第5章 戦いに男も女も関係ない
数日後……
ジュピターというマルスの仲間が、何か情報を得てやってきた。
戦士たちはすぐに会議を開こうと、ロウ夫婦の家へ集まった。
だが、マルスとその仲間、さらに翔やハニーが突如姿を消した。
とある場所……
マルスとその仲間は二人でどこかに向かっていた。
「マルス様いいのですか?強い者たちがせっかく見付ったのに、あの方たちの力を借りなくてもよろしいのですか?」
「ジュピター、あの方たちは結婚し、幸せな家庭を築いている。村の方たちから聞いたのだが、コンドン夫婦には4歳のお子様もおられるそうだ」
「ですが……な、なら、あなたも残ってください」
「何?」
「お願いします。あなたは私より強い。ですが、あなたは……あなたは、女です。戦うのは男の役目。ですから」
「ジュピター!私はもう女を捨てたのだ。祖母と同じ名のヴィーナの名と共に」
なんとマルスは女性であった。
本当の名は祖母と同じヴィーナ……
だが、彼女は女であることを捨てると同時に、その名前を捨て、マルスと名乗っているのだ。
その時だった。
二人の後ろから彼らに話しかけてくるものがいた。
「女みたいな男かと思わせといて、本当は女だったとはな」
話をかけてきたのは翔だ。
隣にはハニーもいる。
「翔さん」
「俺は独り者だし、強い者たちと戦いたい」
「ですが、あなたは、この時代の者ではないのでしょう」
「ああ、そうだ。だが、死戦組の土方総司や海戦隊の中岡龍馬も過去から来たものだが、命を捨てて戦った」
「そうですが……」
「それにこの世界に詳しいハニー(案内人)を連れてきてやったんだ」
「ジュピターが言いましたように、戦うのは男だけで十分です」
「おいおい、アンタの祖母や他の女の者たちも、魔王や異星人たちと戦ったんだろう。戦いに男も女も関係ね~」
そして翔はこう言った。
「それに俺もアンタと同じだ」
「えっ?」
「俺も女だ。なあ、ハニー」
「はい」
「俺の前の名前は楢崎佐那」
22世紀末……
楢崎家の長女として彼女は生まれた。
彼女の近所にはしばらくアメリカにいた織田家も住んでいた。
ハニーは佐那の一つ上だ。
二人は仲が良く、よく遊んでいた。
ある事件が起きるまで……
佐那の父親は正義感の強い警察官だった。
だが、そのため、恨みを持つものもたくさんいた。
そして、そのもの達が、楢崎家を襲った。
父、定吉は命がけで、妻と当時まだ5歳だった幼い佐那を守ろうとしたが、斬殺された。
また、10歳上の兄がおり、剣の達人であったが、彼も斬殺された。
定吉の妻でもあり佐那の母も佐那を守り惨殺された。
佐那にも刃が襲い掛かった。
だが、そのとき、彼女を助けたものがいた。
天神流24代目大空翔だ。
一瞬で賊を退治した。
その後孤児となった佐那を彼は引き取り弟子にした。
それから10年後……
佐那は師匠の翔に好意を抱いていた。
二人の年の差は12も離れていた。
だが彼女は自分の思いを師匠の翔に伝えた。
翔は迷った。
自分は27歳だが、佐那はまだ15歳だ。
だが、天神流を教えた事により、彼女の女の幸せを奪ってしまったという後悔もあった。
そのため翔は彼女の想いに答えた。
だが、二人が恋人でいられた時間はそう長くは無い。
佐那が17歳になった頃、ハニーの父親が人造人間を使って、世界を支配しようと人類に争いを仕掛けてきたのだ。
この戦に翔も佐那も参加した。
織田はすでに二十四体の人造人間を作っていた。
翔は2号から10号までを粉砕した。
だが、他の人造人間が佐那を、襲ってきた時に、彼が盾となり彼女を守った。
「師匠!」
瀕死の状態にもかかわらず、襲ってきた人造人間13号も粉砕した。
「師匠」
「さ、さな……逃げろ」
「な、何を言っているんですか。死ぬ時は一緒ですよ」
「グッ……よ、よく聞け、佐那……お前は、す、すでに天神流の後継者になれるほどの強さを持っている。だ、だが、跡を継がせなかったのは、お、お前をいつか、普通の女に戻すためだ。お、俺ではお前を幸せにするどころか、不幸にしてしまった。こ、これからは女として生きて、幸せになってくれ」
「師匠、私はあなたといた12年間、これ以上の無い幸せを貰いました。だから」
その言葉に翔は微笑み、息絶えた。
「師匠!!」
そのとき、佐那の前にハニーが現れた。
「ハニー」
「ごめんなさい」
「お前が謝る事なんてない」
「でも佐那ちゃん」
「たった今から、私は……いや、俺はその名と女であることを捨て、天神流25代目を次いだ、大空翔だ」
「佐那ちゃん……」
「師匠は2号から10号までと今襲ってきた人造人間を倒した。残りは俺が倒し、そしてハニーには悪いが、織田秀吉の首を取る。まず、1号からだ」
その言葉にハニーは下を向いた。
佐那……いや、翔はハニーが1号だという事を知らない。
「佐那……いえ、翔さんに殺されるなら本望です」
ハニーの言葉に翔の目付きが鋭くなった。
「ハニー、さっきも言ったようにお前は悪くない。悪いのは織田秀吉と奴が作った人造人間だ」
「私が人造人間1号です」
「あっ?」
「正確には改造人間です」
「お前まさか、親父に」
「はい」
「あの野郎!自分の娘を……ゆるさね~」
その時だった。
爽やかな青年が翔たちの前に現れた。
「何だ?てめ~」
「翔さん、気をつけて、ソイツは父が作った人造人間25号よ」
「25号!?また一体作りやがったのか」
「1号は優しいからな。織田様の敵でも殺す事ができぬか」
「おい、ハニーを1号なんて呼ぶな」
これが大空翔と25号の始めての死闘であった。
そして2時間後……
「強いね。君」
「けっ、お前もな」
「君は僕が殺すから、他の人造人間に殺されないでよ」
「ああ?」
「じゃ~ね。天神流25代目」
そう言って25号は去っていった。
「アイツ、強いが、他の人造人間とは違うな」
「えっ、ええ」
それから1年後……
織田軍は負けを悟り、25号を含めた5体の人造人間を連れて、気球型のタイムマシンで未来へ逃げようとした。
「何だあれは?」
翔はとっさにタイムマシンにしがみ付いた。
だが、途中で手を離し、織田軍やサイエンス星人たちとの戦いから10年後の未来へたどり着いたのだ。
翔の話をマルスとジュピターは静かに聞いていた。
「そうだったのですか。なら僕も隠し事はもうしません。今回の首謀者は僕の兄アポロンです」
「お前の兄貴が首謀者か」
「はい。ですからハニーさんの気持ちがよく分かります。兄は伝説の戦士の血を引くものが、何故闇の中で生きなければならないのかと、不服を抱いていました」
「まあ、分からないでもないが」
「兄は、祖母が亡くなってから、地上に憧れを持つ若者を連れて、そして地上を支配するつもりです」
「で、お前の兄貴の居場所は分かったんだろう」
「居場所までは分かりませんでした。ただ、ある老人が紅い瞳をした男が若い者を何人も連れて、巨人を探していると教えてくれました」
「巨人!」
ハニーが大声で叫んだ。
「ハニー、何だその巨人というのは?」
「かつてのヨーロッパ大陸、この時代ではメルベイユ王国というのですが、10万年くらい前にその国で大きな戦争が起こり、その兵器として作られたのが、その巨人だと思います」
「かつてのヨーロッパ大陸って、随分遠いな。だが、ハッキリしたな。その巨人を使ってこの世界を支配するつもりだ」
「でも、その巨人を動かすには鍵がまず必要だと聞いたことがあります」
「その鍵はどこにあるかハニーも知らないんだ」
「はい……一説によれば海の底とも言われていますし、ある山の頂上にあるとも言われています。あるいは、もうこの世界には無いとも言われています」
「まあ、奴らはメルベイユ王国だっけ?そこに向かっているだろうから、そこに行くか?」
「はい……翔さん、ハニーさん本当にありがとうございます。ジュピターもご苦労でした」
「い、いえ」
「(コイツ、この女の事が……)」
4人はかつてのヨーロッパ大陸、メルベイユ王国に向かうこととなったのだ。
天神流の継承者たち
初代・・・天神斎
2代目・・・陽炎(お光)
3代目・・・影丸
4代目〜10代目不明
11代目・・・辰巳
12代目・・・不知火蛍
13代目・・・不知火彦斎
14代目・・・不知火幻次
15代目・・・月形十蔵
16代目・・・月形良昭
17代目・・・月形瑠奈
18代目・・・神威龍一
19代目・・・大空達也
20代目・・・不明
21代目・・・大空?
22代目・・・大空龍一
23代目・・・不明
24代目・・・大空翔
25代目・・・大空翔(楢崎佐那)
天神流を学んだ者たち
黒龍(佐吉)
晋作
彦斎の子供たち
不知火 灯
隼人の祖父、父、母
不知火 隼人
堀辺 正宗
武田 武
水谷 凍矢
凍矢の影の者たち(春麗など)
神威 聖華
神威 龍之介
土方総司(独学)
中岡龍馬(独学)
リュウ・シー・ドーラ(未来の自分やナイトらから学んでいる)
ヴィーナ・スー・ドーラ(リュウと同じ)
25号(独学)
ロウ・コンドン(25号の記憶を持っているから)
ナイト・サーム・アールケイ(土方総司から学んでいる)