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贖罪

「どうした? 殺せ」


 うつ伏せから仰向けの体勢になったセレナーデは、自分を斬らなかったワタルに向け、とどめを刺すように促す。


「お前を裁くのは俺じゃないから」

「どういう……」


 その言葉に疑問を持ったセレナーデだが、その答えはすぐにわかった。


「魔女をどうするかは、魔女が決めるよ」


 ワタルの視線の先には、レイとリナの姿があった。

 2人はこちらに向かってくると、セレナーデと視線を交差させる。


「……殺せ」

「ボクは君を殺さないよ」

「どういうつもりだ」


 レイの言葉に一瞬驚いた表情を見せたセレナーデだったが、すぐにレイを睨み、その真意を探る。


「私は負けた。殺される以外の選択肢はない」

「逆だよ。負けた君には、自由に死ぬ権利もない。君には生きて、贖罪をしてもらう」

「バカか? 私は人間も魔女も大勢殺した」

「嘘をつかないで」


 言葉を重ねるセレナーデを、リナが遮る。


「私とレイは他の子達を見て回ったけど、重傷の人はいても、死んでる人はいなかった」


 セレナーデとの戦闘から離脱したレイは、リナと共にほかの兵士や魔女の治療に回っていた。


「手加減したんでしょ?」

「……私の腕が未熟だっただけだ」

「セレナーデ」


 顔を逸らすセレナーデだったが、レイに名前を呼ばれ、仕方なく目を合わせる。


「もう一度言うよ。生きて、私たち魔女や人間の助けになって」

「……反感を買うぞ」

「説得する」


 有無を言わせぬレイの物言いに、セレナーデは諦めたようにため息をつく。


「ならせめて、最低限の罰は受けておく。リナ」

「なに?」

「私の魔力回路を壊せ。出来るだろ?」

「えっ」


 リナはすぐには動けず、セレナーデとレイに交互に視線を向ける。

 魔力回路は全身に魔力を巡らせる血管のようなもの。

 それを破壊するとはつまり、この先二度と魔法が使えなくなるということだ。


「本当にやるよ?」

「早くしろ」


 やがて、リナは意を決したようにセレナーデの体へ手をかざす。


「スペルブレイク」


 そう呟くとセレナーデの体が淡く光り、すぐにそれは収まった。


「これで魔力回路は消えたよ」

「なら、まずはセレナーデの治療をしないとね。ボクがやるよ」

「本当に、お前らはバカでお人好しだ」

「勝手に言ってなよ。戦争が終わったら馬車馬の如く働いてもらうから」


 レイはセレナーデと話しながら、魔法陣にやる回復魔法を使い始める。

 その横顔はどこか楽しそうで。


「リナさん」

「あ、ワタルさん。お疲れ様です。どうかしました?」

「ちょっと聞かたいことがあって。リナさんの禁忌の魔術で魔力回路を壊したら、呪いも消えますか?」


 ワタルはリナが魔力回路を破壊したのを見て、すぐにそれを思いついた。

 もしかすれば、ロンドの呪いも消えるのではないか、と。


「そうですね……多分消えると思います。でも、強い呪いは解呪も難しいですし、その人の魔力回路に強く結びついているでしょうから」

「やっぱりですか! あの、俺についてきてもらっていいですか? 呪いを解きたい人がいるんです」

「そういうことでしたらもちろん。レイ、話は聞いてた?」

「大丈夫だよ。ここはボクとほかの魔女の子たちとで前線を支えておくから」

「ありがとう」

「気にしなくていいよ。頑張ってね」


 2人はレイに見送られ、前線に向かっていく。


「ちなみにワタルさん。その呪いを解きたい人ってどなたですか?」


 途中、リナはふと思ったことをワタルに質問する。


「俺の師匠で、魔王軍の幹部です」

「………………え?」


 少し言いにくそうに言ったワタルの言葉に、リナは疑問符を浮かべるのだった。


* * *


 アラベスクとセレナーデの単独強襲によって前線を押し込まれた左右とは違い、戦場の中央はかなり前線を押し上げていた。

 理由は簡単だ。


「レーヴァテイン」

「神雷っ!」


 マリーの超火力による炎と、神の力を存分に使えるようになったレクシアの雷帝の力を使った雷が、開幕から魔王軍を襲ったからだ。

 これにより、魔王軍の第1陣はほぼ全滅。

 人間側が優位に戦闘を進めていく。


「あの魔法使い2人を殺せ!」

「ほかは無視でいい! あいつらをやれ!」


 マリーとレクシアの脅威を身をもって知った魔王軍は、2人に狙いを定めるが、


「よそ見してるほど余裕か?」

「周りも見た方がいいですよ」


 最前線でも、魔王軍相手に猛威を振るう猛者が2人。

 エレナとハラルだ。


 エレナはマリーとレクシアに気を取られている敵がこちらに気付く前に、自慢の速度で敵を両断。

 ハラルは真正面から敵の魔法を、アンチマジック・ガントレットによって弾き、薙ぎ倒していく。


 結果、中央は左右と比べ圧倒的優位で戦闘を進めることとなっていた。


「ハラルちゃん、エレナちゃん、大丈夫?」


 途中、最前線まで上がってきたレクシアも合流し、3人は破竹の勢いで敵陣を進んでいく。


「2人とも、そろそろ気をつけてください」

「うん、わかってるよ」

「私も大丈夫だ」


 ハラルのその一言に、2人は気を引き締める。

 敵がこれだけ押されて、幹部が出てこないわけがない。

 2人は周囲の魔族を蹴散らしながら、来るであろう幹部に備える。


 そして、その予想は見事に的中した。


「止まってください」


 最初に気付いたのはハラルだった。

 その抑制に、2人は大人しくその場に止まる。

 3人の目の前を埋めていた魔族が左右に避けていき、奥から1人の男が姿を現した。

 その男は3mという巨大に加え、筋骨隆々な6本を腕に、それぞれ人を簡単に潰さそうな大剣を掴んでいた。


「当たりですね」

「みたいだね」

「私がやろう。2人とも、先に行って」


 予定通り、エレナは2人よりも1歩前に出ると、白夜の柄に手を添えて臨戦態勢に入る。


「わかりました。レクシア、行きますよ」

「負けないでね!」


 ハラルとレクシアの判断も素早く、エレナにこの場を任せると、2人は敵陣へと走っていった。

 その様子を何をすることもなく見ていた男は、ゆっくりと口を開く。


「短期決戦狙いか。悪くない」


 男の言うとおりだった。

 今でこそ戦争は人間側有利に運ばれているが、数も個人の力も恐らく魔王軍が上だろう。

 狙うは短期決戦。

 そのためには、ここで止まるわけにはいかない。


「攻撃してこないし、目の前で敵を見逃すし……何がしたいの」


 エレナが疑問をぶつけると、男はすぐに答えた。


「深い意味はない。ただ1人の武人として、お前と1対1で勝負がしたかった」

「変わってるな」


 男は遠くからだが、エレナとハラルの動きをよく見ていた。

 そして、敵ながらに賞賛していた。

 なんて素晴らしい動きをする2人なのだろうか、と。


 その前の凄まじい火力の魔法も気になったが、やはり戦闘は近接戦闘。

 その2人のうち片方と戦えるなら、男はほかの2人を見逃すぐらいなんてことはない。

 1対1で戦えるということであり、なによりも、自分の後ろにも幹部はいるのだから。


「そうかもな。魔王軍幹部、カプリースだ」

「獣人族のエレナ」


 最初にカプリースが名を名乗り、エレナがそれに応える。

 2人とも己の武器に手をかけており、エレナの脚力であれば、一瞬のうちに距離も縮まる。


「エレナか。正々堂々、楽しませてくれ」

「もちろんだ」


 カプリースが口角を吊り上げて笑い、そんな言葉を交わす。

 次の瞬間、弾かれるようにしてエレナが駆け出した。


──────────────────────


エレナ Lv.102


ステータス

筋力:456

技量:862

敏捷:2360

耐久:328

魔力:87


スキル

人狼

加速

抜刀術

抜刀時の攻撃の速度及び斬れ味への大幅な補正。

速激

攻撃直前の速度に比例した威力への補正。

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