46.獣人の街がイメージと違う
馬じゃなくてウナゴを借りて乗った。ちょっと安いし乗るの難しくないからね。
生ぬるいウナゴに揺られ、小休止を挟み、明け方に到着。
獣人の街『フルッフェ』だ。覚えにくいけど今回は頑張って覚えたぞ。だって獣人の街だし!
ついに獣人。もふもふ。もふもふできる店あるかな!? いたって健全なことをしますよ!
だが獣人の街は想像とかけ離れていた。
獣人の街って言うからには木造が基本、ツリーハウスはたまた洞窟までありうると思ってた。
しかしその実態は立派な石造りの家、理路整然とした区画、締まった優雅な服装の人々。
「こんなの違うよ! 獣人の街じゃないよ!」
「思い込みは良くないと思うぞ」
んなこといわれたってよ! もふもふが知的文明とか違和感すごいじゃん! ギャップは良いけど! 理想のもふもふがさ! ないとさ!
「いや、実際ヘリックスさんが正しいですよ。この街も私が小さい頃はもっと寂れてましたから」
え。サピちゃんの小さいころって10年も経ってなくね? 発展早いね。
いや、そんなことよりちっちゃいサピちゃん見たい。
写真とかこの世界には無いよな……。どうにかして見たいな。その辺に兎型の獣人の子供いないかな。やましい気持ちは無いよ!
「それってつまり、帝国が来たから変わったってこと?」
「そうです」
ん? 帝国って最近来たんだ?
「じゃあ帝国って現在進行形で陣地広げてるのか」
「いいえ、今は止まってます。西側は山脈もありますし、単純に帝都から遠すぎますよ。それにここ10年は領土を広げていませんし今更広げないと思いますよ」
うーん?
「じゃあ帝国って10年くらい前までに一気に広がって、それからは停滞してるってこと? わけわからんなってきた」
「それで合ってますよー。10年前皇帝が急死してから止まっているんです」
そうなんだ。
前の皇帝がヤベー戦闘狂だったんだな。平和になってよかった。
街の獣人も普通に暮らしてるっぽいし、よかった。石の街だけど。
そこは本当に残念だし今からでも戻って!
「あの、それで、いきなりで悪いのですが。最初にお墓参りをしたいのです」
◆◆◆◆◆◆◆◆
街の一画が丸ごと墓だった。広すぎて墓地の端が見えん。西洋の映画かっていうくらい広い。そして腰辺りまでの石や丸太がずらりと並んでいる。これが墓標なのか。多くない?
目的の墓探すの大変そう。
サピちゃんについて行く。どのへんなのかな。
「そういやこの世界に来て、すぐに墓場に行ったんだったなー」
「なんでだ? 知り合いもいないだろうに」
「埋葬されかけただけだよ」
「予想はついてた」
数分歩くとサピちゃんが首を回して一つの墓の前に移動した。
周りの墓との違いが分からんけど目的の墓らしい。
「ここです。ちょっと待っててください」
お供え物とか持ってきてないけど、供えたりはしない文化なのかな。
と思いきや懐から木の枝を出した。なんの枝だろ?
そして片膝をつきそれを置き、両手を太ももに乗せてお祈りをした。
「お待たせしました」
「誰のお墓?」
「私の両親と、育ての親です。帝国がきたときに亡くなりました」
やべえ。重いやつだった。
道中ふざけてすみませんでした。
「でも、今は幸せだって、報告できました」
サピちゃんは立って膝をパタパタはたくとくるりと向き直った。
「じゃあ石鹸屋さんに行きましょうか」
「なにそれ」
「お墓参りのあとは石鹸を買いに行くんですよ」
ふーん。塩撒くみたいなもんかな。不思議な風習ですな。
サピちゃんに連れられ石鹸屋についた。平屋で素朴な店。
店内は石鹸特有の匂いに包まれ、木の陳列台には茶色っぽい石鹸がそこそこ並んでいた。
地味だな。
「花とかの匂い付きの石鹸てあんまり無いの?」
「それは高級品ですね。私は石鹸で贅沢はできませんねー」
香り付けるのって難しいのか? 花の蜜とか油をびゃびゃっと混ぜたらいいんじゃないのか。原料が高いのかな? 興味ないから分からんね。
ん?
「そういえばしばらく風呂に入ってないぞ……」
ヤバイ。体臭がヤバそう。嗅いでみるけど自分の臭いって分かりにくいんだよね。
臭くない? みんなも臭い?
エルテとローダーも半笑いになっていた。
「あ、じゃあ水浴びができる地元の人が集まる川があるので、そこへ行きましょうよ」
お、いいじゃん。
ちょっと寒いかもしれないけどきゃっきゃうふふしようぜ!
「今日は疲れたから明日にしようぜ」
とローダー。みなも同意した。
というわけで今日はサピちゃんがおすすめする宿に行って早めに寝ることとなった。




