101.真っ赤に燃える
城の方向に進むつれ空は煌々と赤くなっていく。
揺らめく光の正体は空中に広がる煙だった。
「これ火事っぽくね?」
「そうね。でもまだ見えないからもっと近くに行くわよ」
「え、でもあんまり近寄ったら怪しまれんじゃ」
「暗いし騒がしいし、もう野次馬まみれだと思うわよ。だから行きましょ」
「いやいや火事だったら巻き込まれるかもしれないし、やっぱ逃げて明日確認するってのが常識的な行動かもしれないのですよエルテさん」
「ここまで出てきといて何言ってんの? それに今日は無風だし目視してからでも逃げられるわよ」
妙に冷静に情報分析してるな。
野次馬するためには全力を出すのがエルテスタイルというわけか。やっぱ諦めるしかないよね。
なんて考える間もなくずんずん進むから必死についていく。結構早いよ。
後ろから「あうー」と変な声が聞こえたのでローダーもちゃんとついてきているようだ。
「野次馬にでも行くのか? 危ないぞ」
突然第三者に話しかけられた。誰。
「あれ? もしかして、ミラージュさん?」
道の端からやおら近付いてきたのはミラージュさんだった。お久しぶりですなぁ。
エルテも気付いて振り向く。
「ろくなことが無かったのに、まだこの国にいるなんて意外ね」
「君らも、だろ? こんな国に何か用事があるのか?」
全くもってこんな国ですしな。しかし仕方がないのだ。
「俺たちは野次馬に来たんですよ。あ、火事もですけどそもそも国王がいなくなったのが気になるからなんすけど」
「って、本当に野次馬なのか……。面倒に巻き込まれるだけだぞ」
「いいから、火事の様子見に行きたいんだけど」
エルテはディフェンスめいて身体を左右に揺らし城の方角を見ている。そんなに見たいのか。
視線の先では夜の警らをしていたと思われる兵士らが城へ向かって走っている。続いて消防士らしき人たちも集まっていく。
「まあ、私も用事を終わらせたら去るから、君らもとっととこんな国は出るんだな」
なんて言いながら手をフリフリし城とは反対方向へと去っていった。
それを見送ってからエルテが気付く。
「あ!」
「な、なんだ!?」
「早く行かなきゃ! 火が消えたらどこが火事だったか分かんなくなっちゃう!」
そこかい!
と、突っ込む間もなく大急ぎで走り出す。
お城の前あたりまで来ると人混みが見え、エルテは速度を落とし人のすぐ後ろにつき背伸びをする。やっぱりお城が出火元のようだ。
ほとんど鎮火したらしく暗くなっていて、煙だけが立ち上っている。
「お城から出火なんて不用心ね。しかも消すのに結構時間かかってるし、どんな管理してるのかしら」
「そ、そんなの、倉庫とか、からじゃないの、か?」
ぜえぜえと息も絶え絶えに絞り出す。
「倉庫に火の元なんてある?」
「まあ考えたって分かるわけないぜ。どうせ城に用事あるんだしさ、また明日でも城で聞こうぜ」
意外としゃんとしているローダーが的確に突っ込むが、こいつも早く帰って寝たいだけだと思う。
他の野次馬たちもガヤガヤしていたが、次第に人が減っていった。
俺たちも人がいなくならないうちに宿へと帰った。
◆◆◆◆◆◆◆◆
興奮して全然寝れなかった。
翌日、呼ばれる日じゃないけど身支度をして城に向かうと。
「申し訳ないのですが拘束させていただきます」
入るなり、宰相じゃないけど知らない偉いっぽいおじさんが顔を合わせた途端言い放ち、わらわらと兵士が集まってきた。
「えぇ!? なんで!?」
「疑ってはいないのですがタイミングが悪かったんですよ。あなた方が来てすぐこんなことになるなんて……」
嘘臭くハンカチを目元に当ててから手を動かすと、兵が手際よく俺たちを取り囲んだ。
逃げられない!
「あ、でもこれあれだろ。一応形だけ拘束ってやつで実際は普通に客人的な、ほら帝国の時と同じパターンだよきっと、うん」
「それでは地下牢へどうぞ」
「完全に牢獄だー!?」
次の投稿は4/18(日)です。




