勇者とボス戦
勇者サイド。初のボス戦描写?
我が輩は勇者である。
私達はつい先程、ボス戦前らしきエリアを訪れた。
広い空間の前のセーブポイント。周囲に置かれた意味深な回復アイテム入り宝箱。
これはもうボス戦前のフラグに決まっている。
察した私達は、意を決してボス戦に臨む。
私はセーブ&リセットをしないタイプの勇者なので、セーブポイントは当然使わない。
宝箱のアイテムを回収して、装備・パーティ編成を見直して、私達はボス戦が行われるであろうエリアに踏み込んだ。
しかし、何も起こらない。
おかしい。何故ボス戦イベントが発生しないのか。
こんな準備がされていて、ボス戦がないなどあり得るのか。
わざわざMP回復の貴重な回復アイテムも使ってしまった。これで出てこないとなると、ちょっとあまりにも酷いのではないか。
私達が困って周囲を探していると、聞き慣れた声が情報から響いた。
「よく来た勇者よ!」
「そ、その声は……」
上を向くと、崖から見下ろす黒い鎧が見えた。
あれは……黒騎士!
「黒騎士! まさか、もうお前との再戦が!?」
「違うな!」
あれ? 違うの?
困ってパーティメンバーの方を見ると、彼らも困った様に首を傾げた。
その中で、冷静に考え込んだ後、僧侶が口を開いた。
「まさか、此処に居たボスは既にあなたが倒したのですか? もし、会話イベントの為の事前セーブだとしたら、黒騎士、MP回復アイテムは弁償してもらいますよ」
抜かりない女、僧侶。こやつ、やりおる。
しかし、黒騎士は「ふはは」と笑った。
「違うな!」
「じゃあ一体なんなんだ!」
意味が分からない。戦闘でも会話イベントでもないなら、何故黒騎士はでてきたのか?
そして、あのセーブポイントと意味深な宝箱はなんだったのか。
「フフ……コレを見ろ」
黒騎士が鎧の頭部分のカパッと開けるやつをカパッと開けた。
まさか、ここで黒騎士の正体が明らかに!?
これはストーリー上の重要イベントなのか!?
息を呑む私達。
そこには見た事のある顔が収まっていた……
魔法剣士だ!
「そのセーブポイントと宝箱は……私 の 作 っ た ダ ミ ー だ よ !」
ま さ に 外 道 !
宝箱の中身は勇者の道具袋からスッたもの。
【登場人物紹介】
・魔法剣士
定期的に勇者様を罠に陥れる外道。
本物そっくりなセーブポイントや宝箱、黒騎士の鎧を作れるくらい器用。
数々の悪戯は多分勇者様への愛情表現。
しかし、その被害は甚大である。
装備:黒騎士の剣、黒騎士の鎧、邪心
・MP回復アイテム
薬草の数倍は下らない超高価なアイテム。
勇者によってはケチって全然使われない。
ボス戦かと思って準備で身を切る思いで使ったら、
ただのイベントでしたとかなると殺意を覚える位に貴重。
勇者はこれを四つ使った。