第17章 修羅場
完全に翔はいや、佐那は女性になってしまっていた。
「なあ、もう一度水飲ませたらどうかな?」
と、半次郎が冗談交じりで言った。
「あれ、25代目は?」
巨人の近くにある公園……
ここで、マーキュリーが一人武術の稽古をしていた。
そしてその姿を佐奈は見ていた。
「ふう……」
「お疲れ様。はい、タオル」
「あ、ありがとうございます(やっぱ今の佐那さんは綺麗だな~)あの佐那さん」
「なあに?」
「あっ、あのう……僕貴女のことがその……なんでもないです」
「気になるよ~。教えてよ」
「ぼ、僕、佐那さんが(勇気を出せマーキュリー)す、好きです」
その言葉に二人の顔が赤くなった。
「そ、そうなんだ」
「迷惑ですよね」
「そんなことないわ。嬉しいよ」
「じゃ、じゃあ」
「でも、本気で考えたいから少し時間がほしいわ」
「も、もちろんです」
その頃、この公園の近くで、アポロンの仲間の3人がマルスを探していた。
「ん?おい、マーキュリーだ」
「本当ですわ」
そして3人はマーキュリーと佐奈の前に着地した。
「あ、あなたたちは……」
「誰?知っている人?」
「はい。アポロン様の同士です」
風の魔法と剣術を得意とするウラヌス。
水の魔法と小柄な女性でありながら、怪力を持つネプチューン。
大地の魔法と冷酷な強さを持つサターン。
ニーナの家……
「ハアハア……」
「お母様?」
休んでいたニーナの母が突然起きた。
「このままでは翔さんたちが危ない」
「えっ?」
彼女は予知夢で翔たちのピンチを予知したのだ。
「巨人の近くの公園ですか」
といい、マルスは出て行った。
「マルス様」
ジュピターも後を追った。
「ゴットン。ニーナさんとおばさんを頼む」
半次郎も二人を追った。
「神よ、彼らにご加護を」
と、祈るゴットン。
巨人の近くの公園
「マーキュリー、父親は見付ったか?」
「い、いえまだです」
「我らに本気で手を貸せば、すぐに見つけてやるぞ」
「僕は、あなたたちとは違う。この世界を支配したいなんて思わない」
「そうか。なら言う事を聞くよう、少し痛めつけるか」
「マーキュリーちゃん」
「だ、大丈夫です。佐那さんは僕が守ります」
震えながらも彼は力強く言った。
「お前の女か?」
「あらあら、いつの間に」
「言う事を聞かねば、その娘も痛い目にあうぞ」
「なっ!この人は関係ない!」
「ネプチューン、この女を痛めつけろ」
「はい」
「マーキュリー、サターンは本気だぞ」
「やめろ~!!!」
そう言って、サターンに襲い掛かった。
「馬鹿が!俺に勝てると思っているのか?」
サターンのパンチが顔面にヒットし、マーキュリーは吹っ飛んだ。
だが、彼はすぐに立ち上がった。
「何!」
「手加減したとはいえ、サターンのパンチを喰らって、あの弱虫マーキュリーが立ち上がっただと」
「僕はもう弱虫なんかじゃない」
「そうか……なら本気で」
「お、おいサターン」
「マーキュリーちゃん、逃げて~!」
「お黙り!」
といって、ネプチューンが翔を叩いた。
「その人に手を出すな~」
「喰らえ!マーキュリー!!」
その時だった。
マルスたち3人がたどり着いたのだ。
「マルスさん……それにジュピターさんや半次郎さんまで」
「ヴィーナ……探したぞ。俺たちはアポロンの使いで来た。お前に伝言だ。俺たちに力を貸せ。もちろんマーキュリーとジュピターもだ」
「お断りします。それに今の私の名前はヴィーナではなくマルスです」
「そうか……これもアポロンから頼まれたことだ。断れば、殺せとな」
「マルス、ジュピター、僕に何かあったら、ニーナさん親子をよろしく」
「えっ?」
「師匠以外で心許せる仲間がで来たこと、すごく嬉しいよ」
「半次郎さん」
「今は岡田半次郎じゃない。人斬り夜叉だ!」
そう言って、刀を抜いた。
「変わった刀だな。サターン、アイツは俺にやらせてくれ」
そう言って彼も剣を抜いた。
「行くぞ!」
「来い」
半次郎は鞘を使い、かまいたち現象を起こした。
だが、風使いのウラヌスには効くはずがなかった。
「夜叉とかいったな。面白いなお前」
「お前もな」
今度はウラヌスが攻撃を仕掛けた。
カキーン!
と、ウラヌスの攻撃を受け止める半次郎。
だが、ウラヌスは竜巻を起こし、半次郎を高く飛ばした。
そしてウラヌスは半次郎目掛けて跳んだ。
そして、彼の右下腹部を貫いた。
普通なら何が起きたか分からないまま、終わりだろう。
だが、今の半次郎は人斬り夜叉だ。
貫かれたと同時に、ウラヌスの左腕を斬りおとしていたのだ。
そのまま二人は着地した。
ウラヌスの左腕からと、半次郎の腹から大量の血が流れる。
だが、二人は戦いをやめようとはしない。
すでに深夜を回っていた。
その時、あの男が現れた。
「本当は戦いが終わるまで、おとなしくしているつもりだったんだが……」
「ゴットンさん!?いや、違うマージュさんね」
「ああ……さて、俺の相手は一番偉そうにしているアイツだ!」
そう言って、マージュはサターンに攻撃を仕掛けた。
彼の顔を目掛けて、全身全霊のパンチを放った。
だが、サターンは片手で受け止めた。
だが、それでもサターンは吹っ飛んだ。
「どうした?大将」
「ぐっ……」
「あのサターンが吹っ飛ぶなんて」
と、ネプチューンが言ったと同時に、今度は彼女が殴られ、吹っ飛んだ。
吹っ飛ばしたのは、翔だ。
「佐那さん!?」
「ハアハア……私はもう戦いなんかしたくないはずなのに……普通の女として生きていくつもりだったのに……これ以上私の前で戦いを続けるなら、敵も見方も関係なく、ぶっ潰す」
元に戻った訳ではないが、そのセリフと恐ろしい目付きはまさしく天神流25代目大空翔だ。
「クッ……ネプチューン、ウラヌスここは一度引くぞ」
「あ、ああ」
「(まさかこんな化け物たちがいるとは……やはりアポロンに頼るしかないか)」
今までの修羅場が嘘のように公園内は静まった。
「半次郎さん、今回復系の魔法で治します」
「す、すまない」
「佐那さん……」
「マーキュリーちゃん、私は修羅……戦いの中でしか生きられない」
「……なら、僕も修羅となり、貴女と共に戦いの中で生きていきます」
「マーキュリーちゃん……ありがとう。こんな女を好いてくれて」
戦いはまだ始まったばかり。
そして、マルスをはじめ、ここにいる戦士たちは全員アポロンの敵となったのだ。