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目標

 ワタルたちがラースを倒したことは、すぐに戦場に広がった。

 魔王軍の魔族達は次々と武器を落とし、戦意を喪失した。


「これで本当に終わり、だよね?」

「はい。ラースも倒しましたし、私たちの勝利です」

「勝ったんじゃな!」

「ワタル、見事な攻撃だった」

「私も頑張ったよ〜」


 確かめるようなワタルに、ハラルが笑顔で答える。

 それを聞き、改めてワタルたち5人は喜び合う。


「まさか本当に、あの忌々しい男を倒すとは……ロンドの言うとおりでしたね」


 気配も何も感じさせず、その女性はワタルたちに近付いていた。

 気が緩んでいたとはいえ、かなりの接近を許していた5人は一瞬で臨戦態勢に入る。


「初めまして。私はリート。この世で最強の存在、魔王を名乗る者です」


 リートはドレスの端を持ち上げて優雅に一礼すると、敵意がないことを伝えるように笑顔を向ける。

 しかし、それで警戒が解けるほどワタルたちも甘くない。


「ワタル、俺たちに敵意はない。むしろ逆だ」

「逆、ですか?」


 師であるロンドからもそう言われ、ワタルは恐る恐るといった様子で剣を下げる。


「私は魔王として再び魔族を率いることになるでしょうが、その前に人間と和平を結びたいのです」

「和平……それもそうですよね」

「うむ。互いのためじゃな」


 リートに言われ、ハラルとマリーはすぐにピンと来た。

 この戦争で魔王軍も幹部が半分となり、人間側も被害が甚大だ。

 永久とは言えずとも、一時的に和平を結ぶことを人間と魔族、互いに利害が一致している。


「はい。ですから、私は魔王として人間の王と話さなければならないのです」

「……わかりました。そこまで俺たちが案内します。みんなもそれでいい?」

「私は賛成だ」

「私もー!」


 ハラルとマリーも頷き、全員からの了承を得られた。

 ワタルはリート以下3人の幹部を連れ、人間側の本陣へと向かう。

 途中で魔族を連れていることに驚く者もいたが、ワタルたちの活躍は知れ渡っているため、文句を言うような輩はいなかった。


「……お前達、何のつもりだ?」


 本陣の奥、そこには予想通り王であるアニマが座っていた。

 背後にはヨナス、アルマ、カレンの3人が控えており、魔族を引連れてきたワタルたちに意図を聞くと同時に敵意も向けている。


「やめろ、ヨナス。ワタルとその仲間たちよ、まずは今回子戦争での活躍、誠に大義だった。お前は人類の救世主と言えるだろう」

「ありがとうございます」

「それで、その魔族はなんだ? 見たところ、只者ではなさそうだが」


 どう紹介したものか、と悩むワタルの脇を抜け、リートが前に出る。


「初めまして、人間の王。私は魔王リートと申します。どうぞお見知り置きを」

「魔族の王か。わしはアニマ。人間の王をしておる」


 魔王ともなれば対等な相手となるのか、アニマは立ち上がってリートと同じ目線で話し始める。


「それで、何用で?」

「今回の戦争で首謀者であるラースは死に、私が魔王として魔族を率いることになるでしょう。そこで人間と魔族、互いに痛手を負ったでしょうから、和平を結びたく思うのです」

「人間と魔族で和平……か」


 和平が結べたならば、この世界は今まででは考えられないほど平和になることは間違いない。

 そのため、ワタルたちや幹部たちもアニマの返答をじっと息を飲んで待つ。


「その申し出、ありがたく受け入れたい。我々も多くの民を失った。魔族と争わなくて良いのならば、こちらとしても願ったりだ」

「ありがとうございます」

「いや、こちらこそありがとう。下手に出てもらって悪いな」

「いえ、お気になさらず」


 リートとアニマは互いに王という唯一の存在であることもあって、通じつものがあるらしい。


 2人はそれから和平について細かく話し合った。

 その結果、人間と魔族は互いに領地を決め、5年間は相手の領地へ侵入しないということで合意となった。

 5年後、人間と魔族の情勢がどうなっているかはわからないが、その時には再び話し合うことにしたらしい。

 こうして、長かった人間と魔族の争いは膜を閉じることとなった。


 * * *


「一件落着だね」

「まだですよ」


 人間と魔族の和平が宣言され、戦争が終わった人々は宴を開いた。

 その宴の席でワタルとハラルはエレナやマリー、レクシアから離れて2人きりとなっていた。


「ワタル、貴方には元の世界へと戻る権利があります」

「あれ、でも俺は死んだはずじゃ」

「はい。ですが、天界の牢獄から逃げたラースを倒し、この世界に平和をもたらしましたからね。これだけの偉業をやってのければ、元の世界へ生きている状態で戻すことも可能です」


 初めて聞いた事実に、ワタルは悩み始める。

 元の世界に戻れるならば戻りたいが、今となってはこの世界での生活や仲間も、かけがえのないものとなっている。


「俺は……」

「まあ、すぐには無理なんですけどね」

「は?」


 真面目に考えていたというのに、急にそんなことをハラルが言うため、思わず聞き返してしまった。


「だって私、今は普通の人間ですし。レクシアから私の力を戻さないとワタルさんを元の世界に戻すことなんてできませんよ」

「ってことは」

「ワタルにはもう少し、私に付き合ってもらいます」

「あはは、そっか、そうなんだ」


 詫びる気がまったくなさそうな笑顔を前にして、ワタルは思わず笑ってしまう。


「ワタルくーん! ご飯なくなるよー!」

「酔うのはいつぶりじゃろうか。とても良い気分じゃ」

「待て2人とも、走るな! ワタル、ハラル、手伝ってくれ!」


 いつの間にか2人を見つけていたレクシアが、ワタルに駆け寄って飛び込んでくる。

 それに続いて酔っているらしいマリーも飛び込み、ワタルは倒れそうになるのを堪える。

 エレナは止めようとしたらしいが、2人相手は無理だったようだ。


「ごめんごめん。すぐに行くよ」

「主役がおらんと盛り上がらんからのう」

「そうそう。ほら、行くよ」

「慌てなくとも、宴は長い。とりあえずお前達はワタルから離れろ」

「あれれー、エレナちゃん嫉妬?」

「うるさい!」


 ワタルはマリーとレクシアに腕を引っ張られ、宴の中心へと連れていかれる。

 仲間に囲まれる空気は心地よく、ワタルも楽しくなり頬を緩めてしまう。


「ワタル、ついでですしこれからの目標とか決めたらどうです?」


 同じように楽しそうなハラルがワタルの横に来て、そんなことを提案する。

 新しい目標。

 それを聞かれ、ワタルはこの世界に来た時にひっそりと考えていた事を答える。


「そうだね。じゃあ俺の目標は、最強になって異世界を楽しむ、ってことで!」


 いつかきっと、この仲間とも別れの時が来るのだろう。

 しかし、今だけはそんなことも忘れ、この時この瞬間を楽しもう。

 最高の仲間と共に、ワタルの冒険はまだ続いていく。

「最強になって異世界を楽しむ!」はこれにて完結になります。

 処女作ということで至らない点が多かったと思いますが、無事完結できたのも読んでくれた皆様のおかげです。

 次回作はもう1つ投稿している作品を書き直そうと思っています。

 ここまで見てくださった皆様、本当にありがとうございました!

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