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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第二章 帝国編
49/113

49.不死身は人の役に立つか

なんなんだろう。このおっさん。

この人が薬屋さんなの?


「ええっと、店主さん、ってわけじゃなそうだけど……。誰?」


そのおっさんは、木の車椅子を左手だけで動かし、ガタガタ車輪を鳴らしながら部屋へと入ってきた。木でできたゴムが無い車輪だし、片手だけだし、動かしにくそう。手伝わなくても大丈夫なのかな。


「ああ、俺はズタケ。転移者の一人で、こいつの、まあ上司ってところだな」


「へ?」


やっぱ薬屋じゃないやん。てか冒険者なのにサピちゃんに上司? どういうことなん。


「分かってないみたいだから説明してやるか?」


「そうですね」


分かるやつがいたらびっくりだよ。

だから説明プリーズ! と、目で訴えかけると、サピちゃんがふうと息をついてからしゃべり始める。


「全て偶然だと思っていたんですか? 勇者が襲われたり、議員の家に私が行ったり、暗殺者の近くに私がいたり、本当に危ない時は私の矢が当たったり」


そんなことあったっけ? 心当たりが無さすぎる。全く分からん。どういうこと?


「つまりだな、こいつ、サピはな、帝国の諜報員なんだよ。共和国で調査をしていて私の元へ報告しに帰ってきたってわけだ」


はあ。ほんとに。


「って、マジで!? めっちゃのほほんとしてて弓も下手なのに!?」


「それ全部演技ですからね?」


ひえぇ。そんな馬鹿な。

おっとりもふもふゆるふわサピちゃんが、そげな恐ろしいことを。


あれ? ちょっと待てよ。


「まさかローダーの父親のライバルの議員が水死体で発見されたのもサピちゃんの仕業ってこと!?」


いや、怖い!


「え、なんですかそれ」


「うーむ、たしかに議員が一人死んだという話は聞いたが、我々は関与してないぞ」


あれ。違うの? じゃあ一体誰なんだ……。

うむむと悩んでも答えは見つからない。


「まあ、いい。そんなことよりも、だ」

話を戻すつもりか、一拍置いて言う。

「私は転移者の能力を奪う能力を持っているんだ。奪われたものは、恒久的に能力を失う。そして俺は奪った能力をいくつも持っている」


ほえー。そんなすごい能力があるんだ。だったら最強だし世界征服ぐらいできるだろうになんで……って、手足が無いのか。そりゃいかんわ。

となれば、どんな手を使ってでも手足が欲しいでしょうな。人を犠牲にしようとする発想にもなるだろうな。


ん? 待てよ。


「こんなに色々教えてくれるってことは、なんかある?」


「何があると思ってるんだ? お前の能力を奪う以外に」


「ひへぇ」

これはまずい。

「やめて下さい不死身の能力を奪って俺を普通の人間にした挙句ダルマにして身体に石を括り付けて海に沈めるなんてことは!」


「いや、そこまではせんが……」

引かれた。

「まあ生かしておくのなら、飼い殺しにするかな。吹聴されても困るからな」


飼い殺し!?


「つまりヘルパーになって欲しいってこと? 自慢じゃないが家事も介護も出来ませんぞ!」


「いや、いらん……。ってお前なんかズレてるな」


むむむ。難しくて分からん。

一体どうして欲しいんだ。


「とにかく! お前の能力を奪うからな。不死身で怪我も治ると聞いているからな」


「吹き飛んでもバッチリ再生するのを確認済みです」


おっさんは左手を伸ばして、いかにも吸収しますよってポーズを取った。


やばい。

不死身じゃなくなったら絶対速攻死ぬ。自信がありすぎる。どうしよう。どうやって切り抜けよう。

だが思いつかない。

もうだめだ。冒険者は廃業して慎ましく生きるしかない。あばよ冒険。


しかしおっさんはそのポーズのまま動かなかった。


「どうしたんですか? 何か問題がありましたか?」


「いや、固有道具を確認していなかったからな。お前の道具はなんだ?」


え。

固有道具っていったら能力と一緒についてくるアレ。

これって正直に答えたらヤバいやつじゃない?

だがしかし。


「そういえば覚えてない」


完全に忘れてたから、正直に答えるも何も無かった。


「はぁ……。あのー、ドゥマの組合で能力の鑑定したんですよね? そのときに鑑定結果の板をくれませんでしたか?」


あ、それも完全に忘れてた。いやー、めんごめんご。

懐を漁って見つかった金属板を取り出し、見てみた。


「えーっと、道具は、外部記憶装置、でー。内容は直近の記憶、直近の健康体を保存。らしいですよ。意味が全然分かんないけど」


「じゃあ能力の詳細は?」


「えっとー。死んだら記憶装置の情報を元に復元。ですってよ」


「そうか……」

おっさんは手を降ろしてため息をついた。そしてサピちゃんに向き直る。

「能力だけ奪ってもダメだな。固有道具は奪うことができないから意味がない。せっかく見つけてきてくれたのに、すまんな」


「え……、そんなぁ」


げ、サピちゃん泣いてるんじゃないか?

これは結果的に俺がサピちゃんを泣かしたということでは?

なんということだ。

死ぬのは嫌だけどサピちゃんが悲しむのも嫌だ。どうしよ。


あ、そうだ!


「待ってくれ。手足が使えるようになればいいんだろ? 俺にアイデアがある!」


「なんだ? まさか義肢じゃないだろうな?」


「あ、そうです」


普通にそれしかないけど、当てられると何か残念だな。


「見た目だけの義肢ならこの世界にもあるが、生身が左腕だけだとバランスが取れんのだよ。まだ車いすのほうが動きやすいんだが」


「いや、見た目の義肢じゃなくてちゃんとしたやつだよ! 神経接続してちゃんと動くやつ!」


「何? ただの義肢すら珍しいんだぞ。それにこの世界の技術レベルでそんなものは無理だろう」


「今まで無かったからって出来ないわけじゃないだろ。北にあった鍛冶の街なら義肢を作れるだけのポテンシャルはあると思う!」


きっとできる。というか出来ないはずがない。

人体構造は一緒だろうし、神経接続の理論も一緒のはずだ。

トカゲ人間とか獣人は違うかもしれんけど、このおっさんはただの人間だし。


「意外と鍛冶とかの技術力はあるし、転移者たちの知識も合わせたら結構いい線行くと思う……。それに安全ピンもあるし!」


「安全ピンに対しての信頼度が高すぎませんか?」


安全ピンはすごいんだぞ! いや話が逸れる。今は安全ピンのことは置いておこう。

安全ピンを思考の隅へ追いやりおっさんを確認すると、唸ってから口を開いた。


「そっち方面で探すというのはありかもしれんが、サピ一人では何を探したらいいのか分からんだろうからしていなかったんだ。おおっぴらに探す訳にはいかんしな」


「んじゃ、サピちゃんを見張りにして、俺らは今まで通り冒険者として行動しつつ、情報集めに協力するってのじゃダメすか?」


これしかない!


「お前……意味が分かっているのか? まあこちらも情報収集出来るに越したことは無いが」


「ヘリックスさんが役に立つとは思えませんけど」


サピちゃんの目がなんかすごい、ゴミを見る目だぞ!


「物は使いようだよ。悪いがまた探ってもらえるか? 面倒になったら処理していい」


「ズタケ様がそう言うならそうします。最善を尽くします。何かあったら処分します」


さらっと怖いこと言いまくらないで!

でも首の皮一枚つながったからラッキー。


「あと鑑定装置の改善版も探しておいてくれ」


「わかりました。それでは早速失礼します」


首掴まれて引きずられる。ぐわー。全然遠慮しなくなってる!

でもみんなと一緒にいれば取り合えずは安全だろうし、早くここを逃げるんじゃ!


能力→17話

議員→28話

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