73.高いところが好き
うーん。明るい。
どうやら地面に転がっているようだ。遠くにヘビが倒れているのが見える。
なんでヘビの外にいるんだろう。誰かが引っ張り出してくれたのかな。
「あ、起きた? 服は横に置いてるからさっさと着てね」
横にいたエルテの第一声がこれである。
ちょっとは優しい言葉を掛けれんのでしょうか。
まあ仕方ない。黙って服を着よう。
パンツは消滅したからノーパンで。
あー、スースーする。
そういえば日が暮れる前に生き返ってるのって何気に早いな。
実は死ぬたびに再生が早くなったりしてんのかな? それとも怪我より死んだ方が早く治るのかな。
と、ふと気が付く。
「あれ? 他のみんなは?」
「あそこにいるわよ」
指さす方は城壁と塔。上に兵士たちが集まり、そこにあつしさんの姿が見える。
なんで高いところに集まってるんだろ。気になるね。
というわけで俺たちも向かう。
塔を登り城壁とつながる入口まで来たが兵士が詰まっていて出れない。そして奥には国王がいた。なにしてんだろ。
「いやはや、みな立派な働きをした! 今宵は宴を行い祝おうではないか!」
わああああああぁぁぁぁ!
歓声が上がる。
話の流れは全く分からんけど、みんな楽しそうね。
と、国王がこちらに気づいた。
「君たちも戦ってくれたんだって? いやあ驚いた、意外とやるもんだな。褒めてつかわす!」
兵士たちもこちらをみて拍手をする。もっと褒めてもいいのよ。
そういえば全部終わってから現場に来たのかな? 元勇者とは何だったのか。いや別にいいけどさ。
「宴にも招待してやろう。見たことも無い豪勢な食事が出るぞ」
「まじすか!!」
「あんた流石に現金すぎない?」
だってタダ飯だぞ。最高だぞ。いえーい。
エルテも本当は嬉しいくせにぃ。
「すっかり浮かれて、おめでたいですね人間ども」
え? なに?
歓声は止まり皆が声のする方を見る。
城壁の縁にフードを外したサニルタさんが優雅に立っていた。
あ、あれ? 人の前に出てきていいの?
「あれ魔族じゃないか?」「なに! 魔族は滅ぼせ!」「勇者様なんとかして」
案の定剣呑な雰囲気になる。
せっかくヘビ倒して平和モードだったのに台無しじゃん。
「ふふん。のんきにしているあなた方に良いことを教えてさしげます」
トカゲのような尾をフリフリしながら言う。
「魔族領よりも西の大地にはこことは比べ物にならない化け物が跋扈しているのですよ。あのヘビなんて他の魔物に比べれば赤ちゃん。そしてその化け物たちは、あなた方が魔族を滅ぼしたおかげでこちらに流れてくるようになるのですよ。自業自得です。ざまあないですね」
サニルタさんは煽る煽る。なんで?
「ふざけんな! お前が連れてきたんだろ!」「魔族は滅ぼせ!」「勇者様なんとかして!」
当たり前のように一触即発の事態になってる!
周りの人々が武器を手に持ったまま殺意をむき出しにしているのに、サニルタさんは気にも留めていない。強者の余裕なの?
兵士たちが飛びかかりそうになる。
が、先にあつしさんが前へと出て、一度しまっていた勇者の剣を取り出した。
「助けてくれたことは感謝する。だけど、もし王国の人たちと戦うっていうのなら……」
え? なんで? 戦う必要ないじゃん。どうなってんの?
「ふん。人間ごときが私に勝てるとでも」
「あぶなーい!」
「えっ?」
突然ミラージュさんが現れサニルタさんを突き落とした。サニルタさんはそのまま塀の下へと落ちて行った。
あまりの出来事に全員が静まり返る。
「…………」
「えーっと……」
なんだ今の。
「さすが勇者様! 魔族を追い払ったぞ!」
へ?
唐突にミラージュさんが言うと周りの人たちは、おお、とざわつき始めた。
それでいいの? 君ら。
無かったかのように次々に称える言葉が上がり始める。
それでいいのか本当に。
そして気付けばミラージュさんはいなくなっていた。
「なんなんだあの人」
「理解できる人がいるの?」
熟考の末、いないという結論が出た。まったくもって、意味不明ですな。




