1.はじまりは強盗
「どこだここー!」
目が覚めると草原だった。
遠くに木の看板が見えるが他には何もない。
「五体満足、どこも痛まない。なーんでこんなところにいるんですかねー」
とりあえず看板へ向かう。
膝まで伸びた雑草が一面に広がる。
あまり凹凸もなく歩きやすい。
こんな神立地を放置するなんて現代社会であるだろうか。いや、ない。
ならば異世界転生(召喚?)か!
もしかして超スピードとか力こそパワーが手に入っている?
うは、夢が広がりんぐ!
でもお約束の女神とかそんなの無かったね。不思議ですね。
などと妄想を繰り広げているうちに看板についた。
「"シャングロー街← →リンバナナ街"……か。文字が読めちゃうヤツね! あーはいはい!
にしてもリンバナナ街ってなんだよ」
もちろん非常に心惹かれるリンバナナ街へ向かうことにした。
と、そこへ、第一現地人発見!
がっちりしたおっさんで村人より旅人って感じですね。
駆け寄りながら話しかける。
「こんにちは、今何をしているんですか?」
「えっ」
驚いた後にマジマジ見てくる。
そんなに見つめられると恥ずかしい。
「お前転移者か?」
「転移者!? そんな単語が出るなんてやっぱり異世界なのか!」
スーパーパワーとかアルティメットハイブリット魔法とか使えるんじゃね?
うは、夢が広がりんぐ!
一瞬で妄想を繰り広げ小躍りをしていると第一現地人がおもむろに剣を抜いた。
「なぜ抜刀しましたか?」
「着ているものをよこせ、マヌケ」
なんと、第一現地人はソロの強盗だったのだ!
さっそくウルトラパンデミックデストロイパワーを使う時が来た!
「ふはは! マヌケは貴様だ! くらえ、エターナルフォースブリザード!」
「なにっ! くっ!」
しかしなにもおこらなかった。
「よし、普通のパンチ!」
しかし普通に避けられた。
そして普通に殴り返された。
「いや、痛いし。なんで殴ったの?」
「だから物よこせっつってんだろうが! つかお前が先に攻撃してきてるじゃねぇか! 脳みそ詰まってんのかよ!?」
酷い言いようである。
そもそも寄越せと言われて寄越したらこの世には乞食しか存在しなくなるのである。
つまり答えは「私はNoと言える人間」である。
「私はNoと言います」
「もう意味がわからねぇえええええええええ!! めんどくせえから死ね!!」
現地人の唐突な叫びとともに強烈な衝撃に襲われ目の前が真っ暗になった。