

勇気出して話しかけなきゃ。


もじもじしているうちに奥の席に座っちゃった。ケリンは普通に酒を注文している。ていうかお酒飲むんだ。


タ、タイミングが……。

よし、一口飲んだら行くぞ。よし、飲んだ。行くぞ!


「あ、あんた暗殺者じゃないのか? 依頼したいことがあるんだけどぉ」


プルプル震えながら臆病者風に話しかける。演技ですよ、演技。

頑張って話しかけたのにケリンはチラとも見ずに酒を飲んだ。


「前金」


「えっ」


「前金と、成功報酬の額を教えろ。話はそれからだ」


しまったぁ。完全に失念していた。うむむ。

こうなったら有り金全部を前金にして成功報酬は適当に言おうそうしよう。


「えっと、前金はここに……110シルバー……。成功報酬は80ゴールドでどうすか?」


「前金と成功報酬に開きがあり過ぎないか? 本当に払えるのか?」


「きょ、今日は手持ちが少なかったんですぅ」


「まあいい。受けてもいい。だが払えなかった場合はお前の命で払ってもらう」


そう言うと机に置かれた小銭ーー俺の全財産ーーをさっと取った。


ひえー。こわーい。

でも俺不死身だから関係ないな。

逆に言えば俺の正体はバレていないってことだ。ふへへ。


「で、対象は?」


よし、言っちゃうよ。本当に言っちゃうよ。ドキドキしながら言っちゃうよ。


「そ、それは……えーと、ぼう……労働者組合のトップの、ロロク、です」


周りに聞かれたらいけないし最後の方は小声にした。何も反応が無いけどちゃんと聞こえたかな。

そして言っておいてなんだが罪悪感が……無いかも。うん。大丈夫だろ。


「把握した。お好みの方法があるならそうするが」


「いや、それはないけど……」


そんなことまで指定できるのか。達成できないように面倒なこと指定してもいいけど、怪しまれてもいけないからやめとこう。


あ、そうだ。良いこと閃いちゃった。


「なああんた、ぼ、労働者組合に捜索願出されてたぞ。まあそれ見てあんたが暗殺者ってのが分かったんだが、気を付けた方が良いんじゃないか」


「ふむ。そうか。忠告感謝する」


ふふふ。こう言っておけば俺が冒険者サイドとは気づかれんだろう。天才だな。


「それでは早速行ってくる。数日後にここにくるから金を用意しておけ」


酒を飲み終わったケリンが去っていくのを見送ってから気が付いた。


「で、こっからどうしたらいいんだ?」


◆◆◆◆◆◆◆◆


「というわけで依頼をこなしに行ってしまいました」


「えーっと……」


ツリーハウスに2人が戻ってきたので報告をすると気まずい雰囲気になった。


「どうすんのよー!!」


「いたいいたい」


何で怒られるんだよ。頑張って目標達成したのにね。というか会った後どうするか決めてなくね?


「とにかくドゥマに行くぞ!」


「い、今から?」


「いや、朝一馬車に乗ってだよ。夜中は馬車が出てないし、ましてや歩いて行くわけないだろ」


さいですか。

しかしそんなこと言っても心配で眠れないっすよ。

あ、でもケリンも一晩で着くわけないから大丈夫か。

そう考えるとなんだか気が楽になってきたぞ。うははー。寝ちまおう。


◆◆◆◆◆◆◆◆


とかいいつつ若干の寝不足。ドゥマへと着くなり急いでギルドに行きロロクに狙われていることを教えに行く。


受付にはいつものクール受付嬢がいた。


「またあなたたちですか」


「マジで超緊急で話すことがあるんだよ! 会わせて!」


「所長はシャングローに向かいましたが」


「………………え?」


一斉に血の気が引いた。

受付嬢は不審に思ったのか半目で睨まれる。


「何なんですか一体」


「い、いや、いないならいいっす!」


慌てて部屋の隅の方に行って作戦会議だ。


「や、やべぇ。どうするよ」


「入れ違いで犯人を探しに行ったみたいね」


俺たちが捕まえたのを知らずか。こんなことなら捕まえた時点で教えるべきだったな。いやでもそれだとケリンに逃げられるかもしれんから……。

ま、まあ過ぎたことは仕方がない。それに……。


「ロロクは未来が見えるんだから大丈夫なんじゃね? な?」


自分に言い聞かせている部分が大きいが、エルテもなんとなく同意はしている。

なのにローダーがちょっと考え込んだ。


「それなんだがよ、未来見えるってさ、実際、どの程度見れるんだ? なんとなく意識しなくても危険察知とか出来んのか?」


「うーん……」


「もし仮にな? 自分が暗殺されそうなんて知らずに普通に過ごしてたらさ、その未来は気付かないよね?」


やめろ馬鹿。ヤバい感じが強くなっただろうが。


「何やってんだお前ら」


え、誰? いま立て込んでるんだけど。

見たらもっさんとおチビちゃんだった。


「い、いや、なんでもないっすよー」


「いや絶対あるだろ! しかもあたしらにも関係あるやつ!」


勘が鋭いな。流石と言うべきか。


「というかロロクがどうとか言ってたのがっつり聞いたからな。白状したほうが身のためだぞ」


「実はかくがくしかじかでピンチなんだ」


「って何あっさりバラしてんのよ」


なんか秘密に出来そうにないし。


「ふむ。じゃあ俺らもシャングローに行くか。あいつの行動なら読めるからな」


お、マジで?

こりゃ解決あるで。


「俺らに会えば依頼なんてしてられんだろうからな。もう狙わんようになるだろうしなんならこの国を出るだろうな。で、お前らはそれだけでいいか?」


「万々歳ですがな!」


というわけでもっさんと幼女を仲間に加えシャングローへと戻るのだ。


次回は9/6(日)に更新します。

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