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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第一章 共和国編
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26.たそがれ

日が傾いてきたころ、暗殺者ギルドの入口に着いたのだ。


倉庫と事務所が多くある区画。暗殺者ギルドはそこにあった。

見た目は普通の商店っぽい。別に地味でも派手でも秘密結社っぽくもない。めちゃくちゃ普通。看板もない。

知ってる人しか来ないから看板は必要ないんだろうな。


ミラージュさんが正面玄関を開ける。商店みたいにベルがカラコロ鳴って来客を知らせた。


入ってすぐに受付みたいなカウンターがある。でも誰もいない。殺風景な部屋。


「ベルも鳴ったし誰か出てくるだろう」


長椅子が置いてあるからそこに座る。ふいー。


落ち着いたら服に違和感。うわ、血でガビガビになってる。

傷はもう治ったからいいけど洗うのが大変だ。

でもこんな世界なら洗濯屋みたいなのがあるかもしれないな。お金あるし探して頼んでみようかな。


しかし来ないね。みんなは立ったまんまだし。長椅子にまだまだ座れるのに座らないの?


「誰も来ないな。よし、ケリン。お前呼んで来い」


「そ、そんなこと出来るわけないだろ。それにみんなとっくに逃げてるさ」


逃げるのか。ちょっと格好悪い。

でも暗殺者は影に潜むものだからセーフ、か?


ん、しかし逆に変だぞ。


「ちょっと待って。みんな逃げてるなら、えーっと、ケリン……さんも呼んでくる振りして逃げたら良いんじゃ?」


「いや、こいつが逃がせてくれるわけがないじゃないか」


暗殺者のケリン……さんが見た方を向いたら、そこにいるのはにんまりと笑うミラージュさん。

ちょっと一緒にいただけで分かったけどこの人が一番ヤバいよ。


しかし、誰も来ないならどうするんだ。


「誰も来ないなら暗殺ギルドは推定悪ってことだな。じゃあ衛兵の所へ行こうか♪」


「行こうか♪ じゃない! なんでだよ! 暗殺者ギルドは合法だっつぅの!」


イケメン暗殺者も形無し。憐れな。


と、奥からパタパタと音が聞こえてきた。


「うるさいんぞ! もう夕方だから依頼なら明日にしやがりなっ!」


な、なんだこいつは! ピンク髪の幼女じゃないか。


「ってケリンじゃねーか。何してんだオメー。えれぇ人いっぱい連れてよー」


口悪いけど幼女だから怖くない。むしろ微笑ましい。なんで暗殺者ギルドにいるんだろうな。


「あ、えっとね。先日起こった議員襲撃事件のことで確認したいことがあるんだけど、えらい人いるかな?」


「あ゛? なんだ? お呼びでねーんだよ。帰んなっ」


屈んであやすように言うあつしさんに睨みながら返す。

いや、かわいいし。むしろ帰りたくなくなるよ。


「こいつら俺たちの無実を証明しなけりゃ帰らないとか言ってるんだ。ちょっと手伝ってくれないか?」


「いや、それは悪魔の証明だろう」


奥から急に出てきたおっさん。ごつい顔に傷がある。顔こわっ。

絶対人殺しまくってるわ。やばいわ。顔こわっ。


「悪魔の証明って言葉使いたいだけじゃないんですかー? ぷー」


唐突に煽り始めるミラージュさん。

笑いを堪えるのがつらいからやめて。笑ったらいかん人の前だからやめて。


「なんだてめぇ、やるのか?」


「おーおー、やったろうじゃないか」


「うわーやめてー」


「バカたちは出ていけっての!」


「なんで僕はここにいるんだろう」


なにこの混沌。狭い空間で喧嘩するの止めて。


なんかもう俺たち何のために来たんだっけ。


えーっと、ローダーの父親の暗殺未遂事件の犯人を捜しに来たんだよな? 別に暗殺者に喧嘩を売る必要ないよな?


「ちょっと待て。お前らが揉めようと俺には関係ないが、話をしないと何も解決しないぞ。だからお前らが知っていることを教えろよ」


お! ローダーが斬りこんだ。ひっそり心の中でグッジョブを捧げよう。


「はぁー。で、青いお前は誰だ?」


「俺はローダー・パンクリオン。評議員のバルゴ・パンクリオンの三男だ」


あら。ローダーにも苗字あったのか。まあ金持ちだしあるか。

そして当然のように青呼ばわりされる青。


「ふーん、なるほどな。信じるかどうかは知ったこっちゃないが、俺たちは何も関わってないからな」


そうなんだ。いや、信じにくいけど証拠も無いしな。


「逆に何があったら信じるんだ、お前らは」


「そっちのギルド長とお話しできればと思います。関わってなくとも何か情報を見聞きしているかもしれませんし」


あつしさんとおっさんが会話してくれたら解決しそう。よし!

コミュ障の俺とローダーとあとミラージュさんはここでおとなしくしておきましょう。そうしましょう。暴れちゃだめよ。


あつしさんの提案を聞いてから、ううむと腕を組み考えるおっさん。殺しの算段中みたいで怖い。おもに顔が怖い。


「もっさん! マスターならこいつら言いくるめてとっとと追い払えるよ! 呼ぼうよ!」


もっさん? なんか怖さが薄れた。


「そうだな。手を煩わせるのは気が引けるが、この二人は面倒だし話してもらうか」


この二人、のところでミラージュさんとあつしさんを見る。


あつしさんは勇者だから有名だろうけど、ミラージュさんもその界隈では有名なんかね? いや有名に決まってるわこの暴れっぷりは。やばいよ。危険人物だよ。


「じゃー早く呼んできてよ。夜になっちゃうよ」


「ミラージュは夜のほうが調子良いでしょ? なんで夜になるのが嫌なの?」


「夜に遊びたいから早くしてほしいんだよ」


学業や仕事が嫌で夜更かしする人かな?


もっさん(笑)らは奥に引っ込んでいった。呼びに行ったみたい。


「真犯人の手掛かりが見つかるといいんだが」


腰にさしたままの杖を握りしめて神妙な顔をするローダー。


ところで部屋が暗くなってきたから明かりつけてほしい。

また魔法でぱぱっとしてくださいよ。


…………。


また待つ。

うーん。


違和感あるな。


なんとなくブロンドイケメン暗殺者を見てみる。カウンターの近くにいる。

あつしさんとミラージュさんは玄関ドアのそばにいる。

ローダーは長椅子の横にいる。座ったらいいのに。


にしても来るの遅い。逃げたかな?


ん? なんで逃げる必要があるの?

関係ないなら逃げる必要ないな。まあミラージュさんがヤバいから逃げるのはあり得るか。


でもなんで逃げたとか思っちゃったんだろ。


あ、そうだ。最初にケリン……さんがみんな逃げたとか言ったっけ。

でももっさんと幼女は何も知らなさそうだった。

ケリン……さんは自称知らない人だ。

ていうか全員暗殺者ギルドとか物騒なもんに所属してるんだし正直に発言するとは思えん。


考えたけど推理苦手で全然分からん。


それにひとつ懸念もある。


「ちょっと皆さん方、もし暗殺者ギルドが犯人だったら裁けるの?」


犯人って分かったところで合法である。

やべぇ。考えてなかった。どうしよう。


「だったら依頼主を始末……依頼を取り消させたらいいんじゃねーの?」


ちょいミラージュさん、いま始末って……いや気のせいだ。きっと。


「だったら正式に抗議をする、護衛を付ける、いまいち機能していない外部監査制度を使う、だ」


「あと依頼主を始末する」


やっぱり気のせいじゃなかった! やめろぉ!


「もし君のお父さんが依頼を受けるに値する人物だったらどうするの?」


「依頼主を始末したらいいんじゃね?」


だからやめろって!

本当にあっち側の人じゃん! むしろ遥か彼方じゃん!

味方サイドにこんな倫理観壊れた人がいたらヤバヤバだよ。


「もちろん冗談だぞ」


「なんだ冗談か」


ふうー、焦ったぜ。そうだよね。


そうしてたら奥から人が来た。もっさんと幼女とすっきりした人。


エルフだ。この街ってエルフ多いのかな?

髪はセミロングで暗い赤茶色。時間が経った血の色みたい。

……返り血じゃないよね?


「早速だがお帰り願おう」


すると同時に吹き飛ぶミラージュさんとあつしさん。その勢いのままドアを突き破って外に飛んでった。

すげえ! 人って飛ぶんだ!


慌てて俺とローダーも追いかけ外へ出る。


出ると起き上がり中の2人。対峙するのはもっさんとケリン。全然見えなかったけど、こいつらが吹き飛ばしたの?


というか、まさかの力づくで追い払う作戦なのか? マジ?


4人は対峙して構えてる。

ひえー。戦いだ!


「ローダー、ちょっとさ、隠れとかない?」


「いや、暗殺者の長が手薄だからそっちを攻めよう」


えっ。


「いや勝てるわけないやん。何言ってんのお前。アホなの?」


舌戦でも腕力でも勝てる要素無いよ。

ちらと後ろをみたら開け放たれたドア越しにこっち見てる暗殺者のギルドマスターと幼女。


幼女はあぶないから下がって!

と思ったらギルドマスターが話しかけてる。逃がすのかな? やさしい。


と思ったら幼女は逃げずにむしろこっちに向かってきた。マジすか。


「おらあああああああああ! どっか行けやああああああああああ!!」


ひ、ひえー!

かわいさと同時に向かってくるのは得体の知れぬ脅威。

幼女のかわいさとは暗殺者の凶暴な本性を隠すための隠れ蓑だったのだ!


どこから取り出したのかトンファー状の武器を左手に構え目の前まで迫る。

あんなので殴られたら痛いぞ。最悪骨が折れるかも。


盾で受けようと構えたら、まさかの突きをしてきた。

そしてクリーンヒットした場所は股間。


「か」


視界が真っ白け。




はっ!

何秒経ったか復活。目の前に幼女いるから一瞬だったみたい。


「あっちいけ! ごらー!」


トンファーをぶんぶん振り回す。駄々っ子が凶器を持ったらどうなるか。

答えは危ない。


「ちょっと、怪我するからやめて!」


俺がな!


ていうか誰が収拾つけるんだこれ。カオスだよ。

荒れ狂うトンファー。盾を振るが防げているのか防げてないのかよく分からなくなる俺。


ふと暴れる幼女の向こう側、見ると暗殺者ギルドの長が近づいてきている。

うわ、殺されるんじゃね? 俺は死んでも平気なんだけどさ……。


ローダーは俺の後ろにいるはずだ。危険の大きさ対して情報が得られる確証が無いし撤退した方が良くないかな?

向こうで暴れてる人々と違って俺たちはしょぼしょぼ冒険者だし。


「なあローダー、一回帰った方が……」


振り向くとローダーと一緒にエルテと冒険者ギルドのギルド長がいた。


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