表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/74

帰還

「それにしても、幹部が2人ですか。魔王も本気ですね」


 ハラルはコラールとロンドを見ても、落ち着いた様子で現状を理解する。


「なんであるか、貴様は」

「悪魔に名乗る名前は持ち合わせていません」


 コラールの問いに、ニコリと微笑んでそう答えると、ハラルは黒い手袋を両手に付け、接近して殴り掛かる。


「愚直な攻撃が、2度も通用すると思うでないわ!」


 コラールは大鎌を横薙ぎに振る。

 大鎌の刃がハラルの拳に迫り、そのまま斬られる。

 とは、ならなかった。


 バキンッ!

 金属が折れるその音と共に、コラールの大鎌が粉々に粉砕される。


「なんだと!?」

「音魔法、ってわかります?」


 明らかに動揺するコラールへ、ハラルの拳が腹に直撃する。

 今までワタルの攻撃をものともしなかったコラールは、ハラルの拳がよほど効いたのか、口からどす黒い血を吐き、後ろに数歩下がる。


「音魔法で拳を振動させて、破壊力を上げてるんですよ。あ、ごめんなさい。悪魔の頭じゃ理解できませんよね」

「貴様!」


 煽るハラルへ、コラールが突っ込もうとするが、その肩をロンドが掴み止める。


「落ち着け」

「……我としたことが、取り乱してしまったのである」


 ロンドの一言で冷静を取り戻したのか、コラールはハラルへ突っ込むことはなかった。


「邪魔が入った。今回は退くぞ」

「まあ、それも仕方ないであるか」


 2人はこれ以上戦闘をする意志はないのか、周囲の魔族を引き上げさせる。


「だが、最後に少しぐらい攻撃しなければ、我も気が済まないのでな」


 ロンドも退こうとするが、コラールはやられっぱなしでは気が済まないのか、魔法を発動する。

 コラールが作り出したのは大量の風の刃だが、ワタルの水の刃とは数も大きさも桁違いだ。

 それが全て、ハラルへ向かっていき、避ける暇もなく両手を交差させて防御の姿勢をとった、ハラルに直撃する。


「悪魔の攻撃なんて、効きませんよ」


 人間どころか、魔族ですら原型も残りそうにないその攻撃を、ハラルは体に擦り傷を多く作っただけで、その表情はコラールを嘲笑していた。


「本当にムカつくやつであるな。名も知らぬ人間の女よ。貴様はこの我が必ず殺してやる。それまで首を洗って待っているのであるな」


 コラールは最後にそう捨て台詞を残し、ロンドと共に撤退していった。


「改めて、また会いましたね。ワタル」


 完全に魔族たちが去ったのを確認し、ハラルは振り向いて微笑んだ。




 魔族の軍勢も撤退したため、現在ワタルたちは馬車に乗って王都へ帰っている。


「ハラル様はなんでここに来れたんですか?」

「ハラル、で。あと喋り方も、マリーやエレナと同じにしてください」

「え、でも」

「そうじゃないと喋りませんよ。だって……」


 ハラルはもじもじと、恥ずかしそうに顔に片手をあてる。

 ツンデレなのかもしれない。

 とわワタルはハラルの意外な1面を見た気がした。


「ワタルを、調教したくなりますから……」


 ワタルは言葉を失った。


 ちなみに、ハラルはエレナとマリーとは既に打ち解けていた。

 その時に自分のことを、


「神様の使いの天使で、ワタルとは友人です」


 と、言っていた。

 この世界には種族として、目撃情報は少ないが、確かに天使が存在するらしい。

 それに加え、ハラルを呼び出した魔法陣が、神である雷帝がいた場所の地下にあったものであるため、それで納得したらしい。


「それにしても、悪魔に負けるなんて情けないですよ。それでも私の友人ですか」

「俺あれでもかなり頑張った方なんだけど……」


 ワタルは全員を走る激痛で倒れるように馬車に乗っており、マリーもハラルを呼び出す時に魔力のほとんどを使ったのか、杖に貯めていた魔力を自分移動させ、どうにか動ける状態だった。

 エレナは無傷に近い。


「まあ、それはいいでしょう。それよりも」


 ハラルの視線が鋭いものとなり、ワタルの体に隠れるように魔剣の状態になっていた、レクシアへ向けられる。


「神殺しの魔剣レクシア。ここで壊しておきますか」

「やろうって言うなら、私だって受けて立つよ!」


 ビクっと体を震わせたレクシアが、人間の姿になり、ハラルへファイティングポーズをとる。


「2人とも、喧嘩はやめようよ」


 2人はしばらく睨み合っていたが、先にハラルが視線を逸らした。


「私自身は別に恨みはないですし、構いませんよ」


 そう言ってエレナと話し始めたハラルを見て、レクシアがワタルに小声で話しかける。


「ワタルくん、ワタルくん」

「どうしたの?」

「ハラルって、本物の女神だよね」

「わかるものなの?」

「魔力の感じが、最初に殺した神や雷帝と似てたから」


 神殺しの魔剣だからか、レクシアは確信を持った声で言う。

 そういうものなのか、とワタルが考えていると、馬車が王都に到着した。




「皆さん、お疲れ様でした!」


 王都に戻ると、ギルド職員が総出で出迎えてくれた。


「今回参加した皆さんに報酬を渡しますので、冒険者の方はギルドまで、兵士の方はお城まで足を運んでください」


 それを聞き、冒険者たちはギルドへ移動する。

 ワタルたちも、それに続いて移動する。


「ハラルも、いいタイミングだし、今冒険者カード作る?」

「あ、私はもう冒険者カード持ってますよ。たまに地上に降りますから」


 ハラルは懐から冒険者カードを取り出し、4人に見せる。


────────────────────


ハラル Lv.78


ステータス

筋力:369

技量:185

敏捷:162

耐久:1860

魔力:497


スキル

魔法耐性

魔法に対する強力な耐性。

物理耐性

物理攻撃に対する強力な耐性。

状態異常無効

自身のバッドステータスの無効化。


────────────────────


「壁じゃん」


 ハラルのステータスは、ネットゲームなどで言うところのタンク、壁だった。


「ハラル、武器はなんだったっけ?」

「これですね」


 壁ステータスだというのに、ハラルは盾を持っていない。

 そういえば、武器はなんだったかと思いワタルが聞くと、ハラルは銀色の手袋を出してくる。


「……盾は?」

「盾は可愛くないですから」


 ハラルは平然とした顔で、そう言い放った。


「ハラルには、タンクはなにかを教えないといけないね」

「私に教えるなんて、偉くなりましたね」


 元の世界にいた頃は、ワタルはネットゲームでタンクをしていた。

 ハラルの態度に耐えられなかったのか、珍しく真面目な顔で、ハラルへ詰め寄る。


「平和じゃな」

「これを見てると、そう思えてくるな」

「だね〜」


 ぎゃーぎゃーと言い合う2人を、マリーたち3人は笑いながら眺めていた。

 結局、その言い合いはハラルが満身創痍のワタルを叩いたことにより、ワタルが倒れて終わった。


 残った4人は報酬を受け取ると、笑いながらワタルを家に運ぶ。

 その日は、目覚めたワタルを交え、ハラルのパーティ加入祝いとして、少しだけ豪華な食事を取って楽しく過ごしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ