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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第一章 共和国編
24/113

24.名探偵ヘリックス!

朝だよー。

めっちゃ体痛いし。理由は鎖帷子入りの服着たまま寝たから。あほだった。

次からは上は脱いで寝なきゃ。


ともかく、すぐさまギルド長に会おうと思ったけどいなかったよ。

仕方が無いので下に降りて受付掲示板エリアにて。


「証拠を集めるんだ! 俺は探偵ヘリックス!」


誰が呼んだか俺は名探偵ヘリックス!

皆が困る難事件をズパッと解決ヘリックス!


「いきなり何言い出してるの?」


俺は太陽が出ているあいだは気が大きくなる。狼がいないからだ。


「あのな、こういうときは素人が頑張ってとんでもないことを発見して事件が解決しちゃうんだよ! つまり俺たちのこと!」


「どこからそんな自信が湧いてくるのよ……。あんた頭良かったっけ?」


良くない。良くなくても活躍することあるし! だから活躍する。


「まずは現場から調べる。ローダーの家へ行くぞ!」


はいはい言いながら付いてきてくれるエルテ。なんだかんだやさしい。


◆◆◆◆◆◆◆◆


「なんでまだ街にいるんだよお前ら。御者の人どうなったんだよ」


あ、馬車用意してるとか言ってたんだっけ。御者のおっさんかわいそう。ごめんちゃい!


「ごめん。やっぱり心配だから。私たちに出来ることがあるなら言って」


「あ、俺も」


「お前に何ができるんだよ」


案の定な返事でもはや笑えるぜ。だが今日の俺は一味違うぞ。


「おい、俺をなめるなよ。元の世界では、ある意味天才と言われたこともある俺だぞ」


「それバカにするときの言葉よね?」


そんなことある。


「はぁー。まあ、いいや。ヘリックスは盾ぐらいにはなるだろうし死んでも死なないしどうでもいいし。

 そんなことより暗殺者相手になにか良い手なんてあるのか?」


「ほーっほっほ。それだがね。兄たちが追い払ったんなら見ただろ? それに能力も分かってるはずだ。それを教えたまえ。もし異世界人ならどう行動するか予想できるかもしれんからなぁー」


「どんなキャラになってんだよ。いや今更だし、もう諦めるわ。

 犯人は射出系の魔法を使ってきたが、兄貴……、一番上の兄が魔法で追っ払ったんだ」


ほうほう。


「現場検証もしたいんだが」


「いや、衛兵やら護衛やらが他人を入れるなって言ってるから無理」


そりゃそうか。じゃあ犯人の特徴とかも聞こう。


「ねえ、こういうのってロロクさんと話したほうが良くない? 労働者組合に行こうよ」


「組合長か。俺は会ったことないけど話したほうがいいな」


む、じゃあ行くか。あれ?


「あ、行くのはいいけどサピちゃんは?」


「あいつは狩人仲間のところに行ってるよ。まあ安心していい」


そっか大丈夫か。行くか。


◆◆◆◆◆◆◆◆


ギルドに着いて受付の部屋。お昼が近づいてきていて紅茶の匂いが充満してる。紅茶くれないかな?


「ん? 不死身のヘリックス君じゃないか」


おや? ミラージュさんじゃないか。どうなってんだ?


「なんでここにいるですか? あつしさんに会った?」


「う? いつ?」


昨日起こったことと、あつしさんが結果ミラージュさんを探しに行ったことを伝えた。返事は会っていないとのこと。


「まあここにいたら来るんじゃない? っていうか来たぞ」


え?

間を置かずに扉が開いて誰かが入ってきた。あつしさんだ。

なんで分かったんだろうな? 飼い主が帰ってくるのが分かる犬かな?


「あ! ミラージュいるじゃん! 何やってんだよ!」


「何っていきなり言われてもね」


「知ってること洗いざらいはいてもらうからな! ロロクさんのところに行くぞ!」


「なんか私が犯人みたいになってない?」


なっていますね。

胸倉掴んでガクガクしてる。わあ。


◆◆◆◆◆◆◆◆


というわけでギルド長の部屋までやってきたのだ。


俺とエルテだけ座ってて他のみんなは立ってる。ちょっと落ち着いたらいかがかな。


「市長暗殺の犯人は暗殺者ギルド所属の銃使いの異世界人。家に押し込んだらおとなしくなった」


端的にまとめましたね。そしてさらっと怖いこと言ってますね。なんで家を知ってるの?


「そいつはまだ普通に生きていて今回の議員暗殺未遂の犯人は誰か分からないと」


ギルド長も続けてまとめる。立ったまま「うん」と答えるミラージュさん。


疑問なんだけど、すぐにミラージュさんが情報を渡してたら色んな問題が起きてないよね? もしもを言っても仕方ないけど。


「じゃあとりあえず市長暗殺の犯人だけでも捕まえるべきだろ。なんで放置してんだ?」


ローダーがギルド長に突っかかってるよ。そういうのよくないぞ!


「暗殺者組合の所属者による殺人は取り締まることができない」


は?


「暗殺者組合は特例なんだ。倫理的な問題で暗殺者組合を解体する方向に進んではいたんだが、いまだ解体はされず裁かれないままになっている」


何それ。意味不明。死刑執行人的な立ち位置なの? いつ解体するの?


「じゃあ金があるやつが気に入らない者の殺害を依頼したら無法地帯じゃねえか」


「そう。だから一応、対象が無実の市民かどうか確認することにはなっているんだ」


ふむふむ。まあ監査機関は必要だよね。


「誰が?」


あ、ほんとだ。誰が調べるのかな?


…………。


あれ? なんで誰も何も言わないの?

ギルド長のほうを見てみる。


「それは……、確認するように法を整えてから、確認が必要な事例が発生していないから曖昧なままなんだ」


「ガバガバすぎやん!」


なにそれ!? びっくりしすぎて思わず叫んじゃったよ。

ちょっとした決まり事じゃなくて殺人だよ!? 法律決める人たち……評議員? の人たちは何をしてんのや!


「おい、埒が明かんぞ。もう俺だけでもそいつに会いに行くぞ。それで知ってることを吐かせる」


「え、暗殺者に会いに行くの? 危なくない?」


「知るか! 虎穴入らずんば虎子を得ずっていうだろ!」


え、ことわざも翻訳されてるのかな。


「行きたいなら案内するぞ。その転移者はギルドとは別のアパートに住んでいるからな」


悪魔のささやきを行うのはやめろって。ローダーじゃ良くて追い払われる、悪けりゃ返り討ち、すなわち死だよ。

危険すぎるよ。


「いや、君たち勝手なことをされたら困るよ! 権限も無いのに捜査や拘束なんてするのは」


「殺されそうな家族がいるのに黙っとけっていうのか? あんたこそ何の権限があるんだ! 俺は行くからな」


ミラージュさんが、んじゃ行くかとドアを開けた。あつしさんも危ないからって付いて行く。ギルド長はあわあわしている。エルテは困って立ちあがりかけたまま止まっている。


どうしよう。重大な分岐点な気がする。


このままローダーたちに任せるか。付いて行くか。


元居た世界のように受動的に生きるのか。変わるのか。


「ローダー、危ないから私も行くよ」


「いや、エルテこそ危ないし残っててよ。俺が行くから」


「え?」「え?」「え?」「え?」「え?」


なんでみんないっぺんに疑問符なの?


「いや、お前なんも出来んだろ」


「盾くらいにはなるって。その言葉の通り盾を持ってるし、鎖帷子も買ったんだぞ! ほら!」


めくって見せようと思ったのに鎖は縫い込まれていて見せることはできなかった。代わりに現れたのはひょろひょろの身体だった。


「まあ、したいことをするのが一番だ。な?」


あつしさんにウインクするミラージュさん。あつしさんは怪訝な顔。


「なんで僕に同意を求めるんだ……。いいけどさ」


胸を張ってパーティ結成。俺、ローダー、ミラージュさん、あつしさん。

エルテは残るけど心配してくれているみたいだ。無事を心配しているのか、問題を起こさないかどっちの心配かは不明だが。


「じゃあ行くぞ」


ミラージュさんに対して「おー」と俺が応えるがみんな特に何も言わなかった。さみしい。

ギルド長は半泣きだった。かわいそう。


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