★54.竜を探そう
お昼。
ギルドに帰ると冒険者でごった返していた。
帝都のギルドはお茶は出るけど軽食は出ない。
人が多すぎるから面倒なんだろうな。話が終わったらどこかで軽く食べたいなぁ。
早速受付の男性に悪魔の血と竜のヒゲについて聞いてみる。
「竜は帝国の北から共和国の国境まで続く山脈に巣があるとの言い伝えでありますが、実際にあるかは分かりません。すぐ北西にあるウーウヴェンと言う名の町なら何か情報があるかもしれません。
悪魔は、魔族の一種族の通称ですが、この国に魔族はいませんから王国の方に聞いた方がいいと思いますね」
そういえば魔王がいる……いたんだったら魔族もいるのか。
会ってみたいけどヒャッハーな種族だと嫌だしなぁ。
ところで。
「王国ってどこにあったっけ? なんか共和国の近くだったような」
「キジタンパス共和国の北だぞ。でも、もし悪魔がいても探しに行くのは遠いし……。血だけは金を出して他の人に探してもらう方がいいんじゃないか?」
ふんむ。王国も気になるけどまたいつでも行けるし、今じゃなくてもいいか。
「じゃあ近そうな竜を探しに行く? とりあえず北西の隣町で情報集めね」
また遠出か。金はあるけど、もし山に登るなら準備が大変だぞ。防寒具に食料に……。
「こんにちは」
え?
おっ。あつしさんとミラージュさんだ。二人揃ってる。
「会えてますやん。よかったですね」
「ここに来たら丁度いたんだよ」
「ギルドって人が多くて嫌だけど暇だし仕事探してたんだよね。運がいいな」
あつしさんが答えるとミラージュさんが続く。
待ち合わせとか出来ないから大変ね。
「で、帰る方法見つかったんですか?」
「いや全然」
やっぱそうか。そう簡単には見つからないよね。
「で、君らどうしたの。竜がどうとか聞こえたけど」
おお! まさか知ってるか?
「竜のヒゲと悪魔の血を探してるんですよ。今から竜の巣に行こうとしてるところで……。もしかして知ってたりしません?」
あつしさんがミラージュさんを見る。するとミラージュさんが言う。
「悪魔の血ねぇ……。君の血じゃダメなのか?」
「え? なんでそうなるの?」
「いや不死身だし」
「いや人間だし」
「人間だったのか……」
なんでがっくり来てるんだこの人!?
人間に決まってるだろ!
「転移時の能力付与で不死身になっただけで、元の世界じゃ普通に普通の人間だったんすよ! だから人間ですよ! たぶん」
言っといて不安になってきた。人間のはずだよな? 改めて考えると確信無いかも。
「いやちゃんと人間でしょ。弱いし」
「一言余計やん?」
だが反論は出来ない。
せめてガチガチ装備にして盾役出来るようにならんとな。前の盾は手入れの仕方が分からず放置したら革がバキバキになって野外活動時にテーブルとして利用してるし。
「竜って気になるし、北西の町はまだ行ったことないから僕たちも行っていいかな」
「マジすか!」
このクソ強い二人がいたらモンスター出ても安心だね。いえい。
「ウサギの君もよろしくね」
「なぁ!? 何で知ってるんですか!」
「え、ウサギなの? すごいなぁ」
そういえば二人とサピちゃんはまともに会話してないんだった。前にちょろっと会っただけだな。
今回パーティ組んだらサピちゃんに絡んでくれて圧が中和されていい感じに助かるかも。
白い魔石の仕入れ日までに帰れないかもしれないので、代わりに研究所の人に取りに行ってもらうように手配してから出発した。
◆◆◆◆◆◆◆◆
帝都から北西へウナゴ馬車で一日、翌日の昼過ぎにウーなんとかの町に着く。
広い範囲にレンガ造りの建物が不規則に建ち、周りは木々に包まれ、少し遠くには大きな湖がある。
「北なのにそんなに寒くないな」
「高度が低いんだろ。雪もないし、森もあるし。物価は安そうだな」
帝国来ていきなり雪国に行ったせいか、拍子抜けだよ。
でも山はヤバいだろうからここで準備だな。
早速ギルドに向かう。どこでも冒険者ギルドあるな。
小さい町のギルドなのに食堂も兼ねてるみたい。もうお昼の時間は過ぎているから奥から食器を片付ける音がガチャガチャ聞こえる。
「竜の噂を聞いてきたんですけど、どこにいるか知ってます?」
ギルドの人に聞いてみると笑顔で返事をくれる。
「ああ、竜! いますいます。町を抜けて湖を越えて、さらに進んで山のふもとに巣がありますよ。歩いて2時間くらいです。みんなが通って道になっているから迷わないと思いますよ」
「へ?」
どういうこと? なんで普通にいるの? もしや周知の事実?
「簡単に見つかってよかったなー」
へらへらミラージュさんが笑う。
「いや、おかしいんじゃないかな。すぐ隣の帝都でいるかどうか分からないって言っていたのに変でしょ」
あつしさんは突っ込む。
「とりあえずごはん食べない? お腹空いてると頭回らないし」
脳筋は飯を要求する。
というわけで遅めの昼食を取りながら話すことにした。
昼食用のメニューはもう無いからと、サンドイッチを出してくれた。お茶と一緒に食べる。うまいうまい。マヨネーズが入っているよ。この世界にもマヨネーズがあるんだね。酸っぱいやつだけど。
「食べて一休みしたら行ってみる? 近いし、日が暮れるまでに帰ってこれるでしょ」
「竜に会うだけじゃだめだぞ。ヒゲが必要なんだぞ。簡単に手に入るか?」
「行ってみれば分かるっしょー。ダメなら一旦帰ればいいし。あ、これあげる」
「こんなに食べられないから半分誰か食べて」
「じゃあ私が食べる」
ミラージュさんがあつしさんにあげたサンドイッチをエルテが奪う。
今更気づいたけどエルテ結構食うな。シカ狩りをしてたのも主に自分で食うためだったんだろうな。もしかして食費で貧乏だったんだろうか。
「これも飲んで」
「はい」
お茶までエルテが飲む。めっちゃ胃袋入るな。
ちょっと一息してから出発。山のふもととか言ってたな。
往復で4時間ほどの予定なので野営の用意はしない。荷物はギルドに預けておいた。
「じゃあ行くぞー」
おー、と気合を入れ出発!




