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プロローグ

異世界ファンタジーの物語です。



両手を上げて無抵抗を示す。

目の前には重そうな甲冑を装備した兵士らしき男がおり、その表情は驚愕に染まっていた。

こちらを上から下へ見る。

確認。

そして、すぅっと息を吸い込み、


「敵襲ー!」


腰から下げた剣を抜き出して切っ先を俺に向けて叫んだ。

敵って俺だよなぁ。


「はっ。これだけ囲まれてどこまで挑発的でいられるかな?」


それを言ったのは俺を見て敵襲と叫んだ男である。

叫び声から10秒もしない内に甲冑を装備、武装した奴らに囲まれた。

これって、軍隊?

中世ヨーロッパのよくある甲冑にそれっぽい剣に明らかに魔法使いです、といった格好のおっさん。

それに、身の丈程の杖。

包囲された。

綺麗に□を描くように。

それが指し示す事実は、こいつらは軍隊か、訓練された武装集団であるということだ。

彼らは二列で並んでおり前線、つまり俺の側に剣士らしき奴ら。後ろ側に魔法使いの格好をした奴らが並んでいた。

出来ればどうしてこうなったか説明して欲しいもんだ。

包囲は狭まり前線の剣士の格好の奴らが近くなる。

いよいよピンチだ。

恐らくココは異世界であろう。

何もすることなく終わりかよー。

なんで異世界に来たのかも、ここがどういう世界か知らないまま理不尽に終わる。

頭の中は状況把握と解決策の為の思考で埋め尽くされていた。

二十歳そこそこで人生オワタって洒落にならんぞ。

非武装と非戦闘行為の証として両手を上げているが、効果なし。

むしろ敵意を感じる視線が強くなっている気がする。


「待てぇーい!」


凛と響く女の声だ。

その声にビタリと全員の行動が止まる。

そして、包囲されている隊列が空く。

その先に現れたのは白馬に乗った人物。

甲冑は深紅であった。

髪は金髪で風に流れる。

顔立ちは清楚であるが力強い眉と視線を備えていた。

見下ろされる。

数秒だ。息をするのも忘れて見とれた。

そう、金髪美女に見とれたのだ。


「我が家に伝わる逸話がある。初陣で必ず生涯を通して必要になるモノが現れるという話だ。私はソレを信じていなかった。先々代は飛竜ドラゴンであった。先代は皆も知っていると思うがユニコーンだ。それで、だ。今、初陣を終えたはずで、隊を引くという時期に現れたのだが"城に帰るまでが初陣ですよ"と母上の言葉を借りるならば今はまだ初陣でいいな? なぁに、初陣で得るものが無くて私には才能ないのかなぁとか、どんな生物が現れるかなぁと楽しみにしていたわけではないぞ? 何? 何故そこの男が得る物なのですかだと? 見ればわかるではないか! 両手を上げての挑発的な行為。それをわかっていない様子。それに服装、容姿。どれを見ても私達の国の物ではないことくらい見抜けよ!」


後半は殆ど本性と素が見えた気がした。


「いいか? その両手を上げるというのは相手を素手で倒せるという挑発的な行為だ。その事を知らないなら頷いて手を降ろせ。そうだ。そうだな。私の目に狂いはなかった。お前、この国の者ではないな? そうか、ではどこの出身だ? 黒髪とは珍しい。それにケッタイな服装だな。文化の違いか? いや、それにしては随分良い生地を使っているように見える。それに、その腕に巻いているものはなんだ? というかお前なんだ?」


ずっと相手のターン。

順に答えるなら日本出身で腕のものは腕時計だ。

どうも金髪美女は所謂いわゆる験担げんかつぎとして俺を必要としてくれるらしい。

白馬から降りて部下の静止を振りきって俺の正面に立つ。


「まあ、逸話の存在として人間と言うのは有難い。何故なら言語が通じるからな。私以前の先人達は随分苦労したみたいだ。その点では私は当たりかもな。手懐ける為に殺し合う肉体言語ではなく、知性と品格のある交渉ができる。おい、お前私に従え」

「姫様。それは交渉ではなく、脅迫です」


侍女?

深紅のローブを羽織っているが、その下にはメイド服らしきデザインの服を着ていた。

それに、姫様だと?

情報を整理するとこうなる。


・この世界にはドラゴンやユニコーンの想像上の生き物が存在するらしい

・この世界には魔法使いがいるっぽい。

・この世界の姫様は戦場に現れるらしい。


では、文化レベルはどうか?

それは魔法が存在するっぽいのでわからない。

俺に足りないものは情報だ。

ならば、


「従います」


ソレ以外に良い選択肢が思い浮かばなかった。



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