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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第三章 王国編
71/113

71.食べ放題コース

「めちゃくちゃデカいヘビがいて見張り台を破壊したんですよ! 王都のすぐ近くの北西の見張り台です!」


王都に着くなりギルドに報告するも、ギルドの人はまったく聞いちゃくれなかった。


「はいはい巨大魔獣ですね。確認して討伐が必要ならそうしますね」


「ちょっと! 悠長にしすぎ! すぐ近くにいるのよ!」


「そちらこそ焦り過ぎでしょう。この街には立派な城壁がありますし兵士もいますし、最悪勇者様に頼めば何とかなりますし」


こいつら勇者に依存し過ぎだろ。すぐみんなで対処しないとヤバいのにな。


「言っても分からないみたいだしほっとくか?」


「何言ってんのよ。ダメに決まってるでしょ」


ダメか。


どうすればいいか悩んでいると、途端けたたましく鐘が鳴り始める。

なんだなんだ。


「巨大なヘビの化け物が出た! 戦えるやつを出してくれ!」


兵士みたいな格好をした人が飛び込んできて言う。

するとギルド内は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。


「わーどうしようまじでえーどうしよまずいって急いで勇者呼んでうわーどうしよ」


「いやいやまずは王様に報告していや宰相に」


「おい落ち着け! それはこっちでするから戦えそうな労働者出してくれよ!」


あーあー、言わんこっちゃない。

みんな慌てふためいてドタバタし始めた。俺たちは邪魔にならないように部屋の隅に寄った。


「さてと、どうしよう。俺らがここにいても仕方ないしどこに行こうか」


「そうね。こうなったら勇者たちが来るまで私たちで食い止めるわよ」


ええ?


「なんで? 危ないから避難するでしょ普通」


「何言ってんのよ。あんたが言ったんじゃない。好きにしろって」


…………。


「いや! それとこれとは話が違う気がする!」


「何が違うのよ。私が思う勇者はこういうときに戦うわよ」


「いやぁ、そん、えー、いや、しかし」


だがいい反論が出てこない。うそだろ。


「とにかく様子を見に行くわよ」


嫌ですぅ。

腕をつかんで引き留めようとするも一緒に引きずられる。

力負けするし無理だ。仕方がないから普通についていこう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


結局城壁まで来てしまった。

城壁の要所要所には塔があり、混乱に乗じてその塔のうちの一つに侵入してから城壁の上へ行く。


ここからだと遠くが良く見える。見張り台があった場所まではさすがに見えないけど、畑と民家は見えた。畑の一部はヘビが通ってめちゃくちゃになっている。


で、肝心のヘビはどこだろう。見えないな。

エルテも乗り出して見回している。


「ていうか死ぬかもしれないから前に出んなよ。本当危ないから」


「いや逆でしょ? いつも死ぬのはあんたなんだから下がってなさいよ」


いやその理屈は……反論できないけど。


「あ、いたわよ。あそこ」


指さす方向を見ると、ヘビは街のすぐ外にある馬小屋に頭を突っ込んでいる。なにをしているのかと目を凝らせば馬を食べている。うわ怖い。


「いやちょっと……あれ無理だろマジで」


「うーん」


「弓兵とか魔法兵とかに任せたら良くないか? 俺らのする事なくないか?」


「うーん」


唸るだけで引く気は無いようだ。でも攻める方法も分からないようだ。


「ていうか放っておいたら帰るんじゃないか? ほら、食べ終わったみたいであっち向いたぞ」


「あ、ほんとだ。って」


ヘビは満腹になったのか壁に背を向けた。

が、それに合わせて兵たちが弓を放った。

もちろんただの矢なんかが効くはずもなく、ウロコで弾かれて落ちた。

そしてヘビは壁に向き直る。


「えっと、ヤバいね」


「そうだな」


なぜこのタイミングで攻撃したのか。明らかに失敗だろ。

ヘビは思い切り身体を下げたと思えば壁に体当たりをしてきた。


「うわ!」


「ちょ、崩れる!」


どんだけ強力な体当たりだったのか、壁が崩れ始めた。みんな急いで逃げていく。

俺たちも塔の方へ逃げ、れた。なんとか間に合った。


無事なのはいいが、壁は全然無事じゃない。

完全に崩れた壁からヘビが街の中を覗いている。


ちょっとえげつない未来を想像してしまった。ヤバいって!


「今行くしかない!」


「え?」


と、横を見ればすでにエルテは駆けていた。

塔の階段を駆け降りていく後姿を追う。


「ま、待てよ!」


だが待たない。

塔を出てヘビに向かいながら剣を抜き、そして斬りかかった。

しかし刃はヘビに刺さらない。


「固っ!」


そしてそのままヘビの側を走り抜ける。何故戻ってこない!?


「おいエルテ危ないから帰って来いって!」


言っても帰ってこないのは分かっていたので急いでエルテの方へ向かう。

まあそのためにはヘビの横を通らないといけないんだ。怖い。


焦って向かっていたのに、心配をよそにヘビはエルテをちょっと見たあと弓兵の方へ向き直った。ムカつき度は弓兵の方が勝っていたようだ。


その隙にエルテのもとへとたどり着く。よかった。


「危ないからあっちに移動するぞ!」


「うーん。仕方ないか」


ヘビから距離を取るが向こうからしたら一瞬で襲える距離だ。もっと離れたいんだけどエルテがこれ以上離れない。もう。


「このままじゃ囮ぐらいにはなるけど決定打が無いから食われてジ・エンドだよ。これで死んだら無駄死にだよ。やっぱ逃げようや」


「いやよ」


ですよね。


「でもどうしようもなくね? 兵士であの有様だよ?」


弓兵がいた場所を指さす。だが弓兵はとっとと塔の中に逃げていた。いや戦ってよ。


ヘビは弓兵を狙いたいようで壁に体当たりを繰り返している。

ひとしきり壁を壊して意味がないことを悟ったのか、壊すのを止めてこっちを見てくる。


「あれ? なんでやめたのかな? ていうかめっちゃ見られてるしこれヤバいかな」


「うん……逃げよ!」


が、遅すぎた。

一瞬でヘビの顔が近づく。


あ、これ無理だ。

こうなったら


「うおりゃっ!」


エルテを突き飛ばす、が、間に合うのかこれ。

そしてけたたましい衝突音。


俺は死んでーーない。あれ?


吹き飛んだのはヘビだ。頭をのけぞらせてからフルフルしている。


「な、どうなったんだ!?」


「2人とも無事かい?」


なんと、目の前に現れたのはヒーロー!

ヒ、ヒーローが助けてくれた! なんか世界観間違ってない?


まあ正体はあつしさんなんだけど、急に来たら本当に場違い感半端ない。


あつしさんはヒーロースーツ姿にファンタジーな剣を構えるというアンバランスな格好でヘビと対峙する。


「ちょっとデカいけど……必ず倒す!」


「おおおおーーー!!」


引き連れてきたらしい重装備の兵士たちと、隠れていた弓兵たちが出てきて雄たけびを上げる。

士気めっちゃ上がってますわ。さすが勇者ですなぁ。


「やった、勝ったな。じゃあ俺らは帰るか」


「何言ってんのよ!」


グーで殴られた。痛い。

土で汚れたエルテは未だやる気に満ち溢れている。汚れたし帰ろうよ。


「私たちも加勢するわよ!」


ええー。

俺らで役に立てるのかしら。


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