15.アリがでかい
今回は虫の話なので苦手な方は飛ばして下さい。
全くストーリーは全く進まないので全く飛ばしても全く大丈夫です。
うーん。背中が痛い。
また地面で寝てるよ。慣れたもんだな。
「起きたんだ」
「おはよー!」
エルテだけがいる。
「あの青い寝坊助は?」
「あんたのほうが寝坊だけどね。ローダーは依頼を見に行ってるよ」
そうなんだ。けっこう真面目ですね。
空を見ると太陽はほとんど真上。お昼じゃん。
あ、そうだ。
「ごはん食べてない」
「あ……。ローダーが死んでるやつはいらないだろとかいって獲ってたウサギ全部食べちゃった……」
なんというやつだ。
帰ってきたらつま先踏んでやろっと。
すると奥から人影が現れた。
「あれ、生き返ってるじゃん」
帰ってきたじゃん。よし。
勢い込んで立ち上がる。
「今日の依頼でよさそうなのはアリ退治だぞ」
え。
「アリかー?」
「アリだー」
虫か。さすがの俺も虫なら殺せる。
だが油断は禁物だ。
「デカかったり酸を吐いたりするんだろう?」
「なんだ知ってるんじゃないか」
やっぱヤバイやつじゃないか!
「まあお前でも大丈夫だろ。俺でも倒せるし」
「ローダーが倒せるとかクソ雑魚じゃないか。よし行くか」
「なんかむかつく」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「アリ小さくない?」
街を出て少し歩いた荒れ地の一角。ちょっとこんもりしたアリ塚があった。あんまり大きくない。
その周りにアリはいた。
しかし思ったよりも小さい。洗濯バサミぐらい。
いや、アリにしたらでかいけどね。イヌか下手したら恐竜くらいのを想像してたから拍子抜けだね。
「ローダーが倒せるとか言った理由分かったわ」
「いや、まあ、だれでも倒せるけど……」
「あとは酸か。でもこの大きさなら酸でも噛まれるのも一緒じゃないのか?」
「噛まれたほうが痛そうだけど、トロいから噛まれる心配はないよ」
平気なのか。なーんでえ。
その辺の棒でも装備して叩いてみるか。
「えいえい」
アリをぽこぽこ叩く。
全然効いていないように見えるのは俺だけでしょうか。
「いや、固いからそんなのじゃ意味ないよ」
だめか。どうすればいいんだ。
「頭やお腹の関節を断てばいいのよ」
言ったそばから枝を突き立てるエルテ。
千切れるアリの体。
「ああ~」
「簡単よ?」
「なんかすごいかわいそうになってきた」
バラバラ死体。
「こんなむごいことをして何の役に立つんだ」
「脚や触角は道具の材料になって、酸は錬金術で使われるらしい」
アリの脚をつまんで袋に押し込みつつ答えるローダー。
脚のトゲトゲで袋破れそう。
「これならヘリックスでもできるでしょ? やってよ」
うーむ、悲しいけどやるしかないね。
エルテの真似して関節をうまく押せば切断できるでしょ。
「おりゃおりゃ」
押します。全然だめだこれ。
「お前下手すぎない? いっそのこと、つかんで手でもいだらいいじゃん」
「え、なにそれ。野蛮人怖い」
「うるさいバカ!」
杖で叩きやがった。またかお前!
「ふざけんなバカお前アリで指噛ませるぞ!」
「お前アリ掴めてるじゃねーか!」
頭に血が上って気付いたら持ってた。なんだー。汚くないし結構平気ですね。
「あ、痛い。噛まれた」
自分が噛まれた。かゆい。酸が出てるのかな?
あ、指取れた。
「おい……」
どん引きローダーくん。
「すぐ生えるから平気平気」
「慣れって怖いわね……」
そしてアリをもぐ俺。思ったより平気ですね。慣れって怖いね。
アリの巣から列をなし出てくるアリをつぎつぎもいでいく。
アリの巣に列をなし入ろうとするアリをつぎつぎもいでいく。
全然間に合わないよこれ。何匹いるの?
「これ全部するの?」
「いや、全部は無理だから、最後に水魔法で溺死させる」
えぐい。
「疲れたら休憩しながら夕方までやりましょ」
長い。マジすか。ほとんどライン作業じゃん。
今15時くらいだと思うけど、あと何時間するのかな?
夕方とかいう曖昧なの止めてくれませんか?
「お腹すいてるしさっさと終わらせたい」
加速むしり。
「そういえばヘリックスは食べてなかったんだった」
「終わったら飯くれ」
「俺より集めれたらいいぞ」
「は? アリに鼻噛ませるぞ」
などとじゃれ合いつつ素材を集める。
地面は黒い粒々まみれ。うわグロい。見なければよかった。
ちょっと腕が疲れたから休憩。
「そういえばこれってどのくらい稼げるの?」
報酬を知っているのは受注したローダーだけだ。情報ちゃんと寄越せよ。
「アリの巣駆除の報酬が300シルバーで、脚と触角は一袋50、お腹の酸はポーション一瓶分で100」
「素材のほうが美味いやん! 溺死させるなんて勿体無い!」
頑張ってもぐぞ! 落ちてるのも勿体ないから集めて袋に詰め詰め。
ローダーが今日はいっぱい袋用意してたからいっぱいいれる。
「急に元気になったなこいつ」
「お金ないし……」
下を向いて集めていたら地面が振動している気がした。
振り向いても二人ともアリに集中してる。
二人が動いているわけじゃないのか。じゃあ何?
顔を上げる。
すると現れたのは黒い頭。ライオンほどの大きさがある身体。
これ、まさか、アリ?
「巨大蟻だ!」
急に叫ぶローダー。
「見ればわかるし!」
ローダーとエルテが慌てている。珍しいのかな?
「ヘリックス! こいつやばいから逃げるぞ!」
あ、やっぱヤバいのか。逃げるか。
「わかった逃げる」
先行する二人。殿を務める俺。決して走るのが遅いわけではない。
後ろからガサガサ足音が聞こえる。こわっ!
「ほんとに撒けるのかこれ!?」
「いいから走る!」
気になって後ろを見る。
うわ、近い。顔の前に顔やん。
するとアリの口が開いて黄緑色の粘液が飛び出た。
近すぎた俺はもろに顔に浴びた。
「うばばばば!?」
ワタワタしながら元に戻って走る。
顔の液は腕で拭う。服についた液は服を溶かしている。
なんで酸で服が溶けるんだよ。どんだけ強酸なんだよ。
つーか顔がかゆい。
「ちょっと、えっと……」
エルテが何か言いたそう。
「ぼっでい」
あれ、大丈夫って言おうと思ったのにしゃべれないわ。前も見えにくい。
多分グロテスクな状態になってるんだろうな。
あー、これ死ぬやつだわ。
仕方がない。逆にアリに向かって時間を稼ごう。
振り向いてアリに立ちはだかる。俺が邪魔でアリは止まった。
手振りで後ろの二人に行けと示す。
返事も音もしないけど先に行ってるのかしら? 立ち止まってたりしないよね?
覚悟を決めて右ストレート! したが、届かなかった。
だって右手の肘から先が無くなってるもん。
ええー。拭っただけでここまで溶けてるの? 絶対無理じゃん。
じゃあ浴びた顔はどうなってるの? 声聞こえないのは耳も溶けてるからなの?
アリが急にアゴを近づけてきた。左手を伸ばして突っ張る。
デカいし相手の武器は限られているから逆に防ぎやすいぞ。俺でもやれる!
が、案の定口から酸を吐いてきた。
アリの口の正面は俺の胴ですよ?
確認不要な大惨事になっております。
なんか熱いし感覚無くなってきたわ。もうダメみたい。
二人どうなったのかな。
あとで回収してね。
二人に任せて諦めた。




