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異世界で楽しむ100通りの死に方  作者: アラニン
第四章 陰謀編
102/113

102.お城のダンジョン

お城の地下牢は寒いし暗いし湿っぽいしベッドも椅子も石で出来ているしリラックスとは正反対の(おもむき)


しかも3人バラバラの牢に入れられている。他の檻には人がいるのかいないのか、音が聞こえない。


「寒いよー寒いよー」


なんでこんなに寒いんだ。しかも毛布がないし。

石のベッドで毛布もなしに寝られますか? 何考えてんだこの国のやつ。

エルテもローダーも気にならないのかな。


「気が散るから静かにしてよ」


エルテは地下牢よりも冷たかった。


「何考えてんだ?」


斜め前の牢にいるエルテは壁にもたれて座っている。ローダーは俺側の二つ隣だから見えない。


「私たちがなんで捕まったかってことなんだけど……もし昨日の火事の犯人として捕まえてるのなら意味が分からないのよね。宿にいたんだから違うに決まってるのに」


「俺らが本当に犯人か共犯者だと思ってんじゃないか? この国のやつらって、抜けてるんだろ?」


「いや、うーん。それはあまりにも……」


「じゃあメンツの問題で捕まえたんじゃねぇか。俺らにしたのは罪を擦り付けるのに都合がいいからとかな」


「立場上はそうでしょうけど、でもそうなら真犯人を逃がしちゃうことになると思うのよねぇ。そうすると犯人は……」


誰なんだろ。というかそもそも昨日の火事は放火なの? 他の罪状で捕まってないこれ?


と、話していると地下牢の出入り口からがやがやと数名の兵がやってきて、その中から宰相も現れた。


「みなさん外に出て下さい。釈放です」


なんだって!? いきなり!?

嘘かと思ったが本当らしく、ガチャガチャと全部の牢を開けて外に出してくれた。


即逮捕即釈放で良かった。石のベッドで寝る羽目にならなくて本当に良かった。


出され、そして案内された先は食堂だった。

温かいハーブティが出されたので飲む。独特な匂いだけど温まる。


「なんで気が変わったのか説明してくれる?」


エルテは茶を飲まずに言った。ローダーも飲んでなかった。あれ? 警戒してないの俺だけ?


「気が変わったのではなく、手違いなんですよ本当に。時間がかかったのは王子殿下とお話をするのが大変でして……。なにより勇者様の剣を持つあなた方が資料室を燃やしたりするわけがありませんし」


王子? 資料室?

気になるところを聞くより先に、ううん、と咳払いをして宰相は続けた。


「あ、ともかく、大丈夫ですので、はい。それに勇者の剣を受け取る準備も出来ましたので、譲り受けしたいのですが構いませんね」


なんかごり押ししてきてる。怪しい。怪しくないかな?

エルテとローダーを見るけど表情は普通だった。


「別にいいけど勇者の剣に相応しい人じゃないと意味ないんでしょ? 大丈夫?」


「それはもちろん、相応しい方ですので、ではお呼びします」


シラル宰相が合図をして、使用人がその受け取る人とやらを呼びに出て行った。

すぐ外に待機してるの? あんまり待ちたくないな。

いや待て。このタイミングしかない!!


「お菓子ってあります? あ、甘いものがある方が話が円滑に進みやすいからっていうか」


誰も反応しなかった。

そしてすぐに来る様子もないので間がキツイ。


「そういえば資料室とおっしゃっておりましたが、貴国の御資産はご無事でしたか?」


ローダーが唐突に丁寧に喋りだしたから噴き出しそうになったが耐えた。


「いえ、資料が無くなっても、聖女が現れれば何とかなります。装置も無事ですし」


「え? 資料室って勇者召喚に関する部屋だったの? それに装置って何? 聖女がなんかえーいってしたら呼べるんじゃないんすか?」


「そんな簡単だと苦労はしませんよ。過去の勇者様の遺産を使用して……」


召喚装置がどっかにあるってことなの? もっと詳しく!

と、扉が開いた。


「待たせたね。君たちが勇者の剣の持ち主かい?」


すごく朗らかな声を出しながら男性が入ってきた。

なんだ急に。あ、受け取る人ってこの人?


「そうだけど、あなたは誰?」


「こちらは第3王子のヨッヘム様です。勇者様の息子で、王子で、なにより国のことを想ってくださる、素晴らしいお方ですよ」


快活な成人男性だ。なるほどな。王子なら権力の問題とかそういう手間も省けるな。

でも王子って、あれ? さっき王子がどうとか……。


だがまた扉が外れるくらいの勢いで開いた。


「まて! 勇者の剣は俺が戴く!」


「あ、あなたはゲルルフ様!」


「って?」


「第1王子です!」


ああ、やっぱり。身内での権力争いというか兄弟喧嘩というか勇者になったらカッコイイというかそういうアレね。


「なんなの急に。あなたたちの問題なんて付き合ってられないわよ」


「なんだ貴様その態度は! 王族に逆らうつもりか!?」


「どっちみち剣が選ぶんだから。ほら、なんならあなたから渡してあげるわよ」


やおら剣を取り出し渡そうとする。第1王子は反射的に手を伸ばした。

が、案の定すり抜けた。


「うがああ!? ふざけてんのか!!」


「いや知らないわよ。剣が決めるんでしょ? じゃあ次はあなたね」


と言い今度は第3王子のほうへ剣を渡した。

が、こっちもすり抜けた。


「む……だめか」


「みたいね」


どっちもだめって、じゃあどうなるんだ。


「むう。困りましたね……どうしましょうか」


「どうせ他にも王族いるんでしょ? だったら全員試す?」


エルテに同調したのか、ローダーも各々を見ながら言う。


「面倒そうだけど、そうするしかないか。あ、でも、シラル宰相。王子は3人だけですか?」


「いえ第7王子までおられます。ちなみに王女は3名おります」


多くない!? まさかハーレム作ってんのかあのおっさん。むかつくぅ。


「と、そうしましたらゲルルフ様。彼女らの言う通り、皆様にも継承できるか試してみてはいかがでしょうか」


「つっても、マテーウスとネーポムクはまだガキだし、ハイノはいけすかねぇからダメだ! 当然女どもが勇者なんて気にくわねぇし、ましてや王族以外に渡すなんて論外だ!」


なんだこの王子。すっげえ我侭じゃん。

宰相は困った様子だし、俺らから言えることもないし。

見かねたのか第3王子が声を上げた。


「試してみる価値はあるかもしれないね。でも私の主観では、他の兄弟に勇者に相応しそうな人はいない、かな。剣の訓練もしていないしね」


「剣の実力が必要な条件かは分からないわよ。勇者っぽさが大事なんじゃない?」


剣を手に持ったままエルテが言うと第1王子のゲルルフはことさら不機嫌になった。


「ちっ。だったら条件が分かるまでお前ら国から出るの禁止な! 牢には入れないで置いてやるから感謝しろよ!」


そう喚き散らすと第1王子は出て行った。

あんなにイライラしちゃって。ハゲるぞ。


第3王子も感情的な兄にうんざりしたのか肩をすくめている。


「しかし困ったね。まあ試すにしてもみんなの都合をつけないとね」


なんてこっちのことはそっちのけで宰相のおじさんと今後の予定を話していたが、そこにエルテが口を出した。


「無関係な風だけど、あなたが私たちを捕まえたんでしょ?」


え!? 急に何を言いだすの?

王国で見た中では一番まともそうな人だぞ?


「……ちなみに根拠を聞いてもいいかな?」


「勘よ」


第3王子はきょとんとした。俺たちもぽかんとした。


「ははは。面白い人だね。まあ、兄上に賛成というわけではないけれど、私も勇者の剣は欲しいしね、君たちにはしばらくここにいてもらおうかな。シラル、部屋を宛がってくれ給えよ」


と言って爽やかな雰囲気のまま去って行った。


「と、よく分かりませんが……殿下がああ言っておりますので、しばし滞在して下さいますかな。今度はきちんとした客室へご案内致しますので」


なんだと。つまり。


「はい質問! お菓子くれますか!」


「…………まあ、食事もお出ししますので」


うわ期待薄。


次回投稿は5/2(日)です。

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