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魔王と恋文

魔王サイド。最近絶不調の魔王様。




 我が輩は魔王である。


 最近、不眠症である。


 というのも、最近頻繁に魔王の間の扉に差し込まれるようになった手紙が大きな原因である。

 黒いハート(ヒビ入り)のシールで封がされた、紫色の毒々しい便箋。

 ラミアンとかピエールがたまに私を怖がらせる為に机に忍ばせる、「何人送らないと呪われます」という呪いの手紙ではない。


 ラブレターである。


 ……いや、魔界の住人でも、もう少し便箋のチョイスとか気を遣ってもいいんじゃないかな。あと、黒のハートってなんだよ。なんでヒビが入ってるんだよ。

 まぁ、それだけで眠れなくなる程、私も小心者ではない。

 問題は内容の方だ。




 愛しの魔王様へ

 いつも貴方を見ています。

 貴方が好きすぎて私は今日も眠れません。

 好きです。好きです。大好きです。

 好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。




 この子、私の事好きすぎる。

 次第に後ろの「好き」の字が乱れていくのがポイントだ。

 何故か最後の方に血液らしき黒い染みが見えるのがやたら気になる。


 まぁ、これくらいなら私の事が好きすぎる子で済ます。

 しかし、それだけではない。




 愛しの魔王様へ

 昨日は夜遅くまでお疲れ様でした。

 でも、深夜2時23分12秒なんて遅い時間からのお夜食はやめた方が宜しいですよ。

 カップ麺などもっての外です。

 4日連続で朝食を抜くのもいただけません。

 あと、お野菜。夕食は特に3日間好きなお肉に偏り過ぎです。

 私なら、毎日栄養のバランスを考えて、魔王様のお食事を用意するのに。

 とにかくお身体にはお気を付けて。




 なんて良い子だろう。

 ……ではない。なんでこの子、私の食生活こんなに把握してるんだ。

 魔王の生活など基本、四天王でも知らないぞ。大体仕事で顔合わせるくらいだし、飲み会も誘ってくれないし。

 なのになんでこの子、私の夜食事情まで知ってるん。今は大人の都合で伏せたけど、食べたカップ麺も商品名から賞味期限までぴたりと当ててくるんだぞ。私の部屋の棚にしまってるものだぞ。四天王だって当然知らないぞ。


 ―――いつも貴方を見ています。


 まさか、そこまで「いつも」とは思わないじゃん?

 この子、本当にいつも私を見ているみたいである。

 なんか、トイレ行った時間とか、就寝時刻とか、起床時刻とか、いつ何処に出かけたかとか、四天王との会話内容とか、私が家で母や父と会話した事とか、親も知らないちょっとした癖とか、私も覚えていないような幼少時代のちょっとしたイベントとか、私のその日の体温とか、血圧とか、色々知っている。


 知りすぎだろ。しかもあまりにも的確なんで、途中で自分でも分からない内容を改めて調べるのも怖くなってきたもん。


 正直、ラミアンとピエールの悪戯かと思ったけど、それにしたって知りすぎである。というか、手紙見せたらドン引きされた。警察に相談することを勧められたくらいである。ってか、あいつらもそういう悪戯しまくるから超紛らわしい。


 この手の、私の日記を超えるレベルの私情報満載のラブレターが毎日届く。

 恐怖とか諸々の感情で胃が痛い。

 眠ったら何されるか分からない。故に我が輩は不眠症である。




 愛しの魔王様へ。

 最近寝てないようですが、大丈夫ですか?




 お前のせいだよ。

 




未だ手紙の主を見た者はいない。


【登場人物紹介】


・魔王様が好きすぎる人

魔王様が好きすぎて毎日恋文を送る乙女。

魔王様を誰よりも気遣い、生活面の指導を怠らない。料理に家事洗濯、なんでもござれの家庭的な人。

魔王様は愚か、四天王も、魔界警察も、警備員も、更には魔王城の監視カメラでさえも姿を捉えられない圧倒的なステルス能力を保有している。

い つ も 魔 王 様 を 見 て い る


装備:乙女のペン、乙女の便箋、乙女の恋心

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