第4章 闇の世界の者
覆面の素顔は若き日のリュウ・シー・ドーラやゴン・ドーラに瓜二つであった。
「リュウ様やドーラ様はすでに亡くなられている」
と、レイカが言った。
「まさか時空に飲まれてきたんじゃ?」
と、ロウが言った。
「そんなことどうでもいい。まだ、タイマンの勝負は付いてね~」
と、翔が言った。
そして今まで無言だった覆面をしていた者が語り始めた。
「貴方たちは本物の戦士です。だから、全てをお話します。まず、僕の名前はマルス。僕が伝説の戦士に似ているのは、あの方たちの血を引いているからです」
「えっ!」
誰もが驚いた。
ドーラ一族はすでに途絶えたはず。
それゆえに、彼らの血を引くものがいるはずは無い。
「何から話せばいいかな」
マルスは皆にどう説明しようか考えた。
「まず、僕の祖母はヴィーナ・スー・ドーラです」
「そんなはずは……ヴィーナ様は、魔王との戦いで戦死したはず」
と、ロウが言った。
「祖母の母……僕にとっては祖祖母のダイアナ・シー・ドーラが何故死んだがご存知ですか?」
ダイアナ・シー・ドーラの旧姓はルーナで、リュウと結婚してからも夫や周りの人たちからはルーナさんと呼ばれていた。
「ルーナ様確かご病気で、四十代の若さで世を去ったと聞いています」
そういったのはレイカだ。
「表向きはね」
「えっ?」
「祖母も祖祖父のリュウ・シー・ドーラも祖祖母を罪人にしたくなかったのさ」
「罪人?」
「死者復活の術……今ではこの術を使う事は禁止されている。だが、祖祖母ダイアナは娘ヴィーナを蘇らせたくて、自らの命を使い祖母を生き返らせた」
数十年前……
ルーナはとある洞窟の中で、禁断の魔法、死者復活の術を使い、娘ヴィーナを蘇らせた。
夫のリュウは行方不明となっていた妻ルーナを探し、そして洞窟を発見した。
だが、すでに妻はこの世にいなかった。
「どうして?どうして僕に何も言ってくれなかったの?ルーナさーん!」
「お父様……」
「ヴィーナ……大切な人を取り戻したと同時に、大切な人を失った」
「お父様。お母様を罪人にしないでください」
「あ、ああ……この人は正義の……愛の戦士バトルソルジャーだからな」
「では私はこれで」
「ヴィーナ?どこへ行くんだ?」
「分かりません。ただ、私が蘇ったと世間に知られれば、誰かが死者復活の術を使ったと思うでしょう。私たちは魔王と戦った戦士。だからこそ、お母様を罪人にしたくありません」
そう言ってヴィーナはリュウの前から去っていた。
このことを知る者は死戦組でもこの二人だけであった。
やがて彼女はドーラの名と地上を捨て、地下に潜った。
そこは絶望したものが集まる場所だった。
だが、そんな中、ヴィーナは一人の男性と恋に落ち、結婚し、男児を授かる。
やがてヴィーナの子は大人になり、彼も地下で一人の女性と出会い恋に落ち、結婚し、二人の子を授かる。
その一人がマルスだ。
静かにマルスの話を聞く戦士たち。
「で、俺と同じように強い奴を求めて、地上へ来たわけか。覆面はリュウとか言う奴と間違えられないため」
「覆面はそうですが、地上へ来て強い奴を求めていたのは、僕と共に戦ってくれる戦士を探すためです」
「何?」
「祖母ヴィーナは半年前に、病で死にました。祖母が生きているときは皆祖母の言う事を聞いていました。だが、祖母が死んでからは……僕のように、地下で生まれ、育った子供たちはたくさんいます。光がほとんど無い闇の世界である地下を捨て、地上を支配しようとしているのです」
「マジかよ」
「はい」
「そいつらと戦うためにおめ~は戦士を探していたわけだ」
「そうです」
「そいつらどこにいるんだ?」
「分かりません。でもこの地上のどこかにいると思います。今僕の仲間の一人が情報を集めています」
「ふ~ん……楽しそうだな」
「か、翔さん」
「俺は修羅なんでね」
「貴方のような人がいてくれると心強いです」
と、マルスは翔に手を差し出した。
二人は握手をし、共に戦う仲間となった。
「でも、その前にアンタとの勝負が付いてねー」
「えっ!?」
地下にいた者たちが、地上を支配しようとしている。
果たして、戦士たちはくい止めることができるのか?
その答えは「神のみぞ知る」