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静寂、訪れずは夢の中

死後と失われていく自我の物語


疑うものは自らさえも疑い、そして崩壊していく。

 夜の暗さは決して黒ではない色で、それは藍色とも違うし紫とも違えば勿論黒である筈もなく、それは漠然とした夜の色としか形容できないものである。何にせよ、夜は暗い。暗い所は、怖い。子供は怖いらしい。しかし暗くなければ星は輝かず、月もうっすらのっぺりとしたものになってしまう。それと同様に秩序というものは何においても基本的に存在する。存在しないのは人間の思考であり、無意識ともなればソコには一体何があるのかすら解らない。無意識を利用したもので宗教があるが、宗教によって死後の世界は大分変わる。無神論者には関係のないはなしだが。

 しかし、死んだ後には扉がありますという宗教はあるのだろうか。無神論、有死論、無冥論、死後の世界などハナから信じてなどいないのにも関わらず、死んだ筈がどういうわけか扉の前にいる。それも酷く巨大な。

 すとん、と背後に降りたそれは振り向く前に背中を押し、その扉の向こう側へ、落ちていく。


 何を見たのか、何を見なかったのか、覚えてこそいないが、それこそ夢から醒めて内容が霧散しそのぼんやりとした事実のみが残るその感覚を死してなお感じざるを得なかった。

 それこそ自殺志願者の気が知れない。なぜそんなぼんやりとした不安定な死に飛び込もうとするのか。

 死にたがりと自殺志願者は違う。死にたがりもぼんやりと無意識からやってくる死に誘われる者とかまってちゃんでは根本的に違う。

 どちらだったのか。自分がどちらだったのか、そんなことも思い出せやしない。

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