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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第三章 王国編
66/113

★66.隠し事?

暗闇の中に浮いている人間大の白い影。レイスは漂いながらこちらからゆっくり離れていく。

逃げるの? 逃げちゃうの?


「あいつなのね! じゃあやるわよ!」


言うが早いかエルテはものすごい速さで突進し、剣と突き立てる。が、


「効いてないじゃない!」


剣はすり抜け、エルテは勢いのまま反対側に着地した。


俺はランプを拾い、急いでエルテの側へ行く。あつしさんもゾンビを倒しながら集まる。


「そりゃレイスは霊なんだから物理攻撃が効くわけないじゃん。レイスは霊。ははは」


ミラージュさんが呑気にレイスの横で言い放ち、エルテは怪訝な顔をした。

ダジャレ言ってもどっちかの単語が違うだけで伝わらないと思った。


ていうかそんなこと言ってる場合かよ!


「物理効かないとか俺たちじゃ倒せないじゃないすか!? どうするんすか!!」


そうこうしている内に、レイスを守るように周囲のアンデッドが集まり、さらに地面からも出てくる。

ゾンビたちは倒せばいなくなるかもしれないけど本体を倒さないとまた湧いてくるぞ! 移動したら他の場所でもアンデッドを生むだろうし、早急に手を打たねば。


と思いつつも手が無いのでみんなでゾンビたちを倒していると、突っ立っていたミラージュさんが急に閃いたのか口を開いた。


「そうだなぁ……じゃあ……サニルター!」


「はーい!」


声が聞こえたかと思えば、けたたましい音とともにゾンビとスケルトンが吹き飛び、何かがこっちに向かってくる!

そうして現れたのは、赤い髪に黒い肌をしている前に会った魔族だった。


え、近くにいたの?


「お待たせしました。お呼びでしょうか」


かしこまってミラージュさんの前にひざまずく魔族。2人とも周りのゾンビたちを気にもしない。なんだこれ。


ミラージュさんがレイスを指差し言う。


「あの白いの焼いて」


「承知しました! では最大級の魔法で」


「あ、生きてる人間は焼かないで」


「そうですか……じゃあ中くらいの魔法で……」


追加で注文されるとサニルタさんは嫌そうにした。俺たちは焼かないでお願い。


「みんなレイスから離れろよー」


エルテとあつしさんが幽霊から離れる。

俺もスケルトンを無理やり押しやって離れる。なんでこっちにばっか集まってくるんじゃこの骨は。


サニルタさんは呼吸を整え集中し、そして呪文を唱える。


「望まれぬもの、原始へと帰れ。蒼炎!」


青く激しい炎が現れ、辺り一面に広がる。

すげぇ! 熱い! これで中くらいなの? すげぇし熱い!


挿絵(By みてみん)


一瞬で広がった炎が少しして収まり、周りが見えるようになるとアンデッドはだいぶ減っていた。


「倒しきれてないぞ」


ミラージュさんが言う通り、レイスは半分ほどになっていたがまだ動いていた。しぶとい。このままだと逃げられるかも。

もう一発いっとく?


「これがとどめだ!」


と、いきなりあつしさんが叫びながら剣を振った。

え。どっから出したのその剣。


「ビョオオオオォォォ…………」


斬られたレイスは断末魔を上げながら薄くなり消えた。

あたりにくすぶる炎が消えると、アンデッドは全て倒れていた。

やったね。


風が炎の名残の熱をも消し、静寂が訪れる。虫も鳴かない闇。

上がった息も収まり、力が抜けた。


落ち着くと、あつしさんが剣を重そうに引きずってこちらに来て、ミラージュさんは半身引いた。


「えーっと、なんなのその剣」


「王様から貰ったんだけど、勇者の剣とかいってオバケでも魔王でも切れるんだってさ」


「ふ、ふーん」


勇者の剣の刃は虹色に光っていた。それっぽい。初めっから使えばいいのにね。


「まあ僕は剣とか使えないから、とどめぐらいにしか使えないね」


と言いどこかに収納する。どこに消えたの? なんかかっこいいね。ずるいね。


それはともかく終わったので状況を確認する。

エルテとあつしさんは返り血でデロデロになっていた。

俺もいつのまにやら脚に怪我をしているし、盾は割れて半分になっていた。もうだめだこれ。


エルテは身体を拭いて聖水を浴びるとマシになった。あつしさんは変身を解除したら綺麗になった。便利だな!

俺の怪我はどうせ治るから放置した。盾は捨てた。


それにしても俺今回めっちゃ頑張ったんじゃない? スケルトン倒しまくったよ。すごくない? 小躍りしちゃお。


「ぶわ!」


急に顔に水が飛んできた! なんだよ!


「あんたも呪いがかかってるかもしれないんだから、ちゃんと聖水使ってよね」


何かと思ったらエルテが聖水をかけてきたみたいだ。先に言ってくれよ。自分でかけるよ。


他のみんなは呪い大丈夫なのかな?

見ればあつしさんは平気だし、ミラージュさんは……まったくキレイであった。返り血も無い。ってことはサボってたな!


顔を拭いてランプを持つ。辺りはあちこち焦げて骨と肉片が散乱し大惨事ですよ。


「ねえところでなんだけど……」

エルテが改まって言う。

「なんで魔族が言うこと聞いてるの?」


それか。まあなんとなく気になるけど……。


「それは私のあ」


「そりゃあ友達だからだよ。別に人間以外と交友を深めてもいいだろ?」


ミラージュさんは素早くサニルタさんの口を手で塞ぎ白々しいことを言う。前もやってたよねそれ。


「いや、とっても怪しいんだけど……。もしかしてだけど、この騒動自体がミラージュ……さんの自作自演なんじゃないの?」


な、なんだってー!! すごい発想の飛躍じゃん。


「流石に陰謀論が過ぎるのでは? それってミラージュさんに利点ある?」


「あんたどっちの味方なのよ。どう考えても怪しいでしょ」


いやいや常識的に考えてだね。違和感は無きにしも非ずだけど、勇者であるあつしさんが信用してるんだからそんなことは無いと思う。無いよな?

ミラージュさんは心外な顔をしていた。


「えーと、そんなことする意味ないし幽霊とか見たの初めてだし。なんでそんなこと言い出した?」


「いやオバケは関係ないでしょ。要は魔族と結託して何かしてるってことが問題なんだから」


なんか、じんわり怒り出したぞ。落ち着きたまえ。

だが俺には止める力などなかった。どうしよ。


「んなこと言ってもなぁ、私とサニルタはただ友人として仲が良いってだけでね」


「仲が良いなんて嬉しいです」


「いや、ややこしいから口挟まないでね?」


サニルタさんはくねくねしながら言う。この人天然か?


「そうよ、魔族は黙ってて」


笑顔が一転、鬼の形相に変わった。怖い。

エルテはさっきの魔法の威力を忘れたのかな。危ないから刺激しないで欲しい。


「それにあつしさんも」


怒りの矛先があつしさんにまで向かってしまう。

え? そっちにも突っかかるの?


「勇者なんでしょ? なのに魔族を倒さないのは意味が分からないし。何か隠してるんじゃないんですか!」


やべぇよ。収集付かないよ。どうにかしなければ。

だが俺には止める力などなかった。どうしよ。


しかしあつしさんは冷静に答えた。


「隠し事してるよ」


「えっ」


どういうこと?

意外過ぎるあつしさんの言葉にエルテも止まった。


「誰だって隠し事をしているさ。僕だって、君らだってそうだろ」


え、俺ら? あるかなぁ。あるかも。

みんなには秘密にしているけど、実は弱い、とか。


「ちょ、私たちのことはいいでしょ! 誤魔化さないでよ! 魔族のことがどうなのかって言ってるのよ!」


あ、そうだった。ちょっと気になる疑惑に答えてもらわないと。


「そうだね……。みんなが魔族を恨んでいるのは知っているし、その気持ちは分かるんだけどね」


どうも俺たちが引かないのを見て、あつしさんは説得する方針にしたようだ。

だ、大丈夫かな。


「いいかい。魔王はもういないし、魔族だってほとんど残ってはいないんだ。無益な争いはする必要がないだろう?」


「で、でも、魔族は長いこと人間と争って、人間を殺したのよ! 異世界から来たあなたたちは実感がないかもしれないけれど」


「魔族からすれば、襲ってくる人間から身を守るために戦っているともいえるよね。そしてもう戦う理由はないんだから、お互い、自分たちの種族のことだけ気にすればいいんじゃないかな」


う、うーむ。エルテの言う確執とかは俺らに分からないし、かといってあつしさんははぐらかしている気もするけど、まあ、無理にサニルタさんと戦う必要はないのは間違いないな。


「あのさぁ、ここは引いた方が良いんじゃないの。解決しそうもないし」


とエルテにアドバイスをすると腕にパンチされた。八つ当たりヨクナイ。


「思うところもあるだろうけど、ここで話していても仕方がないし、街へ戻ろうよ」


たしかにな。他の魔物が出てきてもいけないし。

あつしさんが街の方へ歩き出すと、エルテは不満そうな顔をしつつも帰ることを優先したようでついていく。俺も急いでついて行く。


色々と心配だけど今は帰るしかないよね。


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