表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はじめてのこんかつ  作者: 大橋 由希也
とうろくへん
2/39

はじめてのしょうかい

 結婚相談所から見合い相手の資料が届いた。しかし、久遠にとっては、これは母親によって何の相談も無く、無理やり始めさせられた婚活だ。ハッキリ言って、余計なお世話である。全く読む気がしない。

(……婚活なんて、冗談じゃねえ。めんどくせえッ!)


 この露里久遠という男の性質を一言で表すとすれば、『平凡な草食系男子』と表現するのが最も確信を突く。身長、体型、学業、スポーツ、全て平均レベル。顔つきはワルっぽいと言われるが、生まれつきなんだから仕方が無い。特技もコレと言って無い。部活には入っていない。帰宅部だ。趣味はゲームが好きだが、別にネットで有名になる程のやり込みゲーマーでもない。アニメは録画して気が向いた時に見ている程度。頑張った経験と言えば、高校に入る時に少し勉強を頑張ってみたが、大して成績は変わらなかった。頑張っても余り伸びず、サボり過ぎる程の怠け者でも無い。そのうち何事にも特に頑張らず、サボりもせず、楽に過ごすことをモットーとするようになった。

 楽に過ごしたい久遠にとって、一番避けなければいけないのが恋愛だ。彼女を作ったことも無いので想像するのみだが、きっと彼女が出来れば、毎週どこかに遊びに出掛けたり、定期的にメールを送ったり、誕生日ではプレゼントを贈ったりと、色々と手間が増えるに違いない。そんなの面倒なだけだ。彼女なんか欲しく無い。

(……っていうか、婚活って結婚活動だよな。何だよ、それッ!! 物事にはな、段取りってものがあるんだ、段取りが! 最初は友達から。次に彼女。それで大人になって収入が安定したら婚約、結婚。それが段取りってもんだろ。いきなり結婚を目指すって、一気に飛ばし過ぎだろ! 世の中、何事も段階を踏むのが一番なんだよ!!)

 久遠の経験上、楽な道はとは、段階を踏むことだ。世の中、一気に頑張り過ぎるのは凄く大変だが、サボり過ぎても後で大変になる。何事も少しずつ少しずつ、マラソンのように息切れしないよう、段階を踏んで進んでいくのが一番楽なのだ。


(……けど、行かなきゃ母さんが五月蠅いだろうからなぁ)

 今、手元にあるこの上質な封筒。この中に見合い相手の資料が入っている。これを読んで、気に入った相手であれば見合いをセッティングしてくれるらしい。

 何を以て『気に入った』と定義するかは、久遠本人でも分からない。人間を気に入る、気に入らないという話は繊細なものだから、紙面に書かれたプロフィールだけで判断するのはとても無理だ。人によっては、『顔が良い人』『収入が高い人』『趣味が一致する人』など、特に拘る条件を満たしているかどうかで、見合いするかどうかを決める。

 しかし、久遠には相手に求める『理想的女性像』を持っていない。ボンヤリと「自分と合う人がいいなぁ」くらいにしか思っておらず、具体性を欠く。よって、見合い相手を選ぶにも判断基準が無いのだ。だから、この資料を読んだとしても「コイツは気に入った。ぜひ見合いしたい!」「こいつはイマイチだな。やめておこう」というような判断は下せない。

 しかし、久遠がどう思った所で、どうせあの母親のことだ。会うだけ会ってみろと言われて、どんな相手でも無理矢理見合いさせられるに決まっている。

 結婚相談所など出来る限り早く退会したい。しかし、母親を説得するためには最低一回は見合いをやって、実績を作っておく必要がある。

(……まず一回か二回、見合いをする。その上で、やっぱり俺には婚活なんて向かないって言えば、母さんも納得するだろ。それが段取り、か)

 何事も段取りだ。それが一番正しい。そう結論を出すと、久遠は封筒を開き、中から見合い相手の資料、プロフィールシートを取りだした。

(……ん!? な、何だコレ!?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ