01 欠点を探す程
振仮名だらけです。
読みにくければ改善策を考えます…
DCPは特殊なゲームである。
キャラクターメイキング等の初期設定は仕様上必要なく、ヘッドギアを頭に装着し、電源を入れる事で直ぐにその世界に入る事が出来る。
また、このゲームの目的は「悪者の討伐」ではなく「平和の維持」である。
多少のストーリーはあるものの束縛は一切無く、自由度の高さも評価に繋がっている。
そして、最大の特徴と言えば主人公が魔物である事だろう。
従来の、人間キャラや操作性のほぼ同じ人型の魔物も存在するが、矢張り種族によって操作が異なる多種多様のロマン溢れる魔物達が人気を集めていた。
そんなゲームの謳い文句をパソコンのモニター越しからマジマジと見つめる女性が1人。
名を「春夏秋冬 花」と言う。
彼女はゲーマーと呼ばれる程の実力も知識も持たない、いわゆるゲームを楽しむ人だ。
単純に意外性とのんびりとした雰囲気に心惹かれ、プレイする前に事前情報を簡単に集めていた。と言うのが現状である。
PCの脳味噌は最新。綺麗に映像を映し出す為の部分と容量の基準はオタクの友達に確認して貰ってクリアしている。
VRヘッドギアは要求スペックが其れ程高くないので、事前に購入していた物を使えば良い。
後は、公式サイトにてゲームをダウンロードするのみなのだ。
彼女は高鳴る胸を抑え、カーソルを合わせてダブルクリック。
画面に表示された円が紫一色に染まるのを今か今かと待ち続ける。
キャラクターはランダムだと聞いているが、本人が「苦手だ」と思っている生物に関しては脳信号を受理したAIが避ける様にプログラムされているのだとか。
不死族系は苦手なので、ならない事に安心しつつどんなキャラになるのかワクワクしながらスタンバイ。
お水も飲んだ、ゆで卵とトマトを塩振って齧ったし、トイレもシャワーも済ましている。あ、鍵閉めたっけな?と脳裏にふと思い浮かぶ。
確認の為、ビーズクッションから跳ね起きて、スリッパをパタパタと鳴らしながら小さなマンションの一室を駆け回って、序でに吸引ゼリー状栄養食材も飲んでおいた。
「お、スタート!!」
飲んだ物をグシャリと潰し、ゴミ箱に3ポイントシュートしたのを確認したら、直ぐ様自室に戻る。
いつの間にかダウンロードが終了し、デスクトップに表示された小さなドラゴンと少女のアイコンをダブルクリック。
ヘッドギアを直ぐ様装着し、飾り気のないベッドにダイブ。
これから冒険が始まるのだ。
何をしようか、まずは普通にストーリーを楽しんでみようかな。
そう考えている間に意識はどんどん遠退いて行く。
部屋は、小さな寝息しか聞こえなくなった。
「初めまして!アルバロニオンにようこそ!」
幼さの残った高い女の子の声が転移酔いした頭に響く。
頭を抑え様にも体が思う様に動かない。
いや、地面にへばり付いたまま動かない。
失礼だとは思うが、そのままの体勢で声のした方に顔を向けた。
其処には、
「私の名前はティティラ!貴方の名前は?」
満面の笑みを向ける美少女が1人。
髪は濃紺の肩甲骨程まであるフワフワしたセミロング。毛先をゴム紐で纏めている。
瞳は蒼玉の様に美しくキラキラ輝く大きな青で、若干吊り目。雰囲気から元気の光が溢れ出て少々眩しい。
背格好は小学生程だろうか、110センチ程。
飾り気の無い、生地が薄め且つあざとさが感じられない民族衣装が可愛らしい。
そんな少女が頬を赤く染め、笑窪を作って彼女の顔を覗き込んでるのだ。
可愛らしいが、正直な話100人中99人が戸惑う。
「えっ…と…?」
「エット?貴方の名前はエットさんなの?」
「ごめん、其れは止めて。」
わざとでは無いと思うが、流石にエットさんと呼ばれるのは嫌だ。
と、苦笑いをする彼女。
だが、各ゲーム別々の名前を付ける主義。彼女は特に名前など考えていなかった。
「もしかして、名前無いの?じゃあ、私が付けてあげる!!」
胸を張るティティラ。
私に任せろと言わんばかりのドヤ顔で鼻息をフンスと鳴らす姿は微笑ましい。
が、彼女。と言うよりゲームフリークのネーミングセンスは心配な所。
「ん〜…じゃあ"リコリス"!!」
へえ、意外にまとも。
花の名前だし方向性としては有り、かな?
然し"彼岸花"、
と1人ゴチる。
花自体は綺麗だし、花言葉も嫌いじゃあない。
だが、死を連想させる花と言うのは如何も気に食わない。
ゲームで云う「死に戻り」を連想するから尚更である。
まあ、他人任せに決めて貰った名前にケチ付けるつもりはない。
「よろしくね!リコリス!!」
そして向けられる笑窪の有る満面の笑み。
「ティティラちゃん犯罪級の可愛さ。娘居ないけど欲しくなるわコレ。」と、現実世界が鼻血で真っ赤に染まっていないか心配になる程。
改めて、
此処は既にDCPの世界だとして、彼女が疑問が多数存在する。
まず考えたのが
①リコリス自身の操作キャラ
と、
②ティティラの存在
早速①から考えるが。
DCPと言うゲーム自体特殊で、操作キャラは必ず人外(エルフやドワーフと言った人間に近い種族やマーメイド、ケンタウロスなど部分的に人間と同じ種族は除外)となっており、DCPの世界を楽しむ主人公となる。
先程も説明した通り、本人が苦手と思っている生物に関しては除外されるシステムが有るので其方の心配はないが、キャラクターの可愛さによってはモチベーションの変動が起こるのだ。
VR故に必然的に一人称視点になるが、視界の端にチラチラ映る自分の身体を見ればやる気も変る。
エンジョイ勢としては性能に拘るよりは見た目に拘りたいのだ。
で、彼女は今でも動かない身体をそのままに、実際の身体を首をぐるりと回して観察する。
まずは真下。蛇腹模様の凹凸のあるクリーム色のお腹。前足や後ろ足付近は筋肉が盛り上がっており少々不恰好である。
側面は焦茶色の硬そうな甲殻がびっしりと覆い、体のこの重さも頷ける。
背中は刺々しく、其れが背骨に沿って長く太い尻尾迄続いていた。何故か、ペンキに突っ込んだのか尾の先が紫色になっている。
前足は細く長い。まるでコウモリの様な翼膜がオマケで付いており、如何見てもこの体では飛べる気がしない。
後ろ足を例えるとティラノサウルスだろうか?超重量を支える2本の足は逞しく、金属バットで殴ってもビクともしなさそうな強固さを醸し出している。
そして、極め付けにキリンも驚愕する長い首。400度位回った。轆轤首か、と心の中で突っ込みを入れるリコリスであった。
「可愛くは、ないかな。」
誠に残念である。
顔が見えないので何とも言えないが、如何頑張ってもカッコいい系。
正直、其方の方向性は求めていない。
確かに、「翼があったら空を飛べるのか」と不意に思った気がしなくもないが、イメージしていたのはモッフモフのキュートな鳥さんであり、こんなおデブで鈍重なフライング大蜥蜴ではない。
まあ、気にした所で仕方がない。
このキャラの詳細はログアウトしてからちゃんと調べるつもりである。
主に、飛べるかどうか。
では、次に②に付いて考察する。
見た感じ、此処は街の中央広場。先程後方に大きな石碑が目に入ったが、確か先程ティティラは「アルバロニオン」と言っていた気がしなくもない。
では、彼女はこの街?の案内人か何かなのだろうか。
いや、道行く魔物と一緒に同じ年頃の少年少女が歩いている。
恐らく、彼女がリコリスの『異なる共存者』になるのだろう。
「ねぇ、ティティラ。」
「なぁに?」
「ティティラの事を教えてくれるかな?」
かなりアバウトな質問な気がしなくもないが、リコリスからすれば彼女はナビゲーターかつ情報源。
どんな些細な情報でも欲しい。と言う意味だが、
「……えっと?」
伝わる訳がない。
幾らAIの技術が進歩しようと、超能力を扱える様になった訳ではないのだ。
如何でも良いが、ヘッドギアを装着しているので、思考を読込む事は可能らしい。が、プライバシーに関わる事から法律で禁じられている。
まあ、血液型占いを信じている訳では無いが。言葉が足りない典型的なAB型の、弩級変態思考をAIが大事な部分を読み取る事は半永久的に有り得ないので安心して欲しい。
と、云う訳で言い直しを行う。
「ごめんごめん、ティティラは私のパートナーで合ってるかな?」
「うん!私10歳になったからリコリスを呼んだんだ!リコリスは何処から来たの?ユルートレピア?エリシュガリオン?」
彼女は戸惑う。
出身国設定など有るのだろうか?
ユルートレピアもエリシュガリオンも聞いたことがない地名。かと言って日本と答えるのも世界観を損ねる。
「ゲームに現実を持って来たくない。」と云う、如何でもいい柵が無意味にリコリスの邪魔をする。
結論が出ないまま「ぬぬぬ…」と頭を抱える始末。
「あ、もしかして『次元の向こう』から来たの?」
其れだ!
「うん、そう…かな?」
取り敢えず肯定。でないと話が進まない。
「わぁぁーっ!!次元の向こうから来たヒトは皆んな強いから呼べた子は皆んなラッキーなんだ!!」
そう手放しで喜んで貰えるのは嬉しいが、生憎私は強さを求めないのんびりプレイヤーなので、彼女の期待に添えるかは謎。正直申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「って私が質問責めにあって如何するのよ!」
「?」
ふと我に帰る。
質問していたのはリコリス自身だったのだ。
いつの間にか情報を搾取する側がされる側になると云う。
今使わずにいつ使う「恐ろしい子…!」を声を大にして叫びたい衝動に駆られた。
しないが。
それは兎も角。
良いタイミングで流れを切れた。
此の儘こっちから質問責めをしてやろう!と意気込むリコリス。
然し、気付いていない。
戦地に赴く表情で天を睨む彼女だが、対する相手が味方と云う事に。
「ねえ、此れから如何すれば良いのかを教えてくれる?」
まずは目的。
ゲーム故に存在すると思われるチュートリアルを熟したい。
DCPの性質上、人間には本来存在しない部位も存在する訳で、その類の操作説明など有っても可笑しくはないと思っている彼女。
流石に放り出す事はしない事を願いたい。
「あ、そうだね!まずは協会に登録をしないといけないんだ!直ぐ近くだよ。詳しい事は移動しながらにしよ!」
ティティラが、リコリスの巨体の周りを無意味にピョンピョンと跳ね回る。
すると、ふと身体が軽くなったかの様に伏せられた図体が立ち上がった。
如何やら、見えない力で強制的に動かない様にされていたらしい。
然し、結局主導権は持って行かれてしまった。
もう取り返す気力すら残っていない。
もう過去の事だ。今はティティラの言う通りに移動してそれから考えよう。
と、諦めの領域に至ったリコリスだが、身体が思い通りに動く様になってからは、沈んでいたテンションが一気に上限を張ち切れた。
「おおぉぉぉおおおおっ!!」
鈍重な体は、先ほどまでの様な重さは一切感じさせない。
此の儘空へ飛び立てる気がしなくもない。
いや、行ける気がする。
「街で勝手に飛んだら怒られるよ?」
「ふぐっ。」
テンションと共にはたき落された。
一先ず、此処はティティラの言う通り協会へと歩を進める事にする。
意外にも後ろ足で二足歩行の様で、翼膜の付いた前足は飽く迄も支え。
ちゃんと人間が歩く感覚で其の儘歩く事ができた。
因みに、重心は首や尻尾の位置を考えなければならないが、ポッチャリフライング蜥蜴の骨盤付近。
強靭な恐竜の足によって支えられている為安心感はとてもあった。
でだ、
「其の協会は何をする所なの?」
「んとね、私達みたいな『種の異なる者』を助けてくれる所だよ!」
「でぃふぁれんさー?」
「うん!私達みたいに動物と魔物のパートナーの事を『種の異なる者』って言うんだ。」
成る程。このゲームでは捕獲されてる訳でも、召喚された主従の関係ではないから『種の異なる者』なのか。
と、納得するリコリス。
確かに従者として扱われるのは、ゲームとは云え嫌な事は確かで有る。
と、説明される間にも協会と呼ばれる場所に到着。
ティティラの明言通り直ぐに着いた。
今更だが、このDCPの建物は全てデカい。
リコリスも含め、巨大な魔物が多者入れる様に設計されているのだ。
1フロアの高さが5メートルは在るだろう。
そして、そんな巨大怪獣達を大量に収めれる協会。
入口も人間から見れば完全に城門である。
少女体型のティティラが通れば其の大きさが際立って見える。正に人がゴミの様だ。
まぁ、実際中も人混みの嵐だった訳だが。そんな事は如何でも良い。
リコリスは其の巨体を入り口で棒立ちにしている間にも、慣れているのかティティラはススっと文字通り魔窟を掻き分け、高さ別に有る物の中の一つ。人間用サイズのカウンターへ。
如何やら、中に入る勇気のないリコリスの為に人を呼んでくれる様だ。
至り尽せりである。
「ったく。幾ら初めてだからってこういうのは今回限りにしてくれよ。」
そして、一緒に出て来たのはティティラと同じ位の身長なのに、横幅は3倍。
頭も髭もモジャモジャの叔父さんである。
「ドワーフ?」
「とも言うな。地妖のグラシオって名前で、協会のサポーターをやってる。今回は結局外に出たからだが、次からは種の異なる者一緒に来てくれ。」
「あ、すみません。グルァシオさん。」
「グルァシオじゃねぇ。グラシオだ、気を付けろ。じゃあ裏の訓練所に行くぞ。質問なら途中で聞いてやろう。」
そう一言述べると、グラシオは身を翻しズンズンとガニ股で協会の建物沿いに歩き出す。
慌てて追い掛ける2人。
意外にも、短足なのに速かった。
「っと、そういやアンタ『次元の向こう』の奴なんだってな?」
思い出したと言わんばかりに、
「嬢ちゃんが言ってた。」とグラシオは瞳だけを此方に向けて話し掛けてくる。
「そうですけど、何か問題があります?」
「んにゃ。この世界の事とかワカンねぇだろうから説明要るかな?とね。」
「あ、そうですね。お願いします。」
「ういよ。まずは何処から話したもんか。」
と、まあプロローグの様なモノ。ゲームの広告であった獣魔戦争やら、少女と子竜の話やら云々かんぬんを長ったらしく語られた。
知ってる話だった。
聞かなきゃ良かったとも言う。
後にスキップ出来た事を知るのだが今は如何でも良い話。
「うし、着いたぞ。」
絶対に協会を3周はしてる距離を歩かされ、到着したのがコロッセオを思わせる巨大な闘技場。
勿論だが活気は皆無である。
「此処で何をするんですか?」
「んあ?そりゃ勿論自衛の為の指導だ。聞いてねぇのか?」
聞いてないし、誰も言ってない。
巨体に似合わず草食系な大蜥蜴は、間抜けな面を晒す少女と共に首を傾げる。
如何やらティティラには伝達ゲームも出来ないらしい。
「まずは方向性を決めるぞ。戦闘はガンガン行きたいか?其れとも苦手だから物作りの方を極めたいか?」
「後で変更はできますか?」
「大変だが出来る事は出来る。が、生産職はレベル上げや素材集めが大変だ。強い武器や防具を戦闘職より早く身に付けられるが、其れはまともに働いてりゃ金持ちの戦闘職が買えば済む事だ。のんびりと楽しむ程度なら何方を選んでも良いだろう。」
「じゃあ生産方面で。」
「ほいきた。」
リコリスは深く考えずに答える。
するとグラシオは、何やら闘技場の控え室らしき場所から様々な武器を一度に持ってくる。
計6種類。其れは剣、槍、斧を大小2つずつだった。
「『次元の向こう』には無いらしいから、そっちの感覚はわからんが、こっちの世界では空きっつーもんがある。其れは生き物の種類を問わず計10だ。其処に技術、必殺技っつーもんを入れる事で特殊な力を使える様になる。」
「はい。空きが10に、技術。必殺技ですね。けど、生産方面で武器ですか?」
「お前は相方に全部の戦闘を任せるのか?武器を持って立ち回れるだけでも相方の負担はグッと減る。守りながら闘うのなんぞ命がいくつあっても足りんぞ。」
このゲーム。一部アイテムの取得や譲渡、売買にレベルの制限が掛かっている。
更に、戦闘貢献度面で一切役に立たない寄生虫には、経験値が入らない仕組みになっているので、最低限の戦闘系技術を有さなければならない。
「理解しました。けれど、この世界に魔法の類が存在すると聞いているのですが。」
「うむ、其れはなのだが、魔法を扱える様になる必殺技の1つ、例えば『火術』は通常ならば1つの枠で事足りるモノを2つ分消費するのだ。更にこれ単体では単純な火を出したりする程度の事が出来ず、『上位必殺技』と呼ばれる強力な攻撃を空きに埋めなければならない。つまり魔法を使いたいならば其れに特化した方向性で無ければ只の器用貧乏になってしまう。」
途中で内容を察してしまったリコリスは、ふと気になってティティラをチラ見した。
地面にお絵描きしていた。
「…要は戦闘力も生産能力も中途半端になると。」
「そうだな。だから適当な武器技術と必殺技を1つずつ持っておく程度に留めておく事をお勧めする。幸い、飛竜は火力には申し分ないからな。」
「ワイバーン?」
「ん?自分の事だろう…っとそうか知らないのか。此処よりもずっと遠くに住む強力な魔物だ。尾に猛毒を持ってるぞ。」
このペンキは毒か。
と目線をチラリと後方に。
尻尾も鼻先まで近付けてマジマジと見て見たが、臭いだけだった。
尚、子猫の様に追っ掛けてクルクル回ったりはしていない。
断じてしていない。
グラシオの顔を、リコリスは見る事が出来ないが。
「っと…脱線したな。攻撃面では問題ない。好きな武器を選んで良いぞ。」
「えー…大小の違いは?」
「火力と隙だな。飛竜は体力も敏捷も高めだから、文字通りにどれでも良い。能力を見ながら気楽に考えろ。イメージすれば見れるぞ。」
グラシオの言葉に従い、リコリスは頭の中で強く念じる。
すると、
生命 100%
健康 100%
持久 100%
瞬発 100%
魔力 100%
筋力 9
体力 14
敏捷 11
反応 6
器用 5
知識 11
精神 7
知恵 8
集中 5
魅力 4
◆毒攻撃(限定) Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
◇ーーー Lvー
と。強いのか弱いのか分からない能力が現れる。
10種ある数字がこのキャラの強さ。恐らく、上5つが近接攻撃に関わり、下5つが魔法攻撃に関連するのだろう。
リコリスは魔法は使わないので下5つは「こんなもの有るんだ」程度に留めて、上5つを考察する。
体力が14と高く、敏捷も11。
10が基準値ならば9である筋力もぼちぼちだろう。
反応と器用は…
反応
回避行動、防御行動に移行する速さ、敵の反撃成功判定時間の縮小、道具消費後の隙の短縮に関わります。
また、完全回避や完全防御の判定が長くなります。
器用
攻撃行動から待機状態に移行する迄の時間を短縮します。
敵防御時の追加ダメージの上昇。防御時や反撃時のダメージ軽減に関わります。
また、アイテム使用中や効果発動迄の隙の時間が短くなります。
リコリスはふと思う。
「私隙だらけじゃん!」と。
因みに、
筋力は攻撃力や攻撃行動のミス判定。
体力はダメージそのものの減少や、身体系状態異常のダメージ、効果関係。
敏捷は移動や攻撃速度に関わっていた。
速くて硬くて一発の威力が高いだけで、攻撃後は隙だらけ。反撃への耐性は皆無。
正直、勝てる気がしなかった。
然し、武器を持たぬ訳にはいかない。
武器を持たなければ必然的に魔法攻撃に。
近接面よりも貧相な能力になるのだ。
似た様な能力対応ならば尚更である。
ならば、隙が更にデカくなるが一撃必殺の威力が高まる大きい方か。
安定では有るが、反撃のリスクが上がる小さい方か。
ティティラに戦闘面は依存する形になるので、できれば邪魔にならない様な方が良い。
そしてふと思う。
ティティラの能力や空き構成はどうなっているのだろうか。
寧ろ、主軸をサポートする戦い方をするのが良いのでは。
「ねえティティラ?」
「ふぇ?!」
つい先程まで地面を向いていた視線をティティラに向けると、口から幸せそうな涎を垂らして舟を漕ぐのを見てしまった。
一瞬で取り繕われたが、我に返った瞬間目が合ったのだ。
綺麗な2度見を目撃してしまった。
まあ、其れは関係ない。
今リコリスは物語が始まる前で躓いているのだ。
全てはティティラに掛かっている。
大事な所で寝てたが。
「ティティラ。貴女の空き構成参考迄に教えてくれない?」
「う?」
一先ずは把握が大事。
然し、コミュ障の願いは届かず、何故かティティラは惚けるばかり。
これはもしやリコリス自身が空き構成を決めてから、其れの穴を埋める様に偏りのあるランダムで決定するのでは無かろうか。と、直感が彼女の脳内を過ぎる。
仕様ではあるだろうが、大事な所でも運頼み。
ティティラには、全部任せるのは不味い気がする。
そう何故か思えてしまった。
「…コレにします。」
結局、悩みに悩んだ末にリコリスが手に取ったのは、飾り気の一切無い無骨で大きめのハルバート。
選んだ理由だが、能力を詳しく見ると、弱点と云う欄があり、リコリス自身である飛竜が『打撃』。つまりは斧攻撃に弱い事が分かったのだ。
単純に同種戦くらいは強くなりたい。
と云う如何でも良い内容。
尚、この選択が大正解で合ったことを知るのは、かなり先の話。
「良いだろう。その武器はやろう、俺が作った売り物にならん失敗作だ。性能面はぼちぼちだな。」
グラシオ。地妖の漢は伊達ではなく趣味は鍛治である。技術のレベルは結構高いらしい。
まあ、そんな事は如何でも良いが。
「では、今回は特別に『大斧術』の技術をやろう。其れで必殺技だが…そうだな。」
能力を確認すれば、◇の欄の1つに確かに『大斧術 Lv3』が追加されていた。
Lvが3なのは特別との事。
そして、何処からともなく取り出した謎の巻物。
巻物と云う、本来であれば訓練が必要な技術や必殺技を直ぐに習得できる道具らしい。
「必殺技だが、『強撃』が良いな。此れをやろう。」
そう言って渡された。
尚読めない。
と考えていたら、リコリスの掌から避ける様に消えて行った。
「よし、これで良いだろう。奥に的を用意してある。試し斬りや必殺技の感覚を試してみれば良いだろう。」
「必殺技は如何やって使うんですか?」
「瞬発が一定以上残っている時に攻撃のタイミングで強く考える事で使える。武器を振るう事でも消費されるが、必殺技は持久を多く消費してしまうので注意が必要だ。」
簡単に説明を行うグラシオ。
瞬発は、1回の連続攻撃行動に上限を持たせるもの。此れが続く限り連続して攻撃など行えるらしい。が、切れると同時に息切れ、隙が出来るらしい。
持久は、魔力のスタミナ版。
只、色々な行動などで消費される事から魔力よりも持ちは良く、長時間の休息や飲食で回復出来るとの事だ。
そして、試しに大斧を振ってみる。
筋力が高い事が関係してか、振りは速く的で置いていた藁人形が斜めに汚く粉砕された。
然し、細長い前足では意外に大斧を振りにくい。
尻尾で絡めて持つ事が出来たので、リコリスはこれで振ってみる事にした。
結果、威力は上がった。その代償が背後を振り返る事で隙が大きくなった。
諸刃の剣どころではなかった。
然し、これならば飛んだ時でも武器を振れそうだ。
此処闘技場では一定の高さ迄は飛ぶ事が出来る様で。
「これは意外にも有りかも?」
実戦で有用出来るかは置いといて、情報としては有意義で合ったと思われる。
そして、実際に『強撃』を使ってみる事にした。
持久の消費は1回で4%持って行かれる程。
瞬発に関しては70%近くで、連続攻撃どころではない。
然し、初動は速く威力はかなり高かった。
これは、必殺技を積極的に使っても良いかもしれない。
「満足したか?」
「ええ。」
「必殺技は使い込む程技が精錬されてゆく。だが、行動のキャンセルは出来ても大きな隙が発生するのと、必殺技の同時発動は出来ないので気を付けろ。」
「分かりました。」
「これで最初のレクチャーは終了だ。この辺りなら西の森が凶暴な魔物の住処になっている。腕試しをしたいなら序でに行ってくれ。また生産スキルを知りたいならまた俺の所に来い。紹介ぐらいはしてやろう。」
少々お節介が過ぎるグラシオだが、彼の自分の仕事は大丈夫なのかと少々不安になるリコリス。
取り敢えず愛想笑いをして置いた。
「ありがとうございます。」
「よし、じゃあ俺は協会に帰るが、お前達は如何する?」
これは、イベント終了時に最初の位置に戻れるワープの類であろうか。
恐らく、全選択権はプレイヤーが持っているだろうが、やけに人間味の強いティティラの意見も聞いておく事にした。
「じゃあ、一緒に行っても良い?」
「うん!」
「よし、じゃあ行くぞ。」
そうグラシオが一言述べると同時に、視界がボヤけブラックアウト。
気が付いたら協会の真ん前に突っ立っていた。
「これで、自由行動かな?」
何もイベントと思わしき行動をする者はいない。
本来であればモノの数分で終わるイベントを、2時間掛かるリコリス自身が可笑しいのだが、何もしてないのに疲れてしまっていた。
「あ!そうだ。」
「え?何ティティラ。」
すると、突然ティティラが謎の声を上げる。
リコリスは「またイベントか。」と一瞬顰め面をするも、直ぐにティティラ自身の空き構成を知らない事を思い出す。
もしや此処で見る事が出来るのだろうか。
「リコリスと私、種の異なる者だから私の空きリコリスも知ってた方が良いよね?」
矢張り。と、口角を悪く上げてしまった。
「じゃあ見てて!」
◇◇◇騎士 Lv1
・剣術
・警戒
・逆境
・防御
◇観察 Lv1
◇敏捷増加 Lv1
◇敏捷強化 Lv1
◇反応増加 Lv1
◇生命活性 Lv1
◇一閃 Lv1
◇踏込み Lv1
騎士(職業技術)
剣術系統、守護系統の技術、必殺技をランダムで4つ習得します。
確定 剣術
職業技術
3空きで4空き分の技術、必殺技を習得します。
但し、職業技術を2つ習得する事はできません。
リコリスは思う。
「これ、無駄が一切無い気がする。」
然し、この思考は直ぐに覆される事になる。
筋力 3
体力 2
敏捷 8+1
反応 6+1
器用 4
知識 3
精神 3
知恵 2
集中 7
魅力 2
……えっ?
補足
技術にあった、
増加→常時Lv×1%上昇
強化→瞬時Lv×5%上昇(隙有り)
活性→毎分Lv×0.5%回復
作中には出てませんが、
回復→瞬時Lv×1%回復(隙有り)
があります。
主人公には名前の通り何度も死に戻って貰います。
(`・ω・´)キリッ!