魔族接近
「さあ、遠慮せずに食べるといい」
大広間に連れられたワタルたちは、縦長のテーブルにアニマと座っていた。
王と食事を取るなど、滅多にない機会のため、ワタルは混乱していた。
「毒など入っていないだろうな?」
「エレナ、そんな口の聞き方は……」
「いやいや、気にしなくていい。何なら、わしが毒味をしよう」
エレナが先程のことをまだ根に持っているのか、レクシアと一緒にジト目で豪華の量を見て、アニマにそんなことを言う。
慌ててワタルが注意するが、アニマは気にした様子もなく、むしろ機嫌が良さそうだった。
アニマと一緒にいる騎士達も、エレナの言葉に反応しない。
「美味しいから早く食べた方がいいと思うんじゃが」
ただ1人、マリーだけはマイペースに料理に手をつけていた。
「アニマ様、この状況を説明してもらえます?」
「説明もなにも、もてなしているだけだ。最初のことはわしの興味本位でな。迷惑をかけたな」
それから、ワタルたちは豪華な食事をとった。
たまにアニマから冒険譚を聞かれ、幹部との戦闘を少し脚色して話す。
アニマにはそれが受けが良く、いつの間にかワタルたちはアニマと打ち解けていた。
「おお、そうだ。お主らに幹部討伐の報奨をやらんといかな。わし個人からだが、役に立ててくれ」
食事も終わり、一息着いたところでアニマがそう切り出し、騎士の1人に合図する。
騎士は大広間を出ると、数分後に戻ってくる。
その手には、鞘に収められた刀が握られていた。
「これはわしが保有している武器の1つでな。その中でもかなりの業物だ」
アニマがそれを受け取り、鞘から引き抜くと、刀身が輝いているのではないかと思えるほど、素晴らしい銀色が目に留まる。
武器のことを知らない素人でも、その刀が決してそこらに並ぶようなものではないとわかった。
「名を白夜という。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
ワタルは受け取るべきか一瞬迷ったが、拒否するのは失礼になると思い、アニマから白夜を受け取る。
「今日は楽しかった。また城に来ることがあれば、その時は冒険譚を聞かせてくれ」
「はい。喜んで」
アニマの言葉に笑顔で返し、ワタルたちは騎士に案内されて門へと戻る。
アニマは門まで見送りをしてくれ、ワタルは最後に頭を下げてから城を出た。
「いい人だったね」
「そうじゃな」
「また行く機会はあるだろうか」
「幹部を討伐したら、また呼ばれると思うよー」
それぞれ話しながら、4人は家へと戻る。
その日からしばらく、ワタルたちは休養をとりのんびりと過ごした。
***
「そういえば、この刀誰が持つ?」
休養を取り始めて1週間。
ワタルの傷も完治し、全員で朝食を食べたあと、ワタルがアニマから貰った刀を持ってくる。
「誰もいらないなら、私が貰ってもいいだろうか」
「私はいいよー」
「わしも構わんが、粛清剣はどうしたのじゃ?」
エレナはワタルが目覚めてからというもの、粛清剣を持っているところを見ていない。
「あれは復讐のための剣だった。それに、仲間の血を浴びた剣は使いたくなかったから、エリヤに渡してきた」
「そういうことなら、これはエレナが使うことでいいね」
「アニマが言うには、斬れ味もいいとのことだからな。使うのが楽しみだ」
エレナはアニマのことを呼び捨てにしているが、城でも呼び捨てにした時にアニマが、
「魔族ならば、人間の常識を押し付けては窮屈だろう。呼び捨てでいい」
と、言ってくれたのでワタル以外は呼び捨てにしている。
「ああ、そうじゃ。ワタル、あの本の解読が終わったんじゃが」
「本当! 早いね」
ワタルは城から帰ってきたその日、マリーにハラルから教えて貰ったことを伝え、本の解読をお願いしていた。
それが幸を制し、昨日解読が終わったという。
「これは呪文のようじゃな。じゃが、魔法陣が必要らしい」
「それなら大丈夫。その本と同じ部屋に魔法陣が描かれてて、メモしておいたから」
ワタルは魔法陣を描いたメモを取り出し、マリーは渡す。
「魔法陣については俺よりマリーの方が詳しいから、これは渡しておくよ」
「うむ。ちゃんと管理しておこう」
他にも何気ない日常の話を4人でしながら、今日は何をするか話し合おうとした。
その時だった。
『緊急事態が発生しました。冒険者及び王都の兵士の皆さんは、至急、北門へと集まってください』
家の中にいても聞こえる大音量で、王都中に放送が流れる。
「緊急事態じゃと?」
「よくわからないけど、とにかく行ってみようか」
ワタルがこの世界に転移してから、こんな放送は今までなかった。
なにかまずい事でも起きたのかと、4人は急いで装備を整えて北門へ向かう。
北門には既に多くの冒険者や兵士が集まっており、北門の前にはギルド職員がいる。
「皆さん、集まっていただきありがとうございます。単刀直入に言いますが、王都の北にある要塞が破壊され、大規模な魔族が王都へ向かってきています」
説明を始めたリナの言葉に、周囲の人々がざわつく。
魔族の大規模行進は今までもあったが、要塞が突破されたことなど1度もなかった。
それはつまり、今までの比ではない規模の魔族が向かってきているか、魔族の中でも実力者、つまり幹部がいるかの二択ということになる。
「魔族の規模はいつもよりも、むしろ少ないほうです。つまり、幹部がその軍にいると思われます」
考えていた二択でも、悪い方の予想が当たった。
ワタルたちの顔は強張り、同じように冒険者や兵士たちも緊張した顔持ちになる。
「皆さんには、今から前線に向かってもらい、魔族の殲滅をお願いします。馬車や装備など、必要なものはギルドが用意します。皆さんの力を貸してください」
「当然だ!」
「自分の故郷は自分で守るぞ!」
リナの呼びかけに、冒険者も兵士も口々に大声で反応する。
それからは早いもので、既にギルドが準備していた馬車に順番に乗り込み、次々に前線へと向かっていく。
「俺達も行こう」
ワタルたちも遅れないように、全員で馬車に乗り込む。
「ステータスも更新されているじゃろうし、今のうちに全員で確認しておくのがいいじゃろう」
「そうだな」
「私はステータスなんてないんですけどね」
馬車に揺られながら、マリーがそう提案し、エレナが賛成してレクシアが若干拗ねる。
だが、ワタルの頭にはハラルに言われたことが思い浮かんでいた。
「2つ……か」
ハラルは、王都に2つの巨大な力が迫っていると言っていた。
それが今回のことを指すなら、巨大な力とは幹部のことだろう。
そして2つあるということは、幹部が2人いるという意味にも捉えられる。
「大丈夫……大丈夫……」
1人でも苦戦し、命が危なくなる幹部が2人だ。
ワタルは小さく呟きながら、ステータスを確認する。
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ワタル Lv.321
ステータス
筋力:832
技量:678
敏捷:603
耐久:782
魔力:509
スキル
女神の加護
召喚【デスペリアスライム】
召喚【アンデッド】
守護
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エレナ Lv.56
ステータス
筋力:296
技量:305
敏捷:1863
耐久:293
魔力:36
スキル
人狼
加速
憤怒
怒りなどの興奮によるステータスの上昇。
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マリー Lv.39
ステータス
筋力:102
技量:184
敏捷:93
耐久:112
魔力:2302
スキル
収束
賢者
滅する者




