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開戦

「ワタルは居ないが……まあ、頑張るとするかのう」

「ですね。私は新しい武器貰いましたし」


 戦場となる王都から離れた草原で、マリーたちは魔王軍を向かい打つべく待っている。

 人間と魔女の連合軍の数は10万を超えており、総力戦なのだと実感する。


「私も貰ったっすけど、よかったんすか?」

「ああ。俺の最高傑作を渡してる。使いこなしてくれよ」

「これ6本あったんですね」

「お前が勝手に取った時は、まだ作ってた途中だったんだよ」


 エリヤはこの時のためにと、作っていた最高傑作である武器の4つを、それぞれ使いこなせると思った相手に渡していた。

 ハラルにはアンチマジック・ガントレットという白銀の右腕全体を覆うガントレット。

 ノクターンには双戦斧という2本の巨大な斧を。

 リナにはアラベスク戦の時に使った転移の短剣が、6本になっている。

 そして、エリヤ自身も1本の剣を鞘に収めて持っていた。


「効果は話した通りだ。戦闘の助けになるはずだ」

「魔族の私に渡すなんて、信じられないっすね」

「そいつらがお前は信用できるって言ってたからな。昨日の敵は今日の友ってやつだ」

「まあ、信じてもらうからには活躍するっすけどね」


 そうして話していると、地面が揺れ始める。

 そして、遠くに魔王軍の大軍が見えた。


「いいか! これは魔族の人間の最終決戦だ! 狙うは魔王の首のみ!」


 人間と魔女を前に、ヨナスとアルマが先頭に立って士気を上げている。


「だが何よりも、まずは生きろ! 開戦だ!」

「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」


 アルマが合図を出すと、人間魔女連合軍が一斉に走り出す。

 こうして、この世界の生き残りをかけた最大の戦争が幕を上げた。


* * *


 戦争は人間魔女連合軍が押していた。

 というのも、魔女の戦闘能力が圧倒的に高かったのだ。

 殲滅力に優れている魔女は複数人で集まり、その魔法の腕を遺憾なく発揮していた。


「よし、次を」


 魔女の1人が目の前の魔王軍を吹き飛ばし、新しく魔法陣を展開しようとした、その時だった。


「うっ!?」


 遠くから炎の剣が飛んできたかと思うと、避ける暇もなく魔法陣を展開していた魔女の腹を貫く。


「大丈夫!?」

「回復魔法、急いで!」


 慌てて周りの教会の人間が回復魔法を使っていると、その目の前に女性が現れる。

 風魔法で宙に浮いている女性は、魔女と人間に向けて、心底軽蔑するような視線を向けている。


「魔女も人間も……全員死ねばいい」

「ひっ!?」


 その女性が右手を空に上げて振り下ろすと、傷を負っている魔女に向けていくつもの炎の剣が放たれる。


「スペルブレイク!」


 思わず悲鳴をあげた魔女と人間だが、炎の剣は横から放たれたその声によって消え去る


「セレナーデ……本当に魔王軍についたのね」

「久しぶり、リナ。それに懐かしい魔女たちも」


 セレナーデの前に立ち塞がるのは、リナとレイを筆頭にした魔女たちだ。

 セレナーデはそんな魔女たちを見ると、みるみるうちに顔を怒りに染めていく。


「お前たちを殺すために、私は魔王軍幹部になった。惨たらしく殺してやる」

「セレナーデ、ボクたちと戦っても勝算はないよ。こっちにはリナもいる」

「私の禁忌の技術が宛にならないと思っているのか。言っておくが、私はお前たち全員よりも強い」


 そう言ってセレナーデが空中で手をかざすと、空間がねじ曲がり、穴があいてそこから10本の剣が出てくる。

 セレナーデはその2本の剣を浮遊させて切っ先をレイたちに向ける。


「やる気みたいだね」

「セレナーデ、容赦はしないわよ」

「ほざけ」


 魔女と魔女が激突する。


* * *


 同時刻。

 セレナーデとレイたちが激突している場所とは反対側で、人間側は隊列が崩れていた。


「復活させてもらったんだ。全員殺さないとな」


 驚くべき速度で人間を殺していくその男は、魔王軍幹部アラベスク。

 アラベスクは赤色の槍を振り回し、人間の数を減らしていく。

 しかし、いつまでも思い通りにはいかない。

 アラベスクの槍は、目の前に立ち塞がった人間の男に受け流される。


「手応えのない奴らだと思ったが、お前は別だな」

「どうも」


 ヨナスは両手に握った細身の剣を構え、アラベスクと正面から対峙する。

 正直に言えば、勝ち目は限りなく0に近い。

 だが、それでいいのだ。

 強い敵を弱い自分が抑えることでも、戦争に大いに貢献できる。

 ヨナスは深呼吸を繰り返し、地を蹴った。


「はあっ!」

「人間にしては速いじゃないか」


 全体重を乗せたヨナスの攻撃だったが、アラベスクはそれを血の壁で簡単に防ぐ。

 ヨナスが何度も一点に集中させて攻撃を繰り返すと血の壁は崩れるが、その時にはアラベスクの槍の矛先が、ヨナスへ向けられていた。


「今回は最初から本気だ。武器もな」


 アラベスクが槍を突き出すと、槍の矛が幾つにも分かれて伸び、100を超える矛となって広範囲を襲う。


「ぐ、ううう!」


 その中心にいたヨナスはどうにか急所だけは防ごうと、槍を逸らす。

 それでも手数の差で肩や足を貫かれ、激痛が走る。


「その程度か」

「ま、だ……まだ!」


 ヨナスは体全体を回転させ、周囲の槍を切り落とす。

 そのままアラベスクに接近し剣を突き出すが、血の壁がその攻撃を防ぐ。


「風よ、吹き荒れろ」


 そう何度も同じ手で防がれるヨナスではない。

 血の壁に刺さった剣を通して魔法を使い、風によって血の壁を内部から破壊する。


「なに?」

「ふっ!」


 一瞬で血の壁を破壊されたのは予想外だったのか、アラベスクの動きは鈍い。

 その隙を見逃さず、ヨナスが低い体勢から両手の剣を切り上げる。

 アラベスクは後ろに飛ぶが、避けきれずに体に2つの切り傷を負う。


「人間が……簡単に死ねると思うな」

「これだけやって、やっと切り傷か」


 息を切らしているヨナスの目の前で、アラベスクが姿を変えていく。

 人間の姿から化け物へと変わり、その殺気に周囲の兵士は体が言うことを聞かなくなる。


「死ね」

「くっ!」


 アラベスクが地面に広がっている血液を操り、複数の槍をヨナスへ向け放つ。

 咄嗟に横っ飛びで回避したヨナスだが、次の攻撃は避けられないだろう。

 アラベスクは槍の矛先をヨナスに向け、再びその矛を幾つにも分かれて伸びると、避けられる暇もなくヨナスを襲う。

 どうにか防ごうと剣を交差させるヨナスだったが、その必要はなかった。


「久しぶりっすね。アラベスク」


 盛大に両手の戦斧を振り回すノクターンが、ヨナスの前に立ち、槍を全て破壊する。


「ノクターン、まさか人間の見方をする気か」

「それはこっちの台詞っすね。私たちの魔王はフィナ様だけっすよ」

「ラース様こそが魔王だ。それに恩がある」

「なら殺し合いっすね。手加減はしないっすよ」

「お前じゃ俺には勝てないだろう」


 アラベスクが血の槍をノクターンへ放ち、それを両手の戦斧で吹き飛ばす。

 それを挨拶代わりにするように、幹部2人の戦闘が始まった。

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