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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第三章 王国編
69/113

69.お城

博物館を出て王城に着いたのはお昼過ぎ。

お城は堀で囲まれて、門へは石橋でつながっている。

そして結構大きい城門は開かれている。


とりあえず門の側に立っている兵士にかけ合ってみる。


「勇者である国王様に会いに来ました。会わせてください!」


「名前は?」


「エルテとヘリックスです」


「えーっと、予定の名簿に入ってないぞ。急にそんなこと言われても謁見できるわけないだろ」


当たり前すぎであった。


「じゃあどうやったら会えますか?」


「んなこと何でいちいち言わないといけないんだよ。帰った帰った」


ひでぇや。方法くらい教えてくれろ。


やる気なく追い払う兵士の向こうには庭園が見え噴水の音も聞こえる。やっぱ王城ともなると庭も豪華ですなぁ

すると奥から近づいて来る人影。うわ、追い出す専門の人かな。

だが現れたのはマッチョの兵士ではなく知っている人だった。


「えっ、あ、これは勇者様。お知合いですか?」


「うん、そうだよ。用事があって僕が呼んだんだ。入れてくれる?」


「ええ、もちろんです! おい、勇者の知り合いなら入ってい……どうぞお入りください」


道を譲られ本当に入れてくれた。マジかよ。


門の勝手口をくぐると豪華な庭園が広がっていた。腰より低い生垣と花が植えられ、身の丈の倍はある噴水からは水がどうどうと溢れ出ていた。東屋もあり、小さなベンチとテーブルが備え付けられテーブルの側にはティーカップを片付けているメイドさんたちがいる。

庭にも何人も使用人がうろつき、手入れをして回っていた。


わぁ。すごい。初めてまともに金の無駄遣いを見たぞ。

まあ王様だし見栄は張らないといけないよね。


ほどよく門番から離れたところでエルテがあつしさんに話しかける。


「平気で嘘つくなんてやっぱり勇者っぽくない」


「あはは、入りたかったんだからいいじゃないの。それで、どうしてここに来たんだい?」


方法はともあれ正直ありがたかった。

せっかくだから王様に会うのも手伝ってもらおうかな。


「勇者のこと調べるために王様に会いに来たんすよ。どうやったら話せると思います?」


「あー、えーと。そうなんだ。まあ、殿下も結構ヒマ……お手隙の時間もあると思うから聞いてみるよ。多分大丈夫だよ」


「へぇ!?」


どういうこと?


「なんで王様がヒマなのよ」


「いやだって……政治は王の仕事じゃないし」


「え、なんで王様が……政治しないのよ?」


「まあそれは……大変だから……」


やっぱりな。案の定であった。まあ別にいいけどね。昔に勇者として頑張ったんだろうし。

まあ、ともかくつまり、会える余地はあるということだな。


「じゃああつしさん話を通してもらえます? 俺らは応接間ででも待ってますわ。あ、応接間ってどこっすか?」


「えぇ? えーっと……」


困惑しながらもそのあたりにいたメイドさんに尋ね、メイドさんが城の中の応接間に案内してくれた。そしてあつしさんはアポを取りに行った。やさしいね。


応接間でのんびり休む。

立派なイスに腰かけもぞもぞするエルテ。

お茶とお菓子をむさぼる俺。

そうこうするうちにすぐに帰ってくるあつしさん。


「1時間くらいしたら話せるって。それまでお城の見学でもする?」


せっかくなので見学をする。

さっきの応接間とは別の小さめの客間、めちゃくちゃ広い食堂、さらに厨房。

そして廊下へ戻って、ツボやら鎧やら額の絵やらキレイなカーペットやらを鑑賞しながら一度外へ出る。城の横から出たので日陰で物置的な場所になっている。壊れた武器やら彫像やらが積まれていた。見ちゃっていいのかなここ。


そのまま門側へと進み、先ほどの庭に出る。反対側は何もなさそうだった。


まだまだ時間があるので庭の東屋に座って休む。すぐにメイドさんがお茶を持ってくる。すごい。


「なんか絵に描いたようなお城っすなー」


「そうだね。この世界自体、なんか想像通りなファンタジー世界だし、王城も例に漏れずだね」


そんないかにもな異世界に転移しちゃうとかすごいな。俺は全く謳歌出来てないけど。いい能力持ちのヤツずるい。


「そういえばリンバナナとかいうリンゴとバナナの町の意味が分からんのすけど、なんですかねあれ」


「あー、元の世界にあったものがたまにあること、僕も気になってるけどよく分からないんだよね」


分からんか。何にも分からんな。

その後は食べ物やら衣服の話を駄弁った。

話をした限りピロシキは存在していないようだ。ガーンだな。だったら作るしかないけどおのようなもの小麦のようなものも油も調味料も結構値が張るみたいだ。けっこう食材が高いんだね。どっかの色々出してくれる料理屋で頼む方が早くて安そう。


話しているとメイドさんが来て謁見時間が近いことを教えてくれた。なので席を立ちみんなで謁見の間に向かう。


正面扉から入り赤いカーペットを辿って2階へ。真正面には装飾された扉、横に兵士が二人立ち真正面を見ている。


俺たちは緊張しながら開けられた扉を通った。


謁見の間は広く、柱と旗、シャンデリアと真正面に豪華な玉座という構成で、城の入口からあった赤いカーペットが玉座まで続いている。


そして玉座におわすのは小太りのおっさん。


…………。


え、これ王様? 銅像だともっと若かったしスリムだったじゃん。

俺もエルテも固まってしまった。


「控えい!」


王様の横の人に怒られて慌てて膝をつく。あつしさんは先についていた。


「この度はお時間をいただきありがとうございます国王殿下。こちらが」


「おい! 略すんじゃない! フュルヒテゴット=デュッケ国王殿下と呼べ!」


「は、はいヒュルルヒテ、フルヒテッゴ……」


「なんてな。冗談だよ! 俺自身、名前が長ったるくて面倒だと思ってるんだからなぁ! 殿下でいいぞ」


「あ、はい。申し訳ありません殿下」


なんだこの人。


「で、お前らが?」


「あ、はい。俺は冒険者してますヘリックスです。あ、転移者です。んでこっちが」


「私はエルテでダーチ人です」


「ほーん」


全く興味なさそうだった。

だがめげずに聞くエルテ。


「私は勇者のことを調べていまして、最近まで勇者をしていた国王殿下のお話を是非拝聴したいのです」


「そうだなぁ……入れといてなんだが、別に勇者のことは詳しくないぞ」


「えぇ……」


無駄足ですか?

王は手をひらひらさせながら続ける。


「だってそうだろうが。急にこの世界に呼ばれて、魔王倒してくださいー、だなんて言われてよ。まあ、強くてかっちょいい能力も手に入ってて、悪い気もしないからちょっとは頑張ったけどなかなかキツイじゃないか。しばらくしたら魔王がいつの間にか死んでたらしく……あ、これあんまり言うなよ? 平和になったから王都で過ごしてたら、なんやかんやあって王になっちゃったわけだ。流れだよ流れ」


なんやねんそれ。この国大丈夫なのかな?


「んまあ、俺がいるだけでみんな安心するならそれでいいだろ。今もまた魔王はいないし、今はお前が勇者だしな」


最後はあつしさんを見て言った。

みんなが安心っていうかこの人が安心してるっていうか。

端的に言って怠けていますな。


「あのー、俺からも質問良いですか?」


「あ、なんだ? 知ってることなら教えてやるが、全然知らんぞこの世界のことは」


そんなはっきり言わなくても。


「いや、でも俺よりかは先輩ですし、ほらまあ、王様ですし? いよっ! 大統領!」


「ある意味面白いが結局質問は何なんだよ」


「あ、はい。魔王がいつの間にか死んでたってなんすか」


「なにって、知らねーよ。街に帰ったら嫁が魔王はもう死んだとか言ったからそう思っただけだよ。みんなも聖女が言うならそうなんだろっていうしよ」


なにそれ。


「聖女様は魔王の出現と消滅を感知する能力があるのです。出現を察知し異世界より勇者を呼ぶ能力もあります」


横の人に答えられた。誰だよ。


「んまあその通りらしいぞ。それでしばらくしたら新しい聖女が魔王が現れたっていうから新しい勇者を召喚したわけよ」


え、なぜ?


「すでに勇者である王様がいたのに召喚したんすか? 追加で?」


「あ、いや、俺は国を守らないといけないし……」


ちょっともごもごしてる。戦いたくなかっただけでは?


「聖女様1人につき勇者様1人を召喚出来ます。安全確実に事を成すには1人でも多く召喚した方が良かったという訳です」


また横の人が答えた。

ていうか横の人に色々質問した方が楽そう。なので横の人を見ながら聞く。


「じゃあじゃあ何で魔王がそんなまたすぐ現れたんすか?」


「それは魔王も異世界から召喚されるからです。勇者と違い魔王は魔族によって召喚されます」


そうなんだ。そういうや博物館にも異世界からの魔王がどうとか書いてたような……。


「だがおまえのおかげで魔族自体がほとんどいないんだろ? もう安心だよなぁ」


うははと国王が笑う。

あつしさんも愛想笑いをしていた。俺は別に面白くも無かった。


「あ、まだ国王になる気はないのか? なるなら早めに行ってくれよ。準備があるからな」


「いえ、私は元の世界へ帰りますので、王になる気はまったく御座いません」


「帰る方法なんてねーよ! それに元の世界よりここのほうが贅沢に暮らせるんだぜ。まあテクノロジーは無いけどな。でもそんなに悪くはないぜ」


「はは、考えておきます」


また愛想笑いで返していた。


そんなこんなで謁見終了。

あつしさんが定型文を言い、しずしずと退出する。


もう用は無いのでさっさと階段を降りて行く。


勇者と魔王のことは色々分かったけど、俺には関係ないしエルテが知りたかった情報でもなかったな。

つまり収穫は無かったといっていいのでは?


分かり切っているけど、エルテにも確認してみよう。


「どうだった? 何か分かった?」


「全然勇者じゃないのが分かった」


「俺も勇者の定義は分からないけどこれは違うと思う」


「そっか」


納得し合いながら1階の廊下を進む。

もう城に用事無いな。どうしようかな。


「エルテさんは自分の中の勇者っていうのがしっかりしているんだね」


先導していたあつしさんが振り向いて言う。


「え、どういう意味ですかそれ」


なんかエルテが半ギレだ。あつしさんに対して当たり強すぎん? 落ち着きたまえ。


「あ、ごめん、別に皮肉とかじゃなくってね。もしその勇者像を目指しているのなら、その勇者になりたくなった切っ掛けがみたいなの大事なんじゃないかな。それを調べたら目指す方法も分かるんじゃない?」


ははぁ。なるほど。一理あるな。


「エルテどう? なんか分かりそう?」


「…………」


考え中みたいだ。じゃあ俺に出来ることは待つだけさ。

そうこうしているうちに庭まで出ちゃった。日が傾いて、今は3時くらいかな。

するとおもむろにエルテがしゃべり始める。


「おじいちゃんから聞いた話なんだけど……。あ、おじいちゃんも、おじいちゃんから聞いたらしいんだけど、ご先祖様が大昔に王国の北西にあった村に住んでて、そこが魔族に襲われたときに勇者に助けられたの。その話を子供のころ何度も聞いたから……それがきっかけだと思う」


なるほどね。


「じゃあその村を調べるてみるか?」


「それがいいと思う」


話していたら門の前まで来た。

あつしさんは城に残るらしいのでここで別れの挨拶。


「今日はありがとうございました」


エルテはまだ微妙に不機嫌なままお礼を言う。なんて面倒くさい性格なのだ。


「俺も本当お城とか入れちゃってよかったっす」


「いやいやお礼は帰る方法見つけてくれたらそれでいいから」


謙遜なのか出来そうもない要望を笑って言ってくれてから別れた。


街へ戻る道すがら、明日の予定を立てる。

2人で行くのも心配だけど頑張るしかないか。


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