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運動神経がそこまで悪い訳ではない。頭が悪い訳でもない……と、思う。ただドジなのである。それは大人として、社会人としては割と致命的。つらい。
「それ、仕事が根本的に向いてないんじゃないの?」
「…………なんとか入社できた場所なので、辞めるのは、ちょっと」
「しんどくない?」
しんどいです。
ずばっと言ってくれる友人の存在は有難く、そして突き刺さる。自分でも薄々思っていただけに辛い。けれど、大学卒業間近に調子を崩した祖母の面倒を見るため新卒での就職を逃した私にはやっと得た職なのだ。
「世の中、誰もが適性ある仕事出来てるわけじゃないし……」
「咲子。それは確かに正論だけど、かといって我慢し続けて得する人はいないんだよ?」
無言になる。自分でも思うのだ。本当は私なんて辞めて、席を開けた方が、もっといい人がその席に座れるのではないかと。
「まあ、溜め込みすぎないようにね」
「無責任んん……」
「だってなんだかんだ言いながらまだ辞める気無いんでしょ? でも辛いなら他を探してもいいんじゃないの? って話。変に要領悪いんだし私が言わなきゃ誰が言ってやるの」
そう言ってコーヒーカップに口を付けた久々に会うなり諸々を問い詰め鮮やかな手際で聞き出した友人はとても澄ました顔をしていた。