53.街中バトル!
研究所からギルドに戻り合流後、前回とは違う宿を取って話をまとめることにした。
晩ご飯はナッツ入りパスタみたいなもの。歯に挟まって取るの大変だった。
部屋に行き、先にローダーたちから報告を始める。
「小さい個人の建物だったけど、けっこう特殊な研究してたぞ。医学知識もあったし」
「わりと設備も整っていて、最低限の技術はあるって感じでしたね。義肢が欲しい方はあまり目立つのが嫌な方なので、できればあの研究室の方々に処置していただきたいですね」
サピちゃんがこっそり方向性を誘導しようとしてる。でも隠そうとしても最先端の義肢なんて国中の話題になりそう。
「で、お前らはどうだったんだ? でかいとこだったんだろ? 出来るならそっちのが良いんじゃないのか?」
「私たちは研究員が物があったら出来るって言うから、これに書いてあるものを集めることにしたんだけど」
エルテが二人にメモの布を見せる。
「私はこういう素材のことって詳しくないんだけど、これってどこで集められるの?」
「私も分かりませんねー。ローダーさんはどうですか?」
見るとローダーは遠くを見ていた。
「おいお前知ってんだろ? どこ行きゃいいんだよ」
すると急に振り向いて喚きだした。
「こんなの集めるの無理だろ! 筋組織として竜のヒゲ、魔力伝達に悪魔の血、おまけに動力源は真の白魔石ときた! 一生かかっても無理だろ!」
何。どういうことでしょ。
「クルッタとかいう白衣の人は金払えば数年で出来るとか言ってたのになんで?」
「名前はクルスダだったと思うけど」
「ちょっとした魔石ならギリギリ市場に出てるかもしれんが、他は名前しか聞いたことねぇよ! どれも”伝説の”って頭に付くレベルだよ!」
えー。じゃあどうするの?
「お金あればなんとかなるなら、お金集めますか? いくらいるんですか?」
「たしか72ピンクゴールドって言ってたわよ」
二人は噴き出した。
「城でも建てるのかよ! あほかよ!」
「それはちょっと一生かかっても稼げませんね」
どっちも一生かかっても無理なのかよ。だめだめじゃん。どうしようもないの?
「でも存在はするんだろ?」
「伝説上はな。本当にあるか分かんねぇよ」
「とりあえず市場に行ってみない? もしかしたらあるかもしれないし」
「無いと思うがなー」
「探して無かったら小っちゃいほうで話進めりゃいいじゃん」
文句を垂れるローダーの意見は捨て置き、明日帝都の市場へ向かうことにした。
◆◆◆◆◆◆◆◆
青空の下、帝都の中心の広場では市場が開かれていた。見渡す限りの屋台、露店、そして人。
今日が特別な日というわけではなく、ほぼ毎日人でごった返しているらしい。
人々は食料や服などの日用品を買い漁っている。民間人ばかりで冒険者はほとんどいないみたい。
文明レベル的に、市場に来て買い物しないと欲しいものが見つかりにくいんだろうな。
自動配送がないとか不便だなぁ。
「必要なのは、竜のヒゲと悪魔の血と魔石だっけ?」
再びメモを取り出し確認をする。
「竜のヒゲは4本だし真の白魔石は17個も必要って書いてあるぞ。もし見つかったとしても金足りないけどな」
「とりあえず錬金道具か魔道具あたりの店を探しましょうか」
「人がいないところはどうだ? そういう店はひっそりある気がするしよ」
広場の端の方、少し影で人気が少ないほうへ移動する。
と、目立たない位置に本当にひっそりと店があった。陳列されているものは、つるやら実やら石やら。
これあるんじゃね?
「すみません。探しているものがあるんですけど」
店の人に聞いてみる。
「あー、白魔石ならあるぞ。どのランクのがいいんだ?」
ランクってなんぞ。俺ら分からんし。
ローダーが意味が分かるらしく交渉に入る。
「真がいる。17個ほど」
言うと売り子が後ろに置いてある荷物をごそごそする。
「あー、仕入れないと足りないね。伝手はあるから用意するよ。まとめ割引で大負けに負けて12ピンクゴールドね」
「まてえええええええええええええい! 高すぎるわ!!」
そんなに金ねぇよ!
売り子の兄さんがびっくりする。
「何言ってるんだ。真ランクは珍しいから一つが1ピンクゴールド近くするぞ。むしろ安いだろうが」
「お前なぁ。むしろあったのが奇跡だぞ。ゴネても意味ないし、どうにかして金稼ぐ方法を探す方しかねぇよ」
ローダーも敵かよ。だいたい稼ぐとか無理でしょ。
どうしましょ。
「金ないんなら他に売るぞ」
「いや待って。考えるから」
売り子の兄さんはおいおいとか言いながら姿勢を崩した。
本当にどうしようかしら。というか自力で集めない限り、あと2つのアイテムの金もいるよな。
「なんかあっちに人が集まってない?」
ん? そういえば向こうが騒がしいな。
「さあ見てくれ! 異世界を風靡したダンスだよ!」
見やると二人組が立ち、一人がボイスパーカッションをし、もう一人がダンスをしていた。
始まったばかりらしく人が集まりつつある。
「なんだありゃ。見慣れない踊りだな」
だが俺は古い映像で見たことがある。
ストリートダンスだ! 失われし文化!
居ても立っても居られず、踊っている横に飛び込む。
「おおっとぉ!? チャレンジャーのエントリーだぁ!」
右手を振り、それから左手を振る。
おおおっと歓声が上がる。
「え、お前なにしてんの」
「ダンスバトルだよ!」
「なにそれ」
ダンスバトル知らないのかよ。信じらんねぇ!
「ナウなヤングがヒップにホップでイケてるソウルがヴィクトリーだよ!」
「分かる言葉で言ってくれ」
何で翻訳されないんだよ!
何でも翻訳されるわけじゃないのか。それとも俺自身が適当に言ったからなのか。
そんなことよりともかくダンスだ!
太ももを上げ、肘を上げ、リズミカルに上下させる。
すると相手はタップダンスのようにつま先とかかとを石畳に打ち鳴らす。
「むううううう。やるな!」
「あんたこそ!」
「なんだこれ。ルールが分かんねぇ」
視界の隅で青いのが何か言った気がした。
だが気にしている暇はない。
今度はひねりとターンを加え身体全体で表現する。さらにジャンプ、そして回転もする。
「どうだ!」
「なかなかの勢いだな! だがまだまだだ!」
いつの間にか周りの人々が手拍子で囃し立てていた。
声援に押され踊りに熱が入る。
「ぐわっ」
だがここで石畳で滑り足首を捻って頭を打った。
うぐごごご。い、生きてる。
俺はこのぐらいで負けない!
急いで起き上がりステップを再開する。
復帰するとひときわ大きい歓声が沸き上がった。
そして相手が決め技に入るのを見て、自分も終わりに相応しいポーズを行いフィニッシュ!
広場全体が拍手喝采に包まれてた。
終わり息を整えていると、ダンスとボイパの人が寄ってきた。
「技術は未熟だが、身体に込められた熱い魂、たしかに響いたぜ」
「そちらこそ、美しい舞だった」
がっしと固く握手を交わす。
きもちいい。
「最後まで分からなかったんだが、お前ら分かった?」
「いや全然」
「さっぱりですね」
あちこちからおひねりが飛んできた。うお、すげ。
頭と顔にめっちゃ当たるんですけど。わざとなの?
「お前ノリがいいな。気に入ったぜ。何かしにここに来たんだろ? 何の用事できたんだ?」
ボイパのひとが大量のおひねりを集めつつ言ってくる。
「あ、実は欲しいものがあってね」
「ほう。なんなら買ってやるぞ! 俺らはパフォーマンスで稼いでるからな!」
などと言ってくれるので魔石を売っている店に連れて行く。
「兄さんさっきの白魔石17個予約おなしゃす!」
「やっと決めたか。じゃあ17個で12ピンクゴールドね」
「な、に! くう……」
ダンスの兄ちゃんは明らかに動揺していた。
「くぅー。だが漢に二言はねぇ!」
泣きながら財布から金を取り出す。
「なんかよく分からんが得したな」
「あんまりそういうこと言っちゃだめよ」
後ろで青いのと戦闘狂がなんか言ってる。
ダンス二人組も稼ぎが飛んだとか言っていた。
払ってくれるって言ったのはあっちだし俺は悪くないよな。うん。
売り子の兄さんは6日後に来てくれと言った。忘れないようにしないと。
「石は手に入る算段が付いたけど、あとの二つはどうする?」
エルテが三度メモを出して言う。
たしかに悪魔とか竜とかどうしたらいいのかね。
「んぁ。それこそ冒険者ギルドに聞きゃいいんでないか? 魔物のことなら冒険者ギルド!」
ダンス二人組がメモを覗いてサムズアップしながら助言してくれる。その手の財布は空になっていた。
ふーむ。たしかに二人の言う通りだ。
魔物退治なんて全然しないから全然思いつきもしなかった。
礼と別れの挨拶を済ました俺たちは、そのまま冒険者ギルドへ向かうことにした。




