はじめてのとうろく
この小説は、十七歳の高校生男子と八歳の小学生女子が結婚相談所を介してお見合いをするという、婚活純愛小説です。
気軽に読めるように、一話辺りの文量は少な目にしてあります。
最後までお付き合い下さいますよう、よろしくお願い致します。
「結婚相談所に登録してきたわ♪」
(……か、母さん。何言ってんだ!?)
学校から帰ると、母が喜々として資料を見せてきた。ウェディングドレス姿の女性と、タキシード姿の男性の写真を中心に描いた表紙。会社名も電車の広告か何かで見たことがある。間違い無く、結婚相談所のパンフレットだ。
「か、母さん! 俺はまだ高校二年生、十七歳だぞ! 何言って……」
この男の名は露里久遠。トレードマークの肩に掛かる程長い黒髪と、ネクタイを緩めて着崩した制服姿、そして口を開く時によく見える犬歯と、睨み付けるような悪い目つきにより第一印象はどうにも不良っぽく見えるが、実際には特に大きな喧嘩もしたことも無く、無遅刻無欠席で高校に通う普通の十七歳の高校二年生だ。強いて言えば、言葉遣いが少々荒っぽいのが玉にキズである。
「これからは婚活しないと結婚できない時代なのよ。あなたみたいな引きこもりが将来可愛いお嫁さんを貰えるかどうか、お母さんは心配で心配で」
「引きこもりっていうのは、一年中自分の家から一歩も出ないような人間のことを言うんだよ! 俺はちゃんと毎日学校に行ってる! まあ、帰宅部ではあるけど、別に友達だって普通にいるしな。ただ、土日の趣味がゲームってだけだ!」
「新聞のチラシを見たら、今なら入会金無料って書いてあって。お母さん、大変! と思って急いで入会してきたの。ちゃんと審査も通って良かったわ。くーちゃん、良い子だもんね♪」
(……聞いてねえッ!)
結婚相談所から見合い相手の資料が届いたのは、それから一ヶ月後だった。