52.ファンタジーサイバネ
帝国研究所に着いたが、そこは地味な建物だった。
3階建てで横にも広くて移動が大変そうだ。
とりあえず入ってすぐにあった窓口に話しかける。
「すみません。ここで医療の研究してる方に会いたいんですが」
「アポは取ってますか?」
「あ、取ってないです」
「分かりました。では2階の医療研究部へどうぞ」
アポ無くてもいいんかい。なんで聞いたんだよ。
というか来たこと連絡とかしなくていいの? あ、電話ないか。
と思ったら壁についているラッパみたいなのに向かって何か話している。なんだあれ。
「あれ? あんた伝声管知らないの?」
「知らん!」
そんなわけ分からんものより電話があれば解決なのにね。電気のインフラどうにかしてくれんかな。
ともかく受付を後にし医療研究部へ向かう。うす暗い階段を上り2階へ行くと魔法道具の照明と案内板があった。それを見て医療研究部へ向かう。
何人かとすれ違いながら医療研究部に着いた。ドアに『医療』とだけ書いてある。
ドアを開けると、かなり清潔な印象を受けた。壁や床はタイル張りで掃除しやすいようになっている。装飾や植物は無く、石でできた机と椅子、ガラス製の器具が並んでいた。
「受付に言った者なんですけどぉ」
「はいはい、どのようなご用件で?」
急に来た部外者に対してなんてオープンで優しいんだ。きっとこういうところが発展に役立っているんだろうな。
義肢を探してることを伝える。「動く義肢かぁ」とつぶやいた後、うなっている。
「どうですか?」
「ちょっと難しいかもしれない。でも工学部なら何かヒントがあるかもしれない。行ってみてくれ」
工学部って機械があるのかな? 電気がないのに。
まあともかく、礼を言いその場を後にした。
工学部は専用の別棟になっているらしい。棟は2階建てで今いる建物とは離れている。
いったん外に出て向かう。
本館と工学部の棟は屋根も舗装もされていない踏み固められただけの道でつながっている。雨の時大変そう。
そして工学部の棟は未知の建材で出来ているようだった。なんだろう。石じゃないし木でもない。何で出来ているんだろ。
建物内部に入るが受付も無いから手近な部屋へ行く。
「おじゃましまーす」
工学部門はいろんなものが置いてあって散らかっている。
工学なんて名前だから金属製の機械ばかりかと思っていたのに、魔道具っぽい物がいっぱい置いてある。
「ていうか電気があるぞ! なんで!?」
部屋の角に、四角いガラスの中に金属片が伸びて、電気が時たまバチバチしている物体がある。なんなのこれ。電気勿体ない。
するとそばにいた汚れた白衣を着たにいちゃんが答える。
「あー、あれは転移者が試しに作った『発電くん11号機』だな。いわく理論自体は簡単だけど改良が面倒くさいから保留、だとよ」
「面倒臭がらないで電気完成させてくれ!! 頼む!!」
「そいつはもうここにはいないし、どこにいるかも知らんよ」
がーん。
何としてでも探し出して電気を完成させたい!
「ちょっと、そんなことより、義肢のこと聞かないと」
あ、そうだった。
かくかくしかじか説明すると先ほどの汚れた白衣の人が顔を輝かせる。
「そういうことならこれを見てくれ!」
と言って見せてくれたのは拳大の円柱を横に倒して10個ほどつなげた物体だった。たまにうねうね動いている。
じっと見るがこれが何なのかよく分からない。
たまらず聞いてみる。
「えーっと、なんですかこれ?」
「これはスネーク四世だ! どうだ?」
スネーク四世と呼ばれたブツはぐねりと曲がり、滑らかな円を描いた。
「……で?」
「つい最近完成したから自慢したかったんだ。かわいいだろ?」
関係ないんかい!
「そしてこれは自動針飛び出し装置シルバー。布や革に穴をあけるのに便利。で、こっちのがタダの球。妙なすべすべ感が癖になる球だ」
と、続けて紹介を始める。予想ではこいつらも関係ないな。
「転移者って変なことばかりするのね」
エルテも呆れているようだ。でも俺は変じゃないからそれは間違っているぞ!
しかしエルテの声が聞こえていたのか白衣の男はこっちに向かって言う。
「いや、この研究施設では少数派になってしまったが、私はダーチ人だぞ。ダーチ・オブ・ザ・エリートだ。すごいだろう」
「そう……」
意味不明すぎる。
「いやー、この世界の人って変な人が多いね」
エルテをガン見して言ってあげる。
「え、そう? この人が特別変なだけじゃないの?」
自覚がないって怖いね。
まあどうでもいいや。そんなことより話が先に進まんから聞かなきゃ。
「発明がすごいのは分かりましたが、とにかく、指まで動く義肢が欲しいんですよ。なんか無いですか」
「指まで動く義肢っ! 非常に難しいだろうね」
「できるんですか?」
「まず無理だ」
だめか。
「動かすなら細かい神経もつなげなければいけないからな! 適当につないだら重りがくっつくだけだぞ!」
うーん。まいったな。こりゃ無理か?
だが白衣の男は胸を張っている。
「なーにを困っておるのか。これを見ろ! これが役に立つ!」
といいスネーク四世を掴み目の前に出す。
「え、なんで? さっき見て、意味ないおもちゃだったやつじゃんこれ」
「馬鹿者! これはな、こう見えてゴーレムなのだよ! 無秩序に動いているように見えて、ほら、これ、このデバイスからコントロールしているのだ!」
白衣の男は頭に着けているカチューシャを指でとんとんと叩いた。よく見ると石が付いていて魔法の力で指令が出ているようだ。
へえ。でもそれに何の意味があるんだ。やっぱ関係なくないか。
だがエルテは何かを閃いたようだった。
「あ、分かった。じゃあ腕型や脚型のゴーレムを作って本人が操作したらいいってことね」
「大正解!」
え? それなんか違くない?
「それ義肢じゃなくて、もはやロボットじゃね? 自分の手足じゃないじゃん。なんか違う気がするぅ」
「思考を凝り固めるな。柔軟な発想こそが事を成し遂げるために肝要なのだ」
そうかな。言われてみればそうかも。思い通り動いたら何でもいいか。むしろモンスターとかの手足じゃないだけマシか。
いやゴーレムってモンスターの気もする。でも俺の手足じゃないしいいか。早く解放されたいし。
「じゃあ頼んだら義肢型ゴーレム作ってくるんですか? いくらぐらいでどのくらい時間かかります?」
「んー、72ピンクゴールドくらいで3年ほどで完成するだろうね」
「たっか! おっそ!」
そんなに金ないし! そんなに待ってられん!
「なんだと! だったらお前が今から作って明日完成品見せてみぃや!」
「いやそれは無理やし!」
「じゃあ文句言うな! ダボ!」
口悪っ! なんだこいつ!?
もう他に頼んだ方が良くない?
「お金はとにかく、どうすれば早く出来ますか? 何があればいいですか?」
「お、そっちのねーちゃん、良いこと言うなぁ!」
「ね、ねーちゃん……」
自分より年下の人にねーちゃんとはまるでおっさんだね。
いや、研究職の人って引きこもってるから見た目以上に歳とっていることが多々ある気もする。
「材料があれば当然必要な金も時間も減らせる。基本的なものはともかく特殊なものが必要でな。ゴーレムの材料とコントロール装置でそれぞれ必要な魔導石が数種類あってさらに数が……」
と、長々と説明されたが全然覚えられない。
すると側にいた他の人が布切れに必要なものをメモして渡してくれた。
「集まり次第取り掛かれるからな。あとついでに前金くれたらその間にテスト出来るから金くれ!」
「めっちゃストレートだなあんた!」
前金は56ゴールドとか言うから渡す。
うっほほと笑う白衣の男。周りの人たちがこちらを憐みの目で見ている気がする。
「あと俺はクルスダってんで覚えとけよ。まいどあり!」
ちょっと心配だが言われた材料を集めよう。かかった費用はあとでサピちゃんに請求しよう。怖いけど。




