20.本当のおうち
飯屋からギルドに帰ったら15時くらいだった。
今から依頼っていうのはちょっと微妙だな。
「ここには泊まれるのかしら」
「あ、そうか。街が違うから泊るのを止められないのか」
とりあえず泊まれるか聞いてみよう。
「このギルドに寝泊まりできる場所あります?」
「あります。一泊40シルバーです」
うわ、きつい。いや、安い方なんだろうけど。
商業都市はタダだったのになんで?
「居着かれると困りますので」
うーん。直球。
直接拒否するスタイルなのね。
「ただいまー。って言うのも変か。ヘリックス、話は終わったのか?」
あ、ローダーが帰ってきた。サピちゃんはまだかな。
「終わったよ。これからどうするか考えてた。今日はここの二階に泊るかって感じ」
「あ、宿の心配はいらんぞ。俺のマイホームに泊れるよう手配しといたから」
マイホーム?
「え? 首都にもボロいツリーハウスあるの? どんだけツリーハウス好きなんだよ」
「ちっげーよ! 実家だよ」
首都に実家があるのか。なんで冒険者してんだこいつ。
やっぱ無能だから勘当されたのかな?
「ろくなこと考えてない顔してるなお前」
「いや全然。サピちゃんはどうなった?」
ものすごい右を見て目を合わせずに答える。
「狩人用の店に行くって言ってたから、そろそろ帰ってくるんじゃないか?」
弓を買い変えるのかな? それともアドバイス求めたり?
アドバイス……。戦闘のアドバイスとか誰かに聞いた方がいいかな? やっぱギルドで先輩的な方々に教えてもらうべき? でも俺はそういうレベルですらない気もする。
「帰りました~。これからどうしますか?」
「俺の家に泊ることになった」
「あ、久しぶりですね。お邪魔します」
え? どういうこと?
こいつ家に女連れ込んだことあるのかよ。
エルテとも知り合いだったしマジで許せませんぞ。
「じゃあ行くぞ」
「え、もう行くの?」
というわけでローダーの家へ向かうことになった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「なんだよこれ……」
案内された家は豪邸だった。漆喰とレンガ、木材が調和した家。ほどよい大きさの庭には今まさに剪定されていく木々。花も咲き誇り控えめな噴水の音が広がる。
「だから俺の家だって」
なんなのこいつ……。
玄関に入ると大量のメイドがお出迎え……は流石になく、中年の掃除中のメイドが出迎えてくれた。玄関には謎の壺が並んでいた。なにこれ?
「やあぁ、おかえりローダー」
中年のおじさんが現れた。立派な服装。髪は青で水色が若干混じっている。
「ただいまー」
「もしかしてお父様?」
「そうだよ。息子が世話になっているね」
俺とエルテは自己紹介をする。サピちゃんは会ったことがあるから、お久しぶりですって言ってる。
ぞろぞろとそのまま食堂へと案内された。
大きなテーブルに白いテーブルクロス。イメージでよくある金属製の燭台もおいてある。
ちょっと待って。今日の昼にご馳走を食べたのにまたご馳走食べられちゃうの? ハッピーデイ過ぎない?
そして並んでいく料理。肉も魚も豆も野菜もイモもあとパンもあるぞ。ちょっと黒いパンだ。黒いほうが栄養があるから! と自分に言い聞かせる。でもちょっと酸っぱい。
素材の味が活きた薄味。またグルメマンガみたいなこと考え始めちゃった。でも美味い。
みんなもっしゃもっしゃ食べる。みんな好き嫌いとか無いんだね。えらいね。
俺も食べられるときに何でも食べるよ。前からだけど。
「息子が迷惑をかけていないかな?」
会話苦手。エルテにまかせよう。
「いえ、いつもお世話になっていますよ。私たちには使えない魔法が使えますし」
あのショボかっこ悪い水魔法が役に立ったことあるかな?
もしかして他にも何か使えるのかな?
「いやハッキリ言ってローダーは不出来でね。上二人の息子は国立魔導院や魔術連合で活躍する大魔術師だというのにいまいちぱっとせんのでなぁ」
「本人の前で言うそれ?」
「しかしそのおかげか人にやさしい子に育ってな。役に立たんことが役に立つこともあるんだと意外に思ったものよ」
「褒めてるのか貶しているのかどっちだよ」
「厚かましいかもしれんがこれからも仲良くしてやってくれ」
「もちろん、こちらこそよろしくお願いします」
俺も上を向いて頷いておく。頭の中は飯が美味いでいっぱい。ローダーはどうでもいいや。
◆◆◆◆◆◆◆◆
そして勧められたのはお風呂。
こんな文明レベルでお風呂とか絶対金持ちしか入れないよ。俺もいつか風呂のある家を持つんだ……。
でもローダーといっしょ。なんでだよ。
「あ゛~~」
風呂に入るときは声を出すのが作法。
縁にもたれてちょっと上を向いて口を脱力。
あれ?
「明りがあるじゃん! 風呂場なのにどうやって火を点けてんの?」
「ん? あー、そりゃ魔法灯だよ。維持が大変だから風呂だけで使うんだ」
魔法灯! そういうのもあるのか。魔道具的な物ですね。そりゃガス灯無くてもいいわ。
でもきっとアホみたいに高いんだろうな。
ん? そういえばこっちきてから初めて入った風呂だぞ。今まで入水どころか身体をこすってすらいない。
俺めっちゃ臭かったんじゃない……? 大丈夫かな? なんか心配になってきた。
でもしばらくは大丈夫だよな。入ったし。身体も頭も念のためにしっかり洗っとこう。石鹸ないから手でこするよ。
服も洗った方が……、いやいいか。どうせすぐボロくずになるし。
身を守るとか知らないし知る必要もないな! でも服代もバカにならないし何か考えないといかんよね。超頑丈な服とか無いかな?
それからもう一回お湯に浸かってたら溺れ死にかけた。死んでないからセーフ。
温かいお風呂には気を付けよう!
風呂から出たら客室に案内された。そこそこ広い一人部屋。贅沢ぅ。
そして寝た。本当の羽毛。本当のふかふかベッドだ! 贅沢ぅ。
この一日で贅沢を覚えた代わりに虚しさが湧いてきたよ。
ここを去ればまた毎日もそもそパンだよ。
どうすれば良い生活出来るかなぁ……。
布団の中で考えたけど、いくら考えてもまったくいい考えが浮かばず眠りについた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日。
朝ご飯まで貰った俺たちはローダーの家を後にした。
「もっといてくれてもいいんだぞ。街を出るなら馬車も出してやるぞ」
「いえ、そんなにお世話になるわけには。私たち冒険者は自分勝手にその日暮らしをするのがお似合いですので」
冒険者ってシカばっか狩る人のことだっけ?
青父上はさすが冒険者だなと大笑いしてお別れした。
名残惜しいけど長くいると元に戻れなくなっちゃうからね。贅沢やばいね。
ローダーとサピちゃんは残ったので俺とエルテだけでギルドに向かった。
「俺的にはある程度街を見たら去りたい」
「馬車代は稼がないと。歩いて帰るのは遠いよ」
そうだな。馬車っていくらだろうなぁ。
誤字があったら教えてくーだーさいっ!




