106.逃走経路
「大変よ!! 大変よ!!」
約束のおやつ(あんまり美味しくなかった)を食べてそれぞれの部屋に分かれた後、しばらくするとエルテが大騒ぎし始めた。
「大変よ!! 大変よ!!」
「一体何なんだ!」
どんどん人が集まってきた。俺とローダーもドアを開けて様子を見る。
「勇者の剣が盗まれたのよ!!」
「なんと!? まさか!!」
焦りながらエルテが表に飛び出したのでみんなで外へと出れば、石像の上で腕を組み高らかに笑うミラージュさんがいた。
「はーっはっはっは!」
「なんなんだあいつは!」
「前に見たことあります!」
王子や兵も騒いでいた。
「をっほっははは! 我は魔王なり! 勇者の剣はいただいた! 滅ぼされたくなければ取りに来るのだな!」
そう言い残すと飛び降りて走り去っていった。
それを見たエルテはすかさず言う。
「私たちはヤツを追います! 王子、お元気で!」
「え? あ、ああ! 頼んだぞ」
明らかに困惑している王子たちを置いて俺たちは一斉に駆け出した。
数分後。
「いや簡単にいきすぎだろ。あいつらやっぱアホか?」
「まあいいじゃないの。城から出れたんだし。じゃ、このまま帰りましょ」
街の中ほどまで来たので走るのをやめる。疲れた。
流石に首都だけあって人が多い。俺らを見ても誰も怪しんだりはしない。地味な格好だしね。
しかしなかなかに酷い作戦である。
ちなみに剣はエルテが持ったままだ。実際ミラージュさんに渡す案もあったが、上手いこと渡せなかったためだ。エルテ自身がいまいち勇者の剣扱えてない気がするね。
それにしても。
「なんか碌な思い出が無いなぁこの国」
「同感だね」
思わず出たつぶやきにミラージュさんも同意した。
それにしてもこの人、ノリノリであった。
「で、このまま帰る?」
「そうだな。魔族もいないのがハッキリしたし、まあなんとかなるか。俺は共和国が無事なら別にいいし」
「まあもし魔物が出ても、いざとなったらミラージュさんが倒してくれるでしょ」
「え、私?」
「え? してくれないの?」
「え? いや、まあ、いいけど」
なんだかんだミラージュさんってやさしいね。この人も帰れたら良かったのになぁ。まあこの世界もまだまだ分からないし、帰る方法あるかも。
数分歩いた後、町外れで馬を借りようとしたらミラージュさんは断った。なんで借りないのか聞いたところ、馬に嫌われる体質だからだって。何それ。
「んじゃあここでお別れかしらね。色々ありがと」
「別に私は何もしてないけどな」
「そんなに謙遜しなくてもいいと思うけどなぁ。ま、共和国に来たら俺の家に来てくれよ。ご馳走するからさ」
「食事はしないんだけど……まあ、ありがとう」
笑って手を振ってくれた。俺も振り返すか。馬に乗ってると難しいけど。
「じゃあまた会いましょ。はい!」
「うわ! 急に加速しなああああぁぁぁぁ……」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「勇者は永遠にいなくなりました。誰が私たちを妨害できるでしょうか。さて、これで我々の計画は最終段階へ移行します。みなさん、準備はよろしいですか?」
暗い中、複数の影が頷いた。
次回は8/1(日)投稿します。




