第五話 彼女の力と過去
翌日。
「相変わらずここは辛気臭い場所じゃ」
「幽霊のお前が言うなよ」
蒼空は昨日幽歌に出会ったことを周丸に話し、幽歌に会うために今日は学校を休んでまで昨日幽歌が居た墓地に訪れていた。
「しかし幽歌ちゃんとやらがこんなとこに本当に居んのか?」
「ああ、アイツも昨日、今日もたぶんここに居るって言ってたし」
「それにしてはその子の気配がせんのう。気配を消してんのかもな」
周丸はいつもよりも真剣な顔でそう言う。
「気配って消せるってアイツは忍者かなんかの人種かよ」
「達人になれば、霊力や気配くらいは一緒に消せたりもする。しかし幽歌ちゃんがこのワシすら誤魔化せるってならあの子は隠れることに関しては達人中の達人ってことになるな」
「まあ色々と言ってるけど、要は幽歌を目の前に連れて来ればいいってことだよな」
「そうじゃな」
「お~い幽歌!」
しかし返事はない。仕方がない。これはあまり言いたくなかったが、出て来ないのならしょうがない。蒼空は魔法の言葉を口に出す。
「幽歌居ないのかー。貧乳の幽歌ー」
「誰が貧乳ですか!」
突然蒼空の真上にある木から幽歌が頭から出て来て、器用に体勢を整えて地面に着地する。
「……マジで出て来おったな」
「なんというか召喚の呪文に成功した気分になるな」
蒼空が周丸に言っているのを聞いてか幽歌は眉を顰めて蒼空に抗議する。
「召喚って人をモンスターみたいに言わないでください!」
「ああ、悪い。でもさお前さっきまで俺が呼んでも無視してたよな? 昨日人に面倒な事を頼んでおいて居留守はねえだろ」
蒼空が反論すると幽歌は不機嫌そうな顔から一転して、気まずそうな顔になる。
「そ、それはそうですけど、でもしょうがないじゃないですか……。私逃亡中の身ですし、色々と事情があるんです。そんなことより! もしかしてですけど、昨日霊義団は蒼空さんに私のことを尋ねに来ましたか?」
「ああ、昨日の夜に来たぜ。よく分かったな」
「ええ、まあ気配は感じていたので。ちゃんと私のことを隠してくれましたか?」
確認するように幽歌は訊ねる。
「そのことで今日は話がある」
「どのようなお話ですか?」
蒼空が昨日幽歌と別れた後に白凪から聞いた話をそのまま伝え、周丸のことも紹介する。
「つまりあなたが私に取り憑かれる予定の人間ってことですか?」
「そういうことみたいだな」
「…………じゃあ蒼空さんはあの史上最強の幽霊と言われた『海雲の魂』を身に宿している人間なんですか?」
「……ああ」
蒼空は頷く。
沢崎蒼空は普通の霊能者ではない。そのため多くの悪霊に狙われている。理由は蒼空の体の中には史上最強の幽霊と言われた海雲の魂が宿られているからだ。
海雲は蒼空が生まれると同時にある悪霊に破れ、自分の体である『霊体』は滅びた。しかし魂だけは一時的に残り、そのまま魂も消滅してしまいそうになるが、その魂は生まれたばかりの蒼空の体に吸い込まれるように入り込み、海雲の魂は消滅を免れた。
海雲の魂が存在しているということはいずれ海雲がなんらかの形で復活する可能性があるということになる。そのせいで蒼空は本人が知らない内に霊界では『海雲の魂』を身に宿す人間として英雄扱いされるようになっていた。だが海雲の復活する可能性を恐れて多くの悪霊たちが蒼空を狙うようにもなる。
そしてその『海雲の魂』を宿す沢崎蒼空を守るために周丸は蒼空に取り憑いているのだ。
「蒼空さんがあの有名な……。とてもじゃないですけど信じられませんね」
「有名って言っても名前だけだし、知らねえのは無理はねえよ。それに俺だって未だに信じたくねぇよ。一体どこの厨二病設定だって話だ」
信じられないみたいな顔をしている幽歌に蒼空は言う。
「うーん……」
「なんだよその不満気な顔は」
「なんかイメージと違います! 私の中では『海雲の魂』の主の人はきっとすごい強くてカッコイイ英雄で、『海雲の魂』の主を守る周丸さんっていう人もきっとものすごいカッコイイんだろうなって憧れてたのに……。それがこんな頭のハゲたおじいさんとちっちゃい中学生だったなんて。……嘘つきです。はぁ」
蒼空と周丸によほど憧れていたのかその憧れの実体を知った幽歌は心底ガッカリしている。
「おい人の顔見てため息吐くなよ。残念そうな顔もすんな。それに俺はちっちゃくない!」
「そうじゃ。チビでアホの蒼空はともかくワシは幽歌ちゃんの想像以上のナイスガイじゃろうが!」
「そうですね。ある意味お二人は想像以上です。特に蒼空さんは私の想像の遥か上を行っていました。主に身長で。あっこれじゃ想像の下って言った方が正しいですかね?」
「どういう意味だコラ!」
蒼空は幽歌に抗議するが、
「あっ綺麗なお花が咲いてる!」
抗議を無視して幽歌は花が咲いている方にトコトコと歩いて行く。
「無視すんなぁぁぁぁぁぁ!」
そんな幽歌の態度を見て周丸は、絶叫で突っ込みをして疲れて息を荒げている蒼空に話しかける。
「おい蒼空、なんとなくこの子神に似とるな」
「はぁはぁ……。やっぱそう思う? 似てるよな人の話を聞かない所とか、胸のサイ、」
ドガッ!
胸という単語が飛び出した瞬間、蒼空の頭にそこそこ大きな石がかなりの球速で直撃した。蒼空は一瞬気を失いかけたが、なんとか復活する。
「なんつーことしやがるんだこの鬼畜女!」
幽歌は素知らぬ顔でとぼけた声を出す。
「あらら。なぜか知らないけど体が勝手に動いちゃいました。いけませんねぇ。もしかしたら悪い幽霊にでも取り憑かれちゃったのかもしれませんねー?」
「てめぇ今すぐそのふざけた口をぶっ閉じれや! あれか? お前は貧乳と言う個性だけじゃ飽き足らず暴力ゴリラ女も付け加えてぇのか」
その言葉でさっきまで朗らかな表情だった幽歌の顔つきが変わる。
「また……。あなたはまた貧乳と言いましたね。しかも女の子にゴリラとも?」
「あんだよ? 本当のことじゃねーか貧乳ゴリラ。第一女の子なんてどこに居るんだよ。ここには男二人と……あっ一匹メスも居たわー」
蒼空は挑発するような声で幽歌を怒らせる。
「このチビ! 小学生!」
「小学生言うな! 胸薄!」
「うるさい! バカアホバカ!」
「バカって言った方がバカだからな。ゴリラゴリラ!」
「じゃあゴリラって言った方がゴリラなんです! チビバカゴリラ!」
「なんだとてめぇ」
「てめぇとはなんですてめぇとは!」
二人は昨日と同じ様に睨み合いながらお互いの短所を言い合い、口喧嘩が始まる。
それを見ていた周丸は話が進まないので、二人の耳元に腕を持って行き、
「やめんかバカタレ共」
蒼空と幽歌の耳たぶにデコピンを炸裂させると、蒼空と幽歌はたちまち蹲って悶絶し始めた。
「っ~。痛てーな。あーくそ今ので耳腫れたかも。なんてことしてくれるんだこのじじい!」
「そうですよ。私の耳も腫れちゃいそうです。女の子に手を出しちゃいけないんですよ。お父さんに習わなかったんですか!」
二人は息を揃えて周丸に文句を言うが、周丸は特に気にした様子もなく耳をほじって、
「うんそうじゃのう。気持ちは分かったから一つ幽歌ちゃんに聞きたいことがあるんじゃが?」
軽く流しながら幽歌に話を振って来た。
「…………私に? どんなことですか?」
「うむ。昨日白凪が言とったんじゃが、幽歌ちゃんには特別な力があると。その悪霊にも狙われる程の『特別な力』とは一体なんじゃ?」
周丸の言葉を聞いて蒼空も今日の目的を思い出す。幽歌に会いに来た理由は昨日白凪に聞きそびれた幽歌の特別な力とは何かと聞き出すためだった。
「特別な力……、ですか?」
特別な力と聞くと、幽歌は顔を曇らせる。
蒼空は幽歌が昨日と同じ悲しい表情になるのを見て思わず、
「別に言いたくないなら言わなくてもいいんだぞ」
さっきまでケンカしていたくせに幽歌を気遣うように言葉をかけてしまう。
すると幽歌は弱々しく笑う。
「いえ大丈夫です。あなたたちは変な人たちみたいですけど、悪い人ではないのはなんとなく分かりますし、それに蒼空さんには一応霊義団に私のことを黙ってもらった恩もありますからね。いいですよ私の力のことをお話します」
幽歌はそう言うと軽く息をつき、語り出す。
「私は他の幽霊や霊能者たちよりも遥かに多くの霊力を持っています。霊義団の話によれば無限に限りなく近い霊力量だそうです。そしてその霊力を一時的にですけど、他者に与えることが出来ます。……とは言ってもまだ私はこの力を自由に扱うことは出来ないんですけどね」
「無限……? なんだそれ。マジで言ってるのか?」
「……ほーん。それはなかなかとんでもねえのう」
幽歌の力の正体を聞いて蒼空と周丸は心底驚く。
『霊力』とは人間も加える動物が本来持っている力だが、霊能者や幽霊などと限られた者たちにしか扱えず、霊力を使えば白い気体が使用者を纏い、人間の持っている力や速さを何倍にも強化することが出来たり、鎧などの役割にもなって使用者を守ることも出来る。
さらには『霊術』という不可思議な術を使うにも必要な力である。この霊力のおかげで蒼空は今まで数々の悪霊に襲われても生き残ることが出来た。
もちろん霊力にも限りがある。霊力を使い切れば回復するまでは霊力は使えないのだが、莫大な量の霊力を持ち、それをしばらくの間他者に与えることが出来る幽歌が居れば、霊力は即座に回復出来る上に与えられる側は自分の持っている量以上の霊力を纏うことが出来る。
もしもその『力』を持っている幽歌を悪霊たちの大きな組織が手にすれば、無尽蔵の霊力というエネルギーを手に入れられるのと同じ。そうなれば霊界だけではなく人間界までも悪霊たちに支配されてしまうかもしれない。
幽歌の話が本当なら、幽歌は海雲の魂を持つ蒼空以上に間違いなく貴重で危険な存在に入るだろう。
「なあ? 力を自由に使えないってどういうことだよ?」
蒼空は幽歌が言っていた言葉に引っかかり、詳しく突っ込んで聞いてみる。
「言葉通りです。私はこの力を自由に扱えません。過去に数回だけ使ったみたいですが、私にはその力を使った記憶もありません。だからこんな力本当にあるかどうかも怪しいものです。当然お二人に今私の力を証明することだって不可能です」
「たった数回? そんだけでお前は悪霊たちなんかに狙われてんのか?」
「ええ。でもしょうがないんです。これは私の報いなんですから」
幽歌は自虐的に笑いながら言葉を続ける。
「……こんな力のせいで私は多くの人を殺して来たんですから」
「………………」
蒼空は幽歌の言っていることが理解出来ないでいた。
多くの人を殺して来た? 確かに幽歌は口が悪くて、理不尽な暴力を振るって来るムカつく女だが人を殺す奴ではないと蒼空を思っている。
事実幽歌は自分のことを悪霊じゃないと言った。
蒼空がそうして考えている間にも幽歌は昨日と同じ様に蒼空たちの元から去ろうとしている。
「待て。どこに行こうとしている」
周丸は強く制止の声を出す。
「別にこの辺の近くに移動するだけです。ここのお墓はかなりいい隠れ場所ですからね。あと蒼空さんに取り憑くのもお断りします。……私は一人の方がいいから。私が一人で居れば誰かに迷惑をかけることも、悲しませることもありませんから」
そう言う幽歌の表情は今にも消えてしまいそうだと蒼空は感じた。
幽歌が再び背を向けた時、蒼空は昨日から思っていたことを口に出す。
「寂しくないのかよ?」
幽歌は蒼空の方へと顔を向ける。その顔に表情はなかった。透明にすら見えた。
「お前がさ、俺に取り憑きたくないってのは分かるけど、なんで霊義団にも頼ろうとしないんだよ。霊義団に保護されていれば悪霊から追われることもなくなるし、何より一人じゃなくなるんだぞ。なのに、なんで霊義団から逃げるんだよ。一人になってまで逃げる必要があんのかよ。お前は寂しくないのか?」
「…………」
幽歌は寂しくないのかという問いに答えない。代わりに他のことを話し出す。
「私にとって一つ同じ屋根で暮らす人はそれはもう家族みたいなものだと思います。もしも霊義団に保護されたり、蒼空さんに取り憑けば、悪霊からも追われることはなくなるかもしれません。それに楽しい家族が出来るかもしれないですね」
でも……と続け、幽歌は決意した顔で言う。
「私に家族はもういらない」
その声まるで何かに決別するように蒼空には聞こえた。
それから幽歌は蒼空たちから逃げるようにどこか走って行ってしまい、蒼空は幽歌を捜したが、蒼空には幽歌を見つけることが出来なかった。周丸は幽歌を捜すのを協力してくれなかったので仕方がなくそのまま家に帰ることになった。
「…………」
蒼空は家で座りながら寛いでいる周丸を無言で睨みつける。周丸も蒼空の視線に気付く。
「どうした蒼空? さっきから黙って、うんこでも漏らしたか? そう思うとお前うんこ臭せえのう」
「漏らしてねーよ! 臭くもねえ! お前が幽歌を捜すの手伝ってくれないからムカついてんの! お前ならすぐに引き留められただろ!」
「なんじゃ? お前幽歌ちゃんに取り憑いて欲しかったのか? 確かにワシとしても可愛い女の子は一家に一人欲しいとこじゃが、強姦はいかんと思うぞ。和姦こそがハッピエンドの第一条件じゃと思うんじゃ」
「幽歌を通販番組の商品みたいに言うな。つか強姦ってなんだよ? 和姦ってなんだ? 殴り飛ばすぞ」
「えっ? 今肉便器って言った?」
「言ってねえ! 絶対に確実に言ってねぇよ!」
デカい声で蒼空は周丸に怒鳴りながら突っ込みを入れる。そんな蒼空を見て周丸もおどけた声から低い声に変わり、蒼空に問う。
「じゃあ捜してどうする? 幽歌ちゃんを見つけてどうする?」
「それは……」
蒼空は口ごもるが周丸は問うのをやめない。
「お前はあの子を見つけてなんて言うつもりなんじゃ? 取り憑いてくれとでも言うつもりか?」
蒼空は少し間をとって周丸の問いに答える。
「別に俺はあいつに取り憑いて欲しい訳じゃねぇよ。取り憑かれるだなんて周丸だけで充分だよ。ただ……」
「ただ、なんじゃ?」
周丸は立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら聞いてくる。
「ただ俺はあんな悲しそうな顔の奴を見ると、ムカつくというかどっかで見たことがある気がしてほっとけないんだよ」
蒼空が答えると周丸は呆れた声で笑い出す。
「……お前は昔から変わらんのう」
「変わらんって何がだよ」
「ちょっと気になる奴が居たらほっとけないとか言って、人一倍ビビリで弱くてすぐに逃げ出すくせに、すぐに首を突っ込む身の程知らずのとこがじゃ」
「そんなこと言ったってしょうがないだろ! ほっとけないもんはほっとけないんだよ。俺だって危ねえこととかこえーことなんて意地でもやりたくねえさ。でも……」
でもなんだろうか。自分の言いたい言葉が見つからない。
蒼空が言葉を探していると周丸は蒼空の隣に座り、諭すように声をかける。
「別にそれが悪いと言ってんじゃねえ。むしろその余計なお節介がお前の唯一の長所じゃ」
「唯一な長所って……しかも余計なお節介って全く褒められてる気がしないんだけど?」
「お前の長所はともかくとして、幽歌ちゃんは結構重そうな過去を持ってそうじゃのう」
周丸は缶ビールをグラスに注ぎながら幽歌のことについて話し出す。
「確かにな。幽歌の過去については白凪とか神に聞くのが一番手っ取り早いんだろうけどさぁ」
すると幼い少女の声が蒼空たちの元に聞こえてくる。
「あれ? 今、アタシのこと呼んだ?」
そこには神が赤い顔して沢崎家の冷蔵庫に入っているはずの缶ビールを飲んでいた。
「おおっ神! 丁度いい所に――ってなんでお前ここに居んの!?」
「なんでって? それはアタシが神だからじゃないの?」
「そんな意味不明な電波発言は求めてねぇよ!」
「そうじゃ!」
蒼空に賛同するように周丸も神に訴える。
「そのビールはワシのもんじゃ! 返せ泥棒!」
「突っ込む所違う! ビールよりも大事なことがあんだろうが! 神、お前いつからここに居んだよ?」
「えっと……蒼空がうんこ漏らして臭くなった所から」
「だから漏らしてないし、臭くもないっ! てか最初から居んじゃねぇか!」
「ハハ、すごいでしょ。アタシすごい!」
神は自慢気に笑う。見た目は子供だが、中身は完全に酔っ払いのおっさんである。
「何しに来たんだよ?」
「何しにってあんたらのために幽歌ちゃんの過去話をしようと思ってね。あんたたちもなんか幽歌ちゃんに会ったみたいだしねー。どうせならあの子の過去の再現ドラマをお送りしようかなと思って」
「再現ドラマ?」
蒼空が疑問の声を上げると、神はニコヤカに笑う。
「そうよ。蒼空も幽歌ちゃんの過去とか気になってる頃かなと思ってさ。彼女を保護した際に霊術で彼女の記憶を見て、そのままその記憶をコピーしてちょっと特別製のディスクに重要な部分だけ編集してデータとして残したのよ」
神はなんでもないかのように言って、そのディスクを蒼空たちに見せる。
「割と趣味の悪いことしてるのうお前も。だが察しがいいじゃねえか。しかもワシらが幽歌ちゃんに会ってんのに気付くとはさすが霊義団の団長と言うだけのことはある」
周丸は缶ビールを飲むのをやめて、神の方に視線を移す。
「まあね。アタシは神だから! そんなことより蒼空、正座」
神はふざけた声で指示しながらも、表情だけは蒼空が見たことがない険しいものになる。
「お、おう」
蒼空は神の表情に普段のギャップを感じ、戸惑いながらも神に従って、正座すると神は沢崎家のリビングにあるDVDプレイヤーの前に移動する。
「じゃあ今から幽歌ちゃんの過去の記憶を映像として見せるけど、周丸はともかく蒼空アンタは覚悟出来てる? ちょっとグロテスクな内容も一部混じってるけどさ」
確かめるように神は聞く。
「……ないと言えばないけど、それでも見る」
蒼空は決心した声で答える。
「じゃあ見せる。……幽歌ちゃんにも昔家族は居た。でもその家族は壊れてしまった。あの子のせいで」
神はそう語り、ディスクをそのままDVDプレイヤーの中に押し込むと映像は流れ出した。