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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第四章 陰謀編
105/113

105.陰謀じゃ!

石碑の破壊が終わったから王子に報告しようとしたけど留守らしい。なんでい。仕方なしに部屋で待機。今回は俺の部屋に集合だ。


「しかしなんだな。王子らが勇者になろうという気概があるのに驚きだよ私は。どうせ堕落してると思ってたからなぁ」


小さいテーブルに、2つしかない椅子にはエルテとミラージュさんが座っている。


「ていうかなんでついてきたの?」


「待ってる間ヒマなんだろ? 私もヒマだし、話でもしようや。あ、王子来たら隠れるから安心して」


安心出来ない。てか部屋に隠れるところないと思うけど?

部屋を見渡しても小さいベッド、小さい机に背もたれのない椅子が2個、あとは小さいクローゼットが1つあるだけ。お貧乏な家みたい。


「たしかにヒマよね。あ、お茶飲む?」


「いや気持ちだけ貰っとくよ」


まずいハーブティーーしかもぬるいーーをエルテがカップにつぐが普通に断られている。これはあれか。


「やっぱまずいからいらないんすね。ほんとまずいすよねこれ」


「いやアンデッドだから普通の食べ物を飲み食いしないだけだから」


そうだった。ていうか今まで結構一緒にいたのに気付かなかったから、今まで通り接しちゃった。だがそうと知れば気になりまくる。


「てか、なんか流されたけど、なんでミラージュさんはアンデッドなんすか。俺の世界にそんなファンタジーは無いはずですよ?」


どうしても気になる。流せない。だから聞く。当然だよね。


「そりゃ……違う世界なんだろ? 私の世界の日本なら苗字はちゃんとあるし。それに、ほら、君は私を知らなかったんだろ?」


そういえば前に世界を救ったのどうだの言ってたな。本当なのかあれ。

ということは地球は1つじゃなくていっぱいあるの? 日本もいっぱいあるの? じゃあ今まで会った地球から来たっぽい人々も実は俺の地球とは違う地球から来た? 1人1人に聞かないと分からないけど、みんながどこにいるか分かんない。


「それにしてもヘリックス君は弱いままだな。前に持ってた盾はどこにやったんだ?」


「な、なんすか急に。というかこっちきてそんなに経ってないし? 急に強くなれるわけないし?」


「そもそも訓練とかしてないわよね。見たことないし」


「いえいえ不死身故に鍛えたとしても身体の構造は変わらないのでござるよ。なので筋トレは意味がないのですじゃ」


「言い訳じゃねーか……」


「オメーだってトレーニングしてねーだろうがおらっ」


「俺は魔法使いだから筋肉はいらないんだよ!」


手が出るからこっちも手を出して小動物のケンカみたいになった。お互いわちゃわちゃ手を動かす。止め時が分からない。視界の隅にはエルテの冷めた目があった。ミラージュさんは……まさしく小動物を見守る目で微笑んでいた。くっ、キツイ!


速やかに止めてローダーから距離を取る。ローダーも咳払いをしてから言う。


「それで、結局国王ってどこに行ったんだろうな」


またその話か。情報増えたわけでもないのに。くどいぞ。


「もしかして異世界に帰ったんじゃないの?」


「え、でも、勇者、あ、元勇者か。とにかく帰るには魔王の魂とか近いやつとかそんなのがいるじゃん? でももうそれは無いじゃん? 手伝う魔族もいないじゃん? だから帰ってはないっしょ? たぶん」


と言いつつミラージュさんを見てみると、先ほどまでのおちゃらけが嘘のように全くの無表情であった。どうしたんだ。


「国王は……死んだよ」


「へぇっ!?」


「東の山脈で魔獣と戦って……聞いてないのか?」


いや全然そんな話無かったぞ。機密とか一部の人しか知らないとかそんな感じなのかな。


「マジすかそれ」


「じゃあ本格的にいよいよますますヤバいな。共和国に帰ったら魔物の対処のこと考えないとなぁ」


なんで急にそんなこと言ってんだと思ったが、あれか。親が偉い人だから自分も功績残すことによって老後を安泰にしようとしてるんだな。いやらしいわね。


なぁんて考えていたらノックがし、王子が来たのかとローダーが扉を開くと王子ではなく小綺麗な服を着た女性がいた。


「こちらに勇者様がいると伺ったのですが」


「えーと? どちら様ですか」


「わたくし第2王女ですのよ。あなたが勇者様なのかしら?」


お姫様か。へー。結構なお歳みたいですが結婚とか、されてないんですか? 姫と言ったら貴族とか隣国の偉いさんとかと政略結婚したり英雄と結婚したりするのが相場だよな。あ、でも次の勇者が国王になるシステムだからそういうのは無い?


なんて超絶失礼な思考は悟られなかったようでお姫様はローダーをしげしげ見る。


「なんだか魔法使いっぽいですわね」


「あ、いや、俺じゃなくてこっちのが」


「剣を持ってるのは私よ。あと剣を持ってたら勇者なわけじゃないわよ」


エルテが前に出ると露骨に王女はがっかりした。


「勇者の剣はふさわしい殿方しか持てないと聞いておりましたので、まさか女性とは。失礼しました」


「別に過去の勇者も女の人いたでしょ? そうだ、あなたも受け取れるか試してみる?」


「いいえ、私はいりませんのよ。それではこれで」


そう言い王女は去って行った。なんじゃあれ。

急な来訪者が去って静かになった室内。


「あれもしかして男だったら結婚しようとしてたか?」


「いやまさか」


「なんだ権力のために接触してきたのか。浅はかというか何というか」


あまりにも小さいテーブルがガタガタ鳴り、下から声が聞こえる。え、どこ?

もしやとテーブルの下を見ると狭い空間にミラージュさんが詰まっていた。


「狭くないの?」


「広くはないな」


のそりと這い出て立ち上がる。

だが、すぐにまたノックが響き「おっと」と言いながらどこかへ消える。入れ替わり扉が開いた。


「やあやあ待たせたね」


第3王子だ。やっと来たか。


「お菓子はくれるんでしょうね!?」


「いやもちろん。その様子だと完全に終えたようだね」


念のため聞けば忘れてはいないようだ。よかった。

でも作ってくれるのは明日なんだよな。前倒ししてくれないかな。


「ちょっと大変だったのよ。叩き壊そうとしたらスケルトンがいっぱい出てきて」


すぐさま半目でエルテが睨みつけるとヨッヘムは唸った。


「ふぅむ。もしや防御機構があったのでしょうか? 我々の時は何も起こらなかったのですが、きっと我々の力では脅威と判断されず発動しなかったのでしょうね」


防御機構? 勇者の防御機構がスケルトンとか悪趣味ちゃう? ほんとかな。でもこれ以上突っ込むのも。


「しかし後は残すところ勇者の剣だけですね。国中の資料をあたってはいますが、どうもみつからないので困っているのですよ」


若干の演技感がある動きで言うが、そもそもエルテが渡したくないと意味がないという後ろめたさ。しかし当のエルテは涼しい顔をしている。


「仕方ないわよね。じゃあまた進展があったら言ってね」


「うむ、まあ分かりました。また来ます」


凄く軽い言葉で王子を追い払い部屋は静かになった。不敬罪にならない?


「剣が欲しいとかバカらしいな。剣なんて無くてもいいだろ」


今度は上から声が聞こえる。え、嘘やろ。

と思って上を見ると、吊り照明にコウモリよろしくミラージュさんがぶら下がっていた。


「いやおかしいでしょそれは」


「天井に貼り付いてないだけましだろ」


と言いつつ落ちて四つん這いで着地する。バケモンじみてきたな。

それを見届けつつエルテが言う。


「あ、そっか」


「えっ。エルテはおかしいと思わないの!?」


結構平然としてるよな。肝っ玉やばいよ。


「いや違うわよ。ミラージュじゃなくて、剣のことよ。無くても別にいいはずなんだから、頃合いを見てこの国を出ましょ」


ええ……。ついにとんでもないことを言い始めたな。


「まあ俺もそれが助かるな。そうしたら強めの魔物にも対抗できるだろうし」


「ちょいまち。そうしたらこの国はどうなるんさ?」


「知らないわよ」


わあ。


「国力が弱いのはこの国の問題だもんな。じゃあさっさと去ろうか」


ミラージュさんも何故か便乗する。

勇者(笑)とはなんだったのか。


(他の妄想が)忙しいので次話は7/4(日)に投稿します。

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