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はじめてのこんかつ  作者: 大橋 由希也
おみあいへん
13/39

はじめてのせんげん

「痛ててててて、な、何しやが……ひぃっ!?」

 久遠は体を起こして抗議しようとしたが、竹刀を突きつけられて動きを取らせて貰えなかった。無理に動けばもう一撃受けそうだ。

「お、お姉ちゃん! なななっ、何でここにッ!?!?!?!?!?」

(……そ、そうか、璃梨は黙って見合いにきたんだ!)

 当然である。見合いに行ってくる、などと言って家族が送り出すわけがない。何か別の口実で来ているはずだ。

 この見合いは家族にはバレてはいけない行動だった。そこに姉と出くわし、なおかついきなり姉が斬り掛かってきて、璃梨は混乱の極みにある。

「コーヒー買ってくるだけなのに遅すぎるって、お母さんが心配してたのよ。近所のコーヒーショップに行ってもいないし。良かったわ。最近の携帯はGPS機能があって」

「あっ!?」

 居場所を突き止められたカラクリが判明した。璃梨は自分の持つスマートフォンに居場所を追跡するGPS機能があることを忘れていたのだ。所詮は子供だ。詰めが甘い。

「さて、あなた。その制服からして、隣町の長沢高校の生徒みたいね。そんな人が何でうちの妹を連れ回しているのかしら? 事と次第によっては警察に突き出すわよ」

「け、け、警察ッ!?」

(……マ、マジかよ、これ!?)

 この混沌とした状況を整理すると、まず璃梨は近所のコーヒーショップに行くと嘘を言って、見合い場所であるこのホテルに来た。そして自分と二人で長々と何時間も見合いして帰る所に姉の愛梨が乱入してきた。愛梨は璃梨の目的が見合いだとは知らないから、自分を誘拐犯か何かだと勘違いしているようだ。

(……姉妹揃って思い込むが激しいぜ。とんでもねえな!)

 しかも困ったことに、ここはホテルの中だ。周囲にも人が大勢いる。そこでいきなり竹刀を振り回した為に辺りは騒然とし始めている。

「……はい。至急警備員を……。はい。不審な男子高校生一名。それと女子高生一名が乱闘……。子供も一人巻き込まれており。……はい、至急……。お願いします」

(……ゲエエエエェェェェェェェェェェッ!! 警備員呼びやがったッ!?!?!?!?)

 久遠の耳にはハッキリ聞き取れた。今さっき出て来た喫茶店の店員が、電話で警備員の出動を要請した。数分もしないうちに警備員が駆けつけてくる!

「ふん、警備員を呼ばれたわね。あなたの人生もここまでよ。これからは変態少年Aとして生きていきなさい」

「あわ、あわ、あわわわわわ……」

(……おいおいおいおい!?!?)

 電話は愛梨と璃梨にも聞こえたらしい。璃梨は慌てふためくだけで何の行動も起こさないが、愛梨は先手を打ってきた。

「周囲にいる皆さん、お騒がせしてすいません! 見知らぬ男が妹を無断で連れ回していた為、緊急につき、やむを得ず一撃した所です。間もなく警備員が来ます。この誘拐犯を逃がさぬよう、ご協力お願いします!」

 愛梨の呼びかけに周囲のホテル客が反応を示す。

「幼女誘拐なんて、サイテーッ!」

「あの男子高校生、いかにも不良っぽいし!」

「変態だわ! 変態ッ!!」

「女の敵ッ!」

 久遠の不良っぽい外見が悪く作用したらしい。周囲のホテル客のうち、女性客は総じて久遠を幼女誘拐犯だと決めつける情勢だ。一方、男性客はというと、

「おい、どうする?」

「どんな事情があるのかは知らんが……」

「ともかく、逃がすな。すぐに警備員が来るから、それまででいい」

「そうだな」

「気をつけろよ。ナイフとか隠し持ってるかもしれんぞ」

「ああ」

 男性客はというと、事の真相はさておき、とにかく久遠を逃がさないようにして警備員に突き出す考えのようだ。数名の男が出て来て、少し距離を取りつつ久遠と取り囲み始めた。

(……ヤ、ヤベェェェェ!? こ、これ、俺の人生最大のピンチじゃねえか!? お、落ち着け。な、何事も段取りだ。俺は何もやましいことはやっていない。落ち着いて、順を追って説明すれば切り抜けられる。よし!)

「ま、待て! お、俺は不良でも無いし、誘拐犯でも無い!! 別に何もしていないぞ!」

「でも、これからするつもりだったんでしょ?」

「違うって! いいか。俺と璃梨がここにいるのはだな。それは……」

「それは?」

「……それは……」

(……ぐっ、説明が難し過ぎる!!)

 男子高校生と女子小学生が見合いしていました。女子小学生の方は家族に秘密で婚活中です。などという話をこの状況でどう通せと言うのか!?

「ふん、言えないようね。最も、あなたが言えなくても璃梨に聞けば済むこと。璃梨、何でこの男と一緒にいるの? この男に何された?」

「え、わ、私ですか!? わ、私? わ、私は、私?」

(……テ、テンパってやがる!? こっちもマズい!!)

 この状況は璃梨にとってもピンチだ。璃梨は家族に内緒で結婚相談所に登録して見合いするという裏技を使っている。バレたらどれだけ怒られるか分かったものではない。璃梨には正直に言えない都合があるのだ。

(……璃梨、何も言わなくていい。黙ってろ! 考えるんだ、俺!! まず、璃梨が怒られなくて済むように、婚活のことは秘密にしておく。そして、璃梨が家族に内緒で行動していたことも当然である理由付け。最後に俺と璃梨が二人でお茶していても変では無いストーリー。それは、それは、それは……ッ!!)

 そして、久遠が下した決断は!

「お、俺たち、付き合ってるんだ……」

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