3.未確認飛翔物体
さすがに変じゃないか?
完全無欠に死んだはずだぞ、俺は。
だが生きている。それも無傷で。
もしかしてこれが異世界パワーですか?
死なない不死身のぱぅわーなのか?
空は青く影が長い。鳥がさえずり空気は冷たい。
自信が無いけれど多分朝。それが狼に襲われて夜が明けたのか、さらに日が経っているのかは分からない。
何にも分からない。それでも前に進むのだ。今の最高に格好良かった。
もちろん全裸のまま進み続けていると、木がまばらになり街の壁が遠くに見えてきた。結構大きい街だ。門もあるし門番もいる。
もろちんじゃ中に入れないぞ。
道端で呆けていると、違う道から街に向かっている二人組を見つけた。
「それでほら、魔物が良いパターンあるじゃん? それかと思ったら普通にクソだったわけだよ。まあそっちの様子じゃ人間も同じだったみたいだけど」
「あー……まぁ……ん? なんだろう」
小柄な困惑黒髪青年がこっちに気付いた。普通の旅人的な恰好。
続いて隣の若干背が高い口悪性別不詳黒髪がこっちを見た。腰までのマントを着ている。
両方黒髪で背も近いとかキャラかぶってない?
「あのー……大丈夫ですか?」
小柄な方が話しかけてきた。
全裸の人に話しかけるなんて勇気あるねこの人。
「前髪がえらく特徴的な全裸の変態のひとー」
マントがナチュラル失礼発言。
「服無いんだ? じゃあ金持ちなんだから服貸してあげたら」
マントが小柄に言う。
「別に金持ちって訳では……」
これは千載一遇のチャンス! これを逃せば一生全裸かもしれない!
すみやかにお願いをしなければ!
うおおおおおおおおおおお!
「じゃあ私はあっちの街に行くから。またなー」
「えっ」
なぜか急にマントが去っていった。
俺ともう一人のほうもびっくりしたまま動かず、そのまま見送った。
「ま、まあとりあえずこの替えのシャツとズボン貸すよ。あ、お金はあるけどなんでもくれるとは思わないでね!」
布製の服をもらった!
かたじけないと答えつつ木綿っぽい服を着こんだ。なじみます。
それにしてもわざわざ「なんでもくれるとは思わないでね!」と言うとは、これはなんでもくれちゃう人だな。
さすがに集りはしないけど。
「リンバナナ街に行くのなら一緒にいく?」
「行きます」
即レスである。
これで安全に街に入れるな!
二人で門に向かう。さびしくないね!
あ、そうだ。
「俺の名前はヘリックス。命の恩人である貴公の名は?」
「なんでたまに言葉が変なの……? 僕の名前は……光賀あつしだよ」
挨拶大事。
「この御恩はなるべく忘れません」
「いまいち納得いかない」
お礼大事。
などと言っている間に入口。別に混雑してたり並んでたりってことはなく、ほとんど素通りだな。
門番が二人いて、そのうち一人が話しかけてきた。
「身分証を見せてくださーい」
この世界なんかゆるくね?
「はい、組合証です。こっちの人は僕の連れです」
「やや、これは勇者様! どうぞどうぞお入りください」
なんかファンタジーな名称が聞こえた。
マネーとかはいらないみたいだ。
「あつしは勇者なの? 竜とか魔王を倒すの?」
「あー、魔王なら一応もう倒した……、てかめっちゃ急にフレンドリィー!?」
魔王がいたのか。でももう終わっていたようだ。
出遅れ感。
と、そのとき!
「危ない!」
周りに矢が飛んできた。あぶねっ!
誰だよもー。暗殺か何か?
「流れ矢だ! 早く中に入っ、あ」
頭が激しく揺れた。
なんか……デジャヴュ!
そのまま意識が失われた。






