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成長

(まずは様子見……)


 睨み合うワタルとロンドだったが、先に仕掛けたのはワタルだ。


 普段ならば先手必勝とばかりに強い攻撃を叩き込むが、今回は違う。

 ロンドの出方を伺おうと、動作が短く素早い突きを選択する。

 その際に盾も体の正面に構えており、ロンドの反撃にすぐさま対応できる体勢をとっている。


「なめているのか?」


 そしてすぐに、その考えが間違っていたと気付かされる。


 ロンドは手に持った魔剣シュトルムを、真っ直ぐに振り上げた。

 すると暴風が巻き起こり、ワタルは剣と盾を下からすくい上げられ、バンザイのような体勢になってしまう。


「やばっ、召喚【アンデッド】」


 ロンドは素早く刺突の姿勢をとり、ワタルの心臓目掛けて魔剣を突き出す。

 咄嗟にワタルはアンデッドを召喚し、自分の体を後ろへ蹴り飛ばすように命じる。

 アンデッドは命令通りにワタルを後方へ蹴り飛ばすと、ロンドに貫かれ体を崩した。


「くっそ、判断間違えた」


 危うく初手で終わるところだった。

 相手はロンド、修行の時に本気を出されたら触れることさえままならなかったほど強力な敵だ。

 ワタルは自分の考えいた戦略を全て白紙に戻す。


「よし……常に全力で!」


 選んだのは、そんな単純な戦略。

 それ以外に策を弄しても、ワタルではロンドの裏をかくことは出来ないだろう。

 ならばこその、純粋な実力勝負だ。


「魔法剣!」


 ワタルは剣に水を纏わせると同時に、圧縮した水球を1つ作り出す。

 水球はそれぞれ不規則な動きをしながも、追尾性能を持っているようで、ゆっくりとロンドに向かっていく。


「…………」


 ロンドはじっとワタルを観察する。

 水球は不規則で避けにくく、追尾性があるとはいえ、あれほど遅ければまず当たらない。


「本気で行くから覚悟しといてね」

「ふん、人間風情が……格の違いを見せてやろう」


 ワタルは地を蹴り、水球を追い抜いてロンドに接近する。


「はああッ!」


 その踏み込みは先程よりも数段早く、ワタルの上段からの振り下ろしを、ロンドが魔剣で受け止める。


「甘い」


 拮抗した2人の鍔迫り合いは、ロンドが魔剣を傾け、ワタルの剣を受け流したことで破れる。


「まだまだ!」


 ワタルは体勢が崩れそうになるのを堪え、追撃で何度も剣を振る。

 剣と剣のぶつかり合う音が響くが、ロンドにはまだ余裕があるようで、水球の様子をチラリと伺っている。


 その様子を見たワタルは、渋ることなく自分の手の内を明かす。


「魔法剣・二重奏(デュオ)!」


 ワタルの持つ剣が纏っていた水の色が、深く暗くなっていく。

 剣は青い軌道を描き、ロンドへと襲いかかる。


「……ほう」


 ロンドが驚いたような声を漏らし、意識をワタルへと集中させる。

 普通の魔法剣ならまだしも、これはまともに受ければ勝負がつきかねない。


 右側からは水球が迫っていたが、動きもゆっくりで勢いがない。

 ロンドの鎧も元の魔王からもらったものであり、頑丈性には優れている。

 当たっても大した被害はないだろうと判断し、ワタルを仕留めるために剣を振る。


「俺に集中してくれたね!」

「なに? ぐッ!」


 ワタルが笑うと同時に、水球がロンドの右肩に当たり、破裂した。

 魔法剣で水を圧縮する要領で、水球にはワタルが操れる限界ギリギリまで水を圧縮していた。


 マリーのような火力はないため直接的なダメージは与えられないが、衝撃は大きくロンドの体勢が崩れる。

 そこへ、ワタルが振りかぶった剣が横薙ぎに払われる。

 間違いなく直撃コースだ。


「もらった!」

「ちッ」


 自分の思考の浅はかさに舌打ちをしながら、ロンドは手首のスナップだけで剣を投げる。

 狙いはワタルではなく、自分の目の前。

 ワタルの放った横薙ぎから守るように、盾として剣を使った。


 ワタルの攻撃はロンドの咄嗟の機転によって直撃こそ避けられたが、盾にした剣ごとロンドを大きく後ろへ吹き飛ばした。


「次!」


 ここを好機と見たか、ワタルはすぐに地を蹴りロンドへ追撃をかける。


「なるほど……強くなった」


 地面に何度も打ち付けられたロンドは、剣を持って立ち上がる。

 ダメージはしっかりと体に残り、窮地と言わざるを得ない状況だ。

 それでも、ロンドは弟子の成長に内心では喜んでいた。


「俺も全力で応えよう」

「はあッ!」


 ワタルの追撃の袈裟斬りを、ロンドは避けることなく剣を振り、鍔迫り合いとなる。


 ロンドの持つ魔剣シュトルムも業物だが、ワタルが持つデュランダルは不滅とされる神器。

 それに加えて魔法剣によって強化もされており、正面から打ち合えばロンドの武器が先に碎けることだろう。


「……勝算でも?」

「勝算のない行動はしない。……覚悟しておけ。シュトルム」


 2人は互いに押し返し、ロンドは愛剣の名を呼びながら上段に構えた。


(暴風? でも今なら)


 魔法剣となり水を纏っているデュランダルは、風や炎のような実体のないものですら斬り伏せる。

 たとえロンドが暴風を放っても、それを斬って逆にスキを狙える。


「纏え」


 だが、ロンドの言葉はワタルが想定していたものではなかった。

 吹き荒れるはずだった暴風は、ロンドが構えたシュトルムへと収束し、その刀身を薄い緑色に染めていく。


「魔法剣……」

「惚けている暇があるのか?」

「うッ!?」


 何故ロンドが自分と同じ技が使えないと決めつけていたのか。

 そんなことも考えられなかったことを反省するよりも先に、力強く地を蹴り踏み込んだロンドが魔法剣となったシュトルムを振り下ろす。


 間一髪盾で防いたワタルだったが、ロンドの攻撃はその程度では終わらない。


「吹き荒れろ!」


 盾と剣が衝突した瞬間に、ロンドがそう叫ぶ。

 超至近距離からの暴風に、ワタルは為す術なく吹き飛ばされるしかなかった。


「が、はっ!」


 背中を強く地面に打ち付けられ、肺の空気が全て出ていく。


「まだだ」


 どうにか立ち上がろうとしたワタルに、そんな暇は与えないとばかりにロンドが接近し、追撃の斬り上げを放つ。


「っ、解放!」


 ワタルは咄嗟に刀身へと圧縮していた水を解放し、ロンドとの間に大量の濁流を発生させる。

 ロンドは濁流を風を操ることで逸らしたが、ワタルは流されることで距離を開けることに成功した。


「そういった使い方もあるのか。面白いな」

「げほっ、はぁはぁ……」


 膝をつきながらも立ち上がったワタルは、そう呟くロンドを見て猛省する。

 成長したのは自分だけではなく、ロンドも常に鍛錬を積み、強くなるための方法を模索しているのだ。


「俺だって強くなる。……お前はこんなものか?」


 ロンドの言葉に、ワタルは余裕を見せるように笑って答える。


「なら、とっておきを見せてあげるよ」

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