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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第四章 陰謀編
80/113

80.変わらない日常

キジタンパス共和国の北東部に位置するシャングロー。

その商業都市は多種多様な人、物、文化が集まり栄えていた。

人々は楽しそうに話したり、食べ物や豪奢な道具を抱えたりして行き交っている。


そんな雑踏をくぐり、ヘリックスとエルテは日課となっている依頼探しに労働者組合へと来た。時間は早く人はまばらだ。だが掲示板を見るも依頼はほとんどない。


「いい仕事が無いわね。本格的に稼がないと明日の食事も怪しいのに」


「あんなにあったお金はどこに消えたんだろうなぁ。不思議だなぁ」


帝国で稼いだお金はかなり減っていた。財布は軽い。


「ちょっとお金がいくら残っているか確認しない?」


そう思い立ちエルテとヘリックスは席に着くと袋をひっくり返す。

チャラリとわずかな音がして、すぐ静かになる。


「これってゴールドだよな? 白っぽいけど」


「どう見てもシルバーだからね」


はぁー、と2人で溜め息。


「お前らが微妙な仕事ばかり選んでるからだろ。もっと金になる仕事をしろよ」


横から話に割り込んできたのはローダーだ。ローブに身を包み杖を腰に下げ、いかにも魔法使い然とした身なりをしている。

その手には2枚の紙を持っていた。


「そうは言ってもね。やりたい仕事をしたいもの」


「それで食えなきゃ意味ないだろ」


もっともな意見を言う。

が、ヘリックスは気に食わなかった。


「そんじゃあ、そういうお前はどんな立派な仕事をしているんだい?」


「えーっと、たとえば昨日は倉庫で探し物をしたんだが」


「それって松明替わりじゃねーの」


「うるせえ!」


「なんだお前!」


取っ組み合いを始める2人をエルテは冷めた目で見た。


「あんたら遊んでないで何の仕事をするか決めましょうよ。ローダー、言うからには良いの持って来たんでしょ」


おっと、と切り替え手に持っていた依頼書を見せる。


「ああ、そうだ。まあ、これだよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆


「シカじゃねぇか!」


「なんだよ違うぞ! 最近見つかった新種のシカなんだからな!」


と言いながら3人で狩ったのは、黒いヘラ状の角を持つ、脚の太いシカであった。

依頼の一つはこのシカの討伐、もう一つは角の収集であったのだ。つまり一石二鳥、いや、肉も取れて三鳥の依頼だ。


「これってどこから来たのかしら」


「もしかして西の大陸から来たのかもな」


西の大陸。正確には大陸であるかは誰も確認をしていないのだが。

北の王国の、西方に位置する旧魔族領よりもさらに西にあるとされる領域だ。

共和国は半島になっており、西部は切り立った崖になっている。その崖から望めばかすかに陸地が見えるのだ。共和国出身であるローダーはその陸地を思い浮かべながら言った。


その間にエルテがシカの血と内臓を抜く。慣れた手つきだ。抜いたものには軽く土を掛けておく。


すると思い出したかのようにローダーがシカに近づき手をかざす。


「浸潤。乾燥。浸潤。乾燥」


しきりに唱え、シカの表面を濡らしたり乾かしたりしている。


「何やってんだお前。それ意味あんの?」


「知らないのか? 濡れた物が乾くとき、物は冷えるんだぞ」


どや顔で言うが、ヘリックスが聞きたいのはそういう意味では無かった。


「いや、冷やしたいなら氷魔法使えばいいじゃん。バカ?」


「あのな、水魔法が使えるからって氷魔法が使えるわけじゃないんだぞ。氷魔法は難易度が高くて魔法使いとしては上級で……」


「つまりローダーは下級だから使えないのね」


「おう、直接的な言葉の暴力やめろ」


「つーかそんなの帰りながらしたらいいじゃん。ほら行こ」


「いや歩きながら魔法はきついんだが……」


と、ぼやくのが聞こえたが、誰も相手をしない。

すぐにエルテはロープで括り整えたシカを背中に担ぎ、いつものように斬り落としていた頭は腰に下げた。

相変わらずの馬鹿力だとヘリックスは感心したが口には出さないでおいた。


歩き出し林の出口を目指す。


ヘリックスはシカを見る。ちょっと見た目が違うだけでシカだ。

後ろからローダーが「浸潤。乾燥。浸潤。乾燥。あーしんど」と言っているのが聞こえるがそれについては無視をする。


「んで、このシカ、本当にあっちから来たんだったらさ、強い魔物も来るのは時間の問題じゃん。対策どうなってるんだ?」


「ギルド長には言ったんだろ? 大丈夫じゃねーの?」


「今のところ特に騒ぎにはなってないわよね。シカぐらいしか来てないのか、そもそも別に関係ないのかもしれないわね」


林を抜け見晴しのいい場所へ出ると、町へと続く道があり、曲がった道の先にはわずかに建物が見えた。


「てかちゃんと調べてんのかね。その辺情報入ってないのボンクラ息子」


「何だお前それ俺のことかよ。つーか外のことはあんまり情報入らないから知らねーぞ」


「何だ無能か」


「お前に言われたかないわい!」


ローダーとヘリックスが叩き合いだすが慣れたもので、普段のようにエルテは無視をし3人そろって街へと帰ったのであった。


次回の更新は6/13(日)です。

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