魔王と腰痛
魔王サイド。エミリーとのお出かけ後。
我が輩は魔王である。
久しく外出したら腰を痛めた。
先程背筋を伸ばそうとして、寝転んだらうつぶせのままロクに動けなくなった。
腰をマッサージして欲しいのだが、生憎魔王の間に今日は誰も居ない。
「参った……」
常に魔王の玉座に座っているので、基本魔王は運動不足なのである。
電話にも手が届かないし、本当にどうしよう。
ラミアンは有給取ってるし、ゴードンは出張中だし、スケルトンは骨折して入院してるし、本当に困った。
エミリー辺りが遊びに来てくれないだろうか。そしたら軽く腰をもんで貰えば多少マシになるかも知れない。
その時、魔王の間の扉が開く音がした。
私は咄嗟に声をかける。
「良いところに来た! 助けてくれ! 腰を痛めた! 踏む感じでもいいから、少しマッサージしてくれないか!」
そして、私は後悔する。
最近影が薄い四天王の一人をすっかり忘れていた事に。
「う、うおおおおおお!? 魔王様あああああ! い、今助けるぞおおおお!」
この無駄に馬鹿でかい声……加減知らずの筋肉馬鹿、ロドリゲスだ!
ズンズンズンと、洒落にならない重さの足音が迫ってくる!
「あっ、ちょっと待っ、ロドリゲス! 大丈夫! ヤッパリ大丈夫だから……」
「魔王様ああああああ!」
駄目だ! すぐ後ろにヘビー級の足音が迫っている!
そして、こいつは話をやっぱり聞いていない!
こんなのに踏まれたら、間違いなく、死ぬ!
「誰か助けてえええええええ!」
「今助けるぞおおおおお!」
「お前じゃな……」
ズン! と背中に衝撃が走った。
バキン、って音は幻聴だと思いたい。
「こ、腰があああああああああああ!」
「ま、魔王様の背中が逆に曲がったあああああああああ!」
スケルトンと同じ病室に入った。
勇者が来る前には治ると思う。
【登場人物紹介】
・ロドリゲス
魔王軍四天王の一角、通称『嫉妬のロドリゲス』。
筋肉モリモリマッチョマンのお馬鹿さん。
単純だが純粋で悪い子ではない。
頭につける「嫉妬」ってやつは、余った中から意味が分からないで取った。
素直な良い子なので逆にキャラが薄い。
単純なので精神系の攻撃・状態異常に対して無敵という厄介な敵。
装備:マッスルアーム、マッスルボディ、単純ブレイン