103.怪しい依頼
謎は解けるどころか増える一方だ。だが良いこともあった。ちゃんとした部屋で過ごせるってことだ! 曲がりなりにも王城。部屋は綺麗で、思ったよりは豪華ではないけれど、まあ、良い感じだよ。でもお菓子は出なかったよ。出たのは砂糖も入ってないハーブティだけだよ。くそう。
することもないからローダに割り当てられた部屋に集まっている。王城には似つかわしくないボロく軋む椅子に腰掛け、3人でテーブルを囲んでいた。
「そういやエルテ、なんで第3王子が俺たちを捕まえたって分かったんだ?」
「だって見るからに胡散臭いじゃない」
「そんだけ!?」
根拠マジで無かったのかよ。
「で、でもよ、そんなことする利点あるか?」
「別に不利益も無いんだし、とりあえず捕まえるのはあるんじゃないの。あんまり気になるなら聞いてみたらいいじゃない」
一理ある……のか?
「聞く。聞くといえば国王の失踪のこと結局聞けてないな」
ローダーが思い出したのか言う。ていうかそのために来たはずだよね。
「そうね。というか簡単に聞けるわけなかったわよね。剣のせいで面倒になってきたし、来ない方が良かったかも」
「う、確かにな」
野次馬コンビがしょんぼりしている。あんなに様子見に行きたいとか言って俺まで連れ出してよ。まったく困ったもんですな。
「で、お前はどう思う?」
「ほへっ!? 俺!?」
「なんでそんなにびっくりしてるのよ」
「えー、だってー、むつかしいこととかわかんないしぃ」
「変な声で変な動きするなよ気持ち悪い」
全力で身体をくねらせ高い声ではぐらかす。これで直前に何を考えていたかは悟れないだろう。完璧だ。といってもローダーもエルテも俺に興味を無くしていた。
「ところで勇者の剣を継ぐ条件のが何か検討ついてるのか?」
「それね。多分だけど、私があげてもいいって思ったらあげられると思う」
えっ。
「おいおいおいおい、それってつまり」
「つまり私次第ってことよ」
マジかよこの人、やべぇよ。
だったら。
「本当にそうなのか試したほうがいくない? 試しに俺に渡してよ。すぐに返すからさぁ」
「いやよ。信用できないもの」
ひどい。
ローダーが何か言いたそうにチラチラ見てくる。
「なんだお前文句あるなら言ってみろ!」
「えーと……まあ、じゃあ俺で試すか?」
「いいわよ。はい」
おい!? なんでローダーはOKなんだよ!
本当に渡してる。本当に受け取っている。鞘ごと剣を渡され両手で受け取っている。
本当にひどい。
「…………」
「あ、やっぱり出来たわね」
「あ、あ。意外と軽いんだな……。まあ、返す」
すぐに剣を返されたエルテは剣を異空間にしまった。
「えーと、つまり、なんだ。剣を渡さないと決めたら渡さずに済むってことか」
「そうね。でもちゃんと相応しい人がいるなら渡すわよ。別に剣があれば勇者ってわけでもないんだし」
あんまり執着はないがパクることに抵抗があるわけでもないようだ。どこが勇者だ。いや勇者は人の家のタンスの物盗んだりするし、むしろ勇者的か。勇者ってひどいやつなんだな。
その後は実のない話をしつつ時間が経つ。夜になれば夕食をいただく。しょぼかった。しかも風呂も無くて大きい桶に水くれただけだった。くっそー。
◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日、王子から話があると呼び出された。一体なんぞや。
応接間の一つに案内され待つこと数分。現れたのは第3王子のヨッヘムだった。
「やあやあ皆さん。城の居心地はどうですか? なかなか良いでしょう」
いや、悪いです。とは流石に言わないでおいた。
「まあまあよ。それで、剣を受け取る案でも思いついたの?」
「はは、手厳しいですね」
演技掛かった仕草で近付きながら続ける。
「それについてはまだですが、今回は少しお願いがありましてね」
なんじゃそれ。すでに剣を受け取るという立場のくせに追加でお願いとか厚かましいな。
ちなみに良い飯が食いたいという俺の要望は対価なので厚かましくはない。
そのまま王子が大仰に椅子に腰掛けると使用人が素早く全員分のハーブティをテーブルに置いた。菓子は無い。
「で、なにがいるのよ?」
「話が早く助かります。そのお願いというのは、勇者の石碑、つまりは勇者召喚装置の破壊をしていただきたいのです」
「へ?」
どういうこと?
「なんで壊しちゃうのよ。置いてても問題ないんじゃないの」
「問題があるのですよ。というのも、その装置自体に術式が仕掛けられておりまして、100年以上使われなければ王国に呪いが振り撒かれてしまうのです。まだ猶予はあるとはいえ、念のため早めに手を打っておきたいのです」
え、なにそれ。
勇者召喚しなきゃ呪いって、魔族滅んだら王国も用無しになる装置ってこと? でも装置って過去の勇者が作ったって宰相が言ってたような。
「皆様が疑うのももっともですが、我々も説明できるほど詳しくはないんで、ね。なぜなら1000年近くも前の代物ですし」
「逆によく壊れてないな!?」
「そこも不思議な力で、はい」
不思議だね。まあ異世界だしね。
「いや待ってくださいよ。なぜあなた方が召喚装置を破壊しようとするのですか? また召喚することもあるでしょうに」
確かにそうだ。
「いえ、それが、魔王が現れなければ聖女も現れないのです。聖女がいなければ勇者の召喚もできません。魔族が滅び魔王は現れないので、つまりもはや使うことは無いということです」
なんだそのルール。よく分かんねぇ。その辺具体的に調べたいけど、資料室燃えたんだったか。残念。
「それで、不思議な力で壊れないのは経年劣化に対してのみなの? 殴ったり魔法ぶつけたら壊れるんじゃないの?」
「と、それですが不甲斐ないことに、昔から勇者に頼りきりだったせいでこの国には石碑を壊すほどの技量が無いのですよ。ですが何でも壊せるといわれる勇者の剣ならば、問題なく破壊できるでしょう」
王子はぐっとポーズを取り語りも大詰めに! いやほんとエルテじゃないけどこの王子胡散臭いな。
その胡散臭さを見たからかエルテが俺とローダーを見る。む、これはアイコンタクト! しかし俺には読みとれなかった。
「わかったわ。やるわよ。で、石碑はどこなの?」
「ありがとうございます。場所は敷地内の裏庭で……」
詳しい場所はエルテとローダーがしっかり聞く。俺は美味くないハーブティを飲んだ。王国の人はこれが美味しいのかな。
「敷地内なら今日やっちまうか?」
「さっさと終わらせましょ」
ふたりしてこちらを見るってことは当然付き合わされるのか。まあ王子お墨付きだし誰も不幸にならないから良いか。でも報酬は? 要求しても罰は当たらんよね?
「タダでするってのもなー、流石に王子様となるとそれなりのものを期待したいけどなー」
非常に慎みのある言い回しだが王子なら社交スキル高いだろうし分かるでしょ。そう思って見つめると王子はゆったりと頷いた。
「ふむ、そうですね。何をお望みですか?」
「お菓子!!」
「お前まだ言ってんのかよ」
なぜお菓子を求めたらいけないんだ。別に家サイズのお菓子を求めているわけでもないんだぞ。王族なら菓子の一つや二つ出せるだろ。
「まあ焼き菓子なら作れるでしょう。明日の午後にでもお出ししますよ」
「いえーい」
お菓子ゲット。やったぜ。まあ依頼を行うのはエルテなんですけどね。
誤字脱字誤用などありましたら教えて下さい。
次回投稿は5/16(日)です。




