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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第三章 王国編
72/113

72.で、味は?

兵士たちは散開しヘビを囲む。

あつしさんはヘビに突っ込み剣を振り下ろすが、弾かれた。


「やっぱり効いてないみたい」


エルテと同じく剣が通ってない。ウロコが固いのかな。


散開していた兵士たちも一気に距離を詰め、各々の武器を突き立てる。が、やっぱり効いていない。


みんなにちょっかい出されて機嫌の悪くなったヘビは尾を大きく滑らせ兵士を吹き飛ばした。

うわぁ。


「みんな、大丈夫!? 危ないから下がって!」


全然大丈夫じゃないと思う。すぐに起き上がらない人もいた。


あつしさんはそれを確認すると街とは反対側に立ち、ヘビをバシバシ叩いて挑発し始めた。その間に兵たちが退散していく。

俺も手伝う。というかこのまま一緒に街へ戻っちゃお。


と思ったけどエルテはヘビの側から動いてないままだったので結局ヘビの近くに戻る。


あつしさんは勇者の剣でヘビの胴を斬り付けていた。が、やっぱり斬れてなーい。

ヘビは先ほどと同じように尾を払う。スーツの力か、あつしさんは跳んで避けた。

しかし着地を狙ってヘビが突進する。


あ、あぶない!


が、横からなんかが飛んできてヘビが横へ飛ぶ。

今度は何だ!


「おい馬鹿、危ないだろうが! 近づくんじゃない!」


ミラージュさんだった。

あれ人間? すごいなぁ。


「だって近付かないと戦えないじゃないか」


「お前が戦わなくてもいいだろ! こいつらに何の義理があるんだ!」


「勇者だし能力があるんだから戦わないと」


「それがおかしいって言ってんだよ! ここのやつらにまかせときゃいいだろ!」


あつしさんを心配してるのかな。あつしさんもなんかエルテみたいなこと言ってるし。ミラージュさんも苦労してるんだな。


おっと、弾かれたヘビは起き上がったぞ。

急に吹き飛ばされてびっくりしたみたいで周りを見ている。

そして、周りにいる人間が多いからどれを狙うか迷っているようだ。


「弓も剣も蹴りも全然効かないじゃん。どうするよこれ」


うーん。そうだなぁ。


「じゃあ、魔法とかしたらどう?」


「だれが使えるのよ」


「あ、それなら、サニルター!」


「はーい!」


うわ! またすっとんできた! どこに潜んでいるんだこの人!

今日は長いローブとフードで全身を隠している。人前だからかな?


「じゃあ私たちがヘビの気を引き付けとくからさっさと倒す作戦決めて」


「あ、ちょ、危ないだろ」


と俺とミラージュさんが言っても、エルテもあつしさんも聞かずにヘビに向かう。

なんかなー。

こうなったら急いで決着つけるしかない。


「と、その前に確認したいんだが、なんでも斬れるはずの勇者の剣で斬れないってのはどういうことだ?」


「リントヴルムの体表面は頑丈なウロコと体液で守られていますので、攻撃が通りにくいのです」


「リントヴルム?」


なんだそれ。


「あのヘビの名前ですよクソ人間頭悪いですね」


ちょっと確認しただけなのに酷い言われよう。そこまで言わなくてもよくない?

しかしミラージュさんは何事も無かったかのようにサニルタさんに聞く。


「じゃあ焼いたらちゃんと効くのか?」


「魔法も同じで効きにくいのです。内側から焼けば効くでしょうが、口を狙うのは至難の業です。もちろん最善を尽くしますが……」


「ベストポジションは、ヘビが人間を狙っているときの人間のそばだな。だが君を人間に近づけさせたくないし」


魔族ってバレたら大騒ぎだもんね。


うーむ。

あ、そうだ。


「誰かが口を開かせたらいいんだろ。俺がするよ」


「え? どうやって?」


それはもちろん。


「この身体を使うのさ!」


この手に限る。


「おい、もしかして……君が食われるってことか?」


「その通りでございます」


すごく合理的で天才的な発想だよな。さすが俺。


「あー……どうやって口に入る?」


「え? だから食われたらいいんでっしゃろ?」


「いや、ピンポイントでお前を食ってくれるのか?」


あ。


「えーっと、それは、ヘビの近くで踊ってたら来るんじゃね? 多分。きっと」


「ううーむ」


「ほら! 他に方法ないしやろうよすぐやろう!」


まあそうだが、とミラージュさんは渋々納得したが、聞こえていたらしいあつしさんが言ってくる。


「そんなの危ないから駄目だよ」


あつしさんやさしいね。


「いやでも不死身だしいいんじゃない?」


なぜかエルテがフォロー(?)する。やさしくないね。


「あ、そっか」


するとあつしさんも合点が言ったようだ。もしかして俺が不死身なの忘れてたのかな。


「じゃあミラージュでもいいんじゃ」


「えっ!?」


ミラージュさんめっちゃびっくりしてるけど。ナチュラルに酷いやん。


「クソ勇者殺しますよ?」


「え、事実言っただけなのに」


「あぁ……うん……」


なんかミラージュさんは複雑な顔をしている。

不死身でも痛いのは嫌だもんね。分かるよ。

でものんびりしてたら犠牲者が増えるからさっさとしなきゃ。


「するなら急がないと!」


「あ、そうだね。じゃあ僕たちが引き続き注意を引き付けるから、ヘリックスさんはなるべくヘビに近づいてくれる? タイミング見てサニルタさんは魔法を撃って」


「おうとも!」


そうと決まれば着ているものを全て脱ぐ。

パンツは流石に残す。

よし。


「あれ。なんで脱ぐの?」


「いや、服とか装備は大事だから燃えないように置いとこうと思って」


「そうね。じゃあ早く行ってね」


これである。

まあ仕方もあるまい。エルテだし。

覚悟を決めていざ出陣。


「でええええええええい! 私も行ったるわああああああああああ!」


うお! なんだ!

何かと思ったらミラージュさんが突撃している。やけくそか!?


「もう、初めからしてくれたらいいのに」


「お前あとで覚悟しといてください」


サニルタさんもミラージュさんについて走っていく。俺も急いで行く。


「おい、近付いたら全力でこっちを向かせるぞ! 覚悟は良いか!」


「あ、あい!」


早すぎて追いつくのに必死だよ。


そしてどうやって気を向かせたらいいのか。


近付けばすぐにヘビは体当たりを仕掛けてくる。狙いはミラージュさんだ。だが軽く身をひるがえし、いとも簡単に避けた。一方俺は砂埃を余すところなく全身に浴びた。


「ぶっほへ」


前が見えねぇ。

続けて近くでバタバタ聞こえ、さらに砂埃が立つ。


ちょっとこれ作戦どころじゃないよ!


仕方ないし後ずさって砂が収まるのを待ってみる。エルテは無事なんだろうか。


あ、ミラージュさんが帰ってきた。


「なんか体当たりと尻尾払いばかりで食べようとしてこないぞ」


たしかになんでだろ。

馬食べて満腹なのかな?


「このままではキリがありませんよ。どうしますか?」


「うーん……あ! そうだ!」


え? 何かひらめいた?


「サニルタ撃って」


「はい。爆ぜろ空気」


ちょっと適当な感じでサニルタさんが魔法を撃つ。するとヘビの頭の近くで爆竹程度の爆発が起こる。

なにその魔法。使いどころが微妙過ぎない?


効いては無いようだが、驚いたのか口を大きく開いた。


「よし、じゃあ行ってくれ」


「え? 俺そんな跳んだりできない」


「私が投げる」


え?

後頭部を鷲掴みにされているような感じがする。ていうかされてる。

え?


「おうらあああああああああああ!!」


「のえああああああああああああ!?」


首もげる!

と抗議する前に飛んでいる。わあ。高いや。

変に投げられたからか回転がかかり、前後左右、上下も分からなくなる。


「あ」


がぼっと音がして暗くなった。周りは生ぬるいしべっちょりしてる。

えーっと。

もしかして口に入ったのかしら。


「おーい、突っ張って口を開かせてくれー」


なんか聞こえるけど、今自分がどんな体勢かも分からん。

ちょっとじたばたしてみよう。


「うむおおおおおおおおおおお」


底から響く唸り声とともに臭い空気に満たされた。息しにくいじゃん。

あ、もしかして吐こうとしてる? そしたら計画がおじゃんだ!


しかし逆に考えれば口を開こうとしているということだ。

目を動かして確認すれば明かりが見えた。あっちが口か。すっぽりはまりすぎて喉にひっかかっているみたいだ。なんとか口まで戻って開かせないとな。


「ごぼぇ」


「うわ!」


熱い液体がかかる。気持ちわる! ていうかマジで熱いこれ胃液的な消化液的な長いこと浸かったら死んじゃう的なやつだ。


だがおかげで滑りが良くなった。液の流れに乗って口に向かうおう。

臭い。


なんとか口までたどり着く。

起き上がり足を開いて踏ん張って腕を真上に押し込むと、吐こうとしていたからか、簡単に口が開いていく。


が、ヘビの舌がウネウネするわ消化液が出てくるわ、突っ張り続けるのきついっす。油断したら出ちゃう。


「うんぐおおおおおおお」


はみ出ないように頑張ると外が見えるくらい口が開いた。

よっしゃ! 早く撃ってくれ! 5分と持たんぞ!


「は、早く撃ってー!」


「今行く!」


声がしたので外を見るとミラージュさんがサニルタさんを肩車してジャンプして目の前まで来ていた。

すげぇな。


え!? す、すげぇな!?


「焼き尽くせ! 獄炎!」


あ、なんかヤバそうな感じね。

目の前に白い炎が迫ってくる。ひええ。

でもびびって閉じちゃうとダメだから全力で突っ張る。


「ぬうおおおおおおおおおおおお!」


全身が炎に包まれてあっつい! のかな? よく分からん。

見えないし感覚ないし。あらまぁ。意外と楽に意識なくせそ。


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