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小夜曲の剣術

「この結界の維持も、そろそろ限界か?」


 青ざめているエリヤの顔を見て笑いながら、セレナーデはそう指摘する。

 実際その通りで、この魔剣エントの魔法無効の結界は、使用者の体力を著しく奪っていく。

 当初は魔法が使えないセレナーデを早めに仕留める算段だったが、予定が狂った。


「魔女なのに剣豪って……ありかよ」

「私は普通の魔女じゃない。禁忌の魔女だ」


 禁忌の魔女の生まれ方は特殊で、普通の人間が魔女になって生まれる。

 そのため、人間の頃に培った技術は魔女になっても引き継がれる。

 ただの村娘であったリナは普通の魔女と変わりないが、マリーは人間の頃は魔法使いであり、類まれなる魔力を持っていた。

 それは魔女になることで強化され、異常とも言える魔力を手にした。


 セレナーデの場合は、それが剣士であったというだけである。

 もちろん、普通の剣士ではないが。

 人類でも最高峰の剣の腕を持つセレナーデは、2本の剣を使い鬼神のような強さを誇っていた。

 人々はそんなセレナーデに、畏敬の念を込めて舞姫と呼んだ。

 魔女となってからも鍛錬を続けたセレナーデは、ついに今この時まで、誰にも負けることはなかった。


「これでわかっただろう? お前達では私に勝つどころか、傷1つ付けることもできない」

「っ……」


 エリヤはギリッと悔しそうに歯を食いしばる。

 認めたくはないが、自分と目の前のセレナーデとの実力差は大きすぎる。

 恐らく、人間では誰も太刀打ちできないだろう、と思わせられるほどの腕前だ。


「エリヤ、お前はそこで体力温存しとけ」


 そう考えて下を向いていたエリヤに、反対側で立ち上がったアルマから言葉が飛んでくる。


「俺が時間を稼ぐ。悲しいが、俺達じゃこいつに勝てそうにないからな」

「でも、時間稼ぎって何のために……」


 エリヤが知る限り、この戦場で目立つ実力者たちは、全員ここから離れた場所に居るはずだ。

 この場に駆けつけるなど、不可能と言っていい。


「大丈夫だ。心当たりはある。それより、お前はこの結界を絶対に解くなよ」


 アルマはエリヤを安心させるようにそう言うと、盾と槍を構え直し、セレナーデを真正面から睨む。


「死に損ないが……そんなに早死したいか」

「悪いが、まだ死ぬ予定はないな」

「なら、私が殺してやる」


 2人が言葉を交わし、セレナーデがアルマへと両手の剣を握る手に力を込めて、斬りかかった。


* * *


 セレナーデが攻撃を仕掛けてから10分。

 甲高い金属と金属のぶつかり合う音が、辺りに響き続けていた。


「ほら、時間を稼ぐんじゃないのか? もっと頑張れ」

「ぐ、おお!」


 アルマが1人でセレナーデの攻撃に耐えきれているのは、もちろんアルマ自身の技量もあるだろうが、セレナーデが手加減していることも大きい。

 この時間稼ぎに何の意味があるのか、セレナーデは面白いと、様子を見ることにしていた。

 だが、それももう終わりだ。


「……誰も来ないし、もう殺すことにする。後悔や苦痛に顔を歪めて、死ね」


 待つのにも飽きてきたセレナーデが、一気に攻勢に出る。

 距離を開けていたアルマに向けて跳躍、凄まじい速度で両手の剣を振り下ろそうとする。


「ここだっ!」


 そこへ、今まで防御に専念していたアルマが、初めて攻撃と言える突きを繰り出す。

 セレナーデは自分とアルマとの実力差をよく理解し、それ故に油断している。

 アルマの専門は盾だが、槍や剣などの武器も一通り使えるのだ。


 そんなアルマの渾身の突きは鋭く、目にも止まらぬ速度で放たれていた。

 いくらセレナーデでも、魔法を封じられた状態で今から急停止するなど、まず間違いなく不可能だ。


(もらった!)


 アルマは確信し、矛先がセレナーデの左胸に吸い込まれていき……


 シャリンッ!


 そんな音と共に、空中で横回転したセレナーデの剣に受け流された。

 驚きに目を見開いたアルマへ、セレナーデが跳躍の勢いをそのままに、回転を活かしてアルマに4度斬りつける。


「くっそ……」


 直前でセレナーデがアルマの攻撃を受け流したため、傷は致命傷には至っていない。

 それでも軽傷と言うには程遠く、片膝をつくことで倒れるのを耐えるのが限界だ。


「私に剣術を使わせたのは誇っていい。が、勝負はついたな」


 綺麗に着地したセレナーデは、この戦争で初めて自分に剣術を使わせた相手に対し、賞賛の言葉を送る。


「今まで剣術使ってなかったってことかよ。やっぱりかなわねぇか」

「なんだ、諦めがいいな」


 なら一瞬で殺してやると、セレナーデは剣を振り上げる。


「俺の役目は終わりだからな」


 アルマの首をはねようとセレナーデが剣を持つ手に力を込めた瞬間、そう言って笑ったアルマの言葉に反応するように、セレナーデの右側から剣が投擲された。

 セレナーデは素早く反応し、振り上げていた剣で、投擲された剣を弾き返す。


「待ってたぜ」


 睨むセレナーデと笑うアルマの視線の先に、弾き返された剣を綺麗にキャッチした人物はいた。


「すみません、遅れました」


 セレナーデから目を離さず、ワタルは剣と盾を構えた。


「この結界で魔法が使えないみたいなんですけど、敵がこれを張ったんですか?」

「いや、それは俺の剣の効果だ。そいつが禁忌の魔女でな」

「禁忌の魔女、ですか」


 ヨナスの言葉を聞き、ワタルはセレナーデに対する警戒レベルを引き上げた。

 アルマとヨナスをここまで圧倒するということは、幹部で間違いないだろう。

 それに加えて禁忌の魔女となれば、マリーやリナのように特殊な技を持っているはずだ。


「気を付けろよワタル。そいつは魔女だが、剣術が異常に上手い。お前だけじゃなく仲間と合流して」

「剣士と思えってことですね。わかりました」

「あ、おい!」


 傷口を抑えながらセレナーデの情報を教えていたアルマは、正面から1人で戦おうとするワタルを見て止めようとする。


 確かにアルマはワタルが来るのを期待していたが、それはワタルが仲間と一緒であることが前提だった。

 1人でこの魔女相手など勝てるわけがない、そんなアルマの気持ちなど知らず、ワタルはセレナーデと対峙する。


「雑魚が増えたところで同じだろう!」


 セレナーデは両手に力を込め、ワタルに向けて駆け出す。

 レイ、アルマ、ヨナスとの連戦を重ねたセレナーデだが、疲労はほとんどない。

 目の前の人間も問題ないと、セレナーデは2本の剣を振るった。


「ふっ」


 だが、ワタルはセレナーデの攻撃を盾でいとも容易く防ぐ。


「っ、まぐれが……」


 自分の攻撃をここまで簡単に弾かれると思っていなかったセレナーデは一瞬驚くが、すぐに攻撃にでる。

 二刀流を活かした連撃。

 アルマに使ったような剣術ではないものの、それは素人でも洗練されているとわかる、目にも止まらぬ速度の攻撃だ。


「ほっと」


 ガガガガッ、キィン!


 ワタルは落ち着き、セレナーデの動きの一つ一つをよく見る。

 そして、剣は盾にぶつかり何度も鈍い音を立て、最後にはワタルの振るった剣によって大きく弾かれる。

 剣こそ手放さなかったが、セレナーデ後ろへ後退させられることとなった。


「……お前は雑魚じゃないな。名前を聞いてやる」


 2本の剣による連撃を、まるで当然のように防ぎきり、さらには自分を後ろへ下がらせるまでしたワタルに対し、セレナーデは名前を聞く。


「ワタル。お前を倒す人間の名前だから、しっかり覚えておいてね」

「覚えておこう。私に殺される、哀れな人間の名前としてな」


 ワタルは笑ってセレナーデに名を答える。

 それを聞いたセレナーデは油断や余裕を顔から消し去り、再びワタルに向けて駆け出した。


──────────────────────


ワタル Lv.362


ステータス

筋力:1062

技量:2528

敏捷:965

耐久:997

魔力:852


スキル

女神の加護

召喚【デスペリアスライム】

召喚【アンデッド】

守護

水の加護

武人

技術ステータスへの大幅な補正。

詠唱破棄

詠唱無しでの魔法の行使を可能にする。

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