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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第三章 王国編
78/113

78.帰還の儀

あつしさんの立った小さな円を中心にして、直径30メートルほどの円状に骨やら魔石やらを置いていく。

サルニタさんは、その円よりも外の、これまた魔石を置いた直径1メートルほどのスペースに立つ。

ミラージュさんはその隣に棒でざっと書かれた円形のスペースに立つ。

俺たちはさらに外側、何もないところで立って周りを見張ることにした。

もう真夜中は過ぎているかな。


「これでいいはずです。では始めます」


「よし、後は頼んだぞ」


本当に、去ってしまうんだな。犠牲無しは無理なのかな。

他に方法があるならサニルタさんが教えてくれてるだろうし、どうしようもないのかな。


「海と陸と空と三相一体の神に願う」


なにやらぶつぶつと呪文らしきものを唱える。


「始まりの(れい)に従い還りし道を造れ」


すると魔法陣が光り始めた。すごい。

めっちゃ魔法! って感じ。派手だねぇ。

あつしさんも興味津々で周りを見ている。


が、サニルタさんは魔法陣を見つめたまま呪文を止めて言い始めた。


「お伝えしなければならないことがあります」


なんだろう。


「魔王というものは、召喚されただけではなれません。召喚後の儀式を中断したために、あなたは魔王になれませんでした。故に現在魔王は存在しません」


え? いきなり何? なんで今になって言うの?

儀式を途中までしちゃってるやん。先に言ってよ。


「ん? 魔王じゃないなら魔王の魂じゃないってこと? だったら失敗するんじゃないの?」


「はあ!? おい待て、失敗するならあいつはどうなる!?」


焦るミラージュさんだがサニルタさんは冷静に返した。


「大丈夫です。失敗はしません。幸いにも先の儀式の失敗のお陰で、この地には歴代魔王の魂の欠片が残っております。そちらを使用致します」


「あら。じゃあミラージュは無事ですむのね」


なんだ。それなら初めから言ったらいいのに。

ミラージュさんめっちゃ覚悟してたんじゃないの?

無駄に心配して損したね。


「それじゃあ、なぜ帰還の儀を渋ったんだ? もしかしてまだ何か隠しているのか?」


「そうですね」

表情を変えずに続ける。

「私が消えます」


「は? なんで」


「この地に残った魔王の魂の欠片だけでは足りません。なので魔王と血のつながりのある者の魂、つまり初代魔王の直系の子孫である私の魂を使うのです」


へ? ちょっと理解が追い付かなくなってきた。

視界の隅で、並べていた石が一つ消えるのが見えた。


「いやいやおかしいだろ。それだったら、お前がこの儀式をする理由なんてないじゃないか」


「あなたを還すことも出来ましたが、絶対に首を振らなかったでしょう。なので黙って勇者を送るのが最善だと考えました」


「いやそれは……どうでもいいから、いますぐ止めろ」


「もう儀式は始めましたので止めれません」


どうすりゃいいの。止めるべき? でも失敗してもだめだし。


と、力づくで止めようとミラージュさんが動く。が、円から出ない。

いや、出れない?


「そこから出れませんよ」


「待って」


「これでいいのです。あなたを呼ぶよりも前から、魔族は滅んでいたも同然でした。我々の争いに巻き込んだ、これがせめてもの罪滅ぼしです」


光が強くなってきた。

また一つ、石が消えた。


「あとは新たな召喚の儀を起こさせないようにするだけです。残った魔族と人間のみなさま、お願いいたします」


そう言い、こちらに礼をする。

その顔は、笑っていた。


「みんなー! ありがとうー! ミラージュ、ありがとー!」


今までのことが聞こえていないのか、あつしさんは手を振りながら大声で言った。


辺り一面ひときわ大きな光につつまれた。

収まるとサルニタとあつしさんは消えていた。


「……成功したのかしら」


周りを確認するも、静かで暗く、どうも分からない。

だけど儀式に使った道具も消えてるし、成功している、はず。だよな。


「はっはははははは!」


突然笑い声が響く。

な、なに!?

慌てて見ればミラージュさんだった。


「大成功じゃないか! あいつは帰ったし、魔王はそもそも存在しないし、みんなが望む通りになった。そうだろ? 問題はないし、もはや何も必要なこともない! なあ!」


エルテも俺も、何も言えなかった。


「……2人ともありがとう。さようなら」


夜明けが近づく薄明りの中、ミラージュさんが去っていくのが見え、エルテと二人残された。

気付けば俺たちは手をつないでいた。


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